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    saltabcd

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    東夫妻「頽翼のミュゼ」ログ 2022.9.28
    KP・PL:そると
    PC:東惣太郎・東結衣

    KPレスシナリオ「頽翼のミュゼ」ログKP : 檻は大きい。
    あなたたちの視界を覆うようにしてそこにある。
    高い天井から吊られた檻は黒黒と、白い部屋とは対象的な色をしていた。
    何より異様であるのは、その中身だ。

    ──肉。
    肉と、肉と、肉と、肉。
    一体、人間を何人分だろう?

    冷たく固い檻の中を埋めつくし溢れかえり詰め込まれ、最早それがどの部位であるのかも解らない。
    ただ時折、飛び出した手足らしきものたちが、頭らしきものたちが、あちらこちらでびくりとのたうつのが見えた。
    檻の底を伝い、白い部屋の床には赤黒い液体が滴っている。

    ……とても。
    とても、生きているようには、思えない。

    据えた臭いだ。異臭。
    おそしく、吐き気を催す有様。
    ただそこにいるだけで顔が歪む。
    あなたたちはそれを目にしている。

    あれは、何だ?
    ここは、何処だ?【SANC 1/1d3】

    東惣太郎 : CCB<=73 SANチェック (1D100<=73) > 71 > 成功
    東結衣 : CCB<=81 SANチェック (1D100<=81) > 74 > 成功
    [ 東惣太郎 ] SAN : 73 → 72
    [ 東結衣 ] SAN : 81 → 80


    東惣太郎 : 「え、え……?何、ここ……?これは……」
    東結衣 : 「やだ、何よコレ。作り物、よね……?」

    東惣太郎 : 「さすがに作り物じゃなきゃ困るけど……おれ達、さっきまで別のところにいたよな?」
    東結衣 : 「ええ。うちにいたはずよ。……なんだか、最近も似たようなことあった気がするわあ……」
    東惣太郎 : 「えっ?初耳なんだけど。大丈夫だった?」
    東結衣 : 「大丈夫じゃなきゃ帰ってきてないでしょ。今度もちゃんと帰るわよ。あなたと一緒にね」
    東惣太郎 : 「敵わないなあ」

    KP : 【探索開始】
    (自分)
    此処で目覚めるまでの記憶がない。
    服装はいつもの自分の私服だ。
    体に不調は見られない。

    KP : (部屋全体)
    白い部屋だ。
    此処にはあなたたち二人しかいない。
    学歴がある探索者ならば、体育館ほどだと思うだろう。

    東惣太郎 : CCB<=65 目星(部屋全体) (1D100<=65) > 81 > 失敗
    東結衣 : CCB<=75 目星(部屋全体) (1D100<=75) > 95 > 失敗

    KP : 否が応でも、目の前の檻が視界を埋める。
    鼻を突く異臭には目眩すら感じてしまうだろう。【SAN -1】

    [ 東惣太郎 ] SAN : 72 → 71
    [ 東結衣 ] SAN : 80 → 79

    東惣太郎 : 「……なあ、このにおい……まさかとは思うけど、ただのレプリカじゃ……」
    東結衣 : 「ば、バカなこと言わないでちょうだい」
    東惣太郎 : 「ご、ごめん」
    KP : ぐるりと部屋を見回せば、右の壁に扉が見える。
    白い壁に埋もれるように、その扉もまた白い。

    KP : (檻)
    天井から吊り下げられた黒い檻だ。よく見れば赤黒く錆びているのが解る。
    今にも破裂しそうな風船を閉じ込めでもしているかのように、粛然とした様子で佇んでいた。
    もうその面積をほとんど目にすることの出来ない床の端からは赤黒が滴り、留まることなく血溜まりを広げていく。

    東結衣 : 「こんなのが本物でたまるもんですか」
    東惣太郎 : 「……そう、だな。でも……」

    KP : (檻の中身)
    それは手であり、足であり、腹であり、背中であり、頭であり、人であった。
    いくつもの人だ。いくつもの肉塊だ。
    異臭を放つ原因。未だ血を滴らせるものたち。
    檻のすぐ外には、赤く濡れた眼球が転がっているのが見える……ともなれば、眼球のない頭がきっと、この中にあるのだろう。
    生々しい悲鳴さえ聞こえてきそうなものの、耳鳴りがするほどの静寂がかえって恐ろしい。

    東結衣 : 「う…………な、なによ惣ちゃん」
    東惣太郎 : 「……あんまり無理せずに」
    東結衣 : 「……」

    東惣太郎 : CCB<=65 目星(檻の中身) (1D100<=65) > 80 > 失敗
    東結衣 : CCB<=75 目星(檻の中身) (1D100<=75) > 68 > 成功

    KP : 惣太郎は、その肉塊たちが、それぞれの部位がどれも同じ形をしていることに気が付く。
    腕の長さが同じ。足の大きさが同じ。髪の色も同じ。きっと背丈も同じだろう。
    身の毛のよだつ光景だ。

    KP : 結衣は、その肉塊たちが、それぞれの部位がどれも同じ形をしていることに気が付く。
    腕の長さが同じ。足の大きさが同じ。髪の色も同じ。きっと背丈も同じだろう。

    東結衣 : CCB<=90 アイデア (1D100<=90) > 54 > 成功

    KP : それどころか。結衣は思う──思い至ってしまうだろう。
    この、赤黒い檻いっぱいに詰め込まれた、マネキンのように均等な形の肉塊たち。
    ……それは、自分たちの身体的特徴とも一致しているのだ。結衣はこの檻の中に、自身が、愛する夫が、詰め込まれている光景をありありと思い浮かべてしまう。【SANC 1/1d3】

    東結衣 : CCB<=79 SANチェック (1D100<=79) > 87 > 失敗
    東結衣 : 1d3 (1D3) > 3
    [ 東結衣 ] SAN : 79 → 76
    東結衣 : CCB<=90 アイデア (1D100<=90) > 7 > スペシャル
    東結衣 : 1d10 (1D10) > 6
    東結衣: 【一時的狂気】自殺癖/他殺癖

    東惣太郎 : 「……なに、これ。冗談にしては度が過ぎ……結衣さん?」
    東結衣 : 「…………」
    東結衣 : 「いや、嫌……そんなの……だって、私……」

    KP : 結衣は、檻の中の肉塊と惣太郎を、ゆっくりと交互に見る。恐怖に揺れるその目は、惨たらしい色をした塊と夫を果てに重ね合わせた。

    東結衣 : 「……嫌、嫌、嫌よ!そん、な、そんな……見たくない……嫌……」
    東結衣 : 「そんな、そんなあなたを見るくらいなら、私は、わたしは……!」
    東惣太郎 : 「ゆ、結衣さん?」

    KP : 驚く惣太郎をよそに、結衣は後ろ髪に挿した簪を抜き取った。そして震えた手で、尖った簪の先端を自らに向ける。愛する人からの贈り物、それを自らの細い喉笛に突き付ける。

    東惣太郎 : 「……!」
    東惣太郎 : CCB<=61 精神分析 (1D100<=61) > 66 > 失敗
    東惣太郎 : 「だ、大丈夫だから。結衣さん」
    東結衣 : 「違う、嫌、嫌なの、もう嫌、わたしの、家族が……私の前で……」
    東惣太郎 : 「……」

    KP : 今の自分が何を言おうと、彼女の慰めにはならない。そう悟った惣太郎は、徐に結衣の手を取り、喉元に突き付けられた簪を遠ざける。

    東惣太郎 : 「大丈夫……大丈夫……おれは、ここにいるから……」

    KP : 惣太郎は怯える彼女の手を握り、そう呟き続けるまま、時が過ぎるのを待つことしかできなかった。

    東結衣 : 「…………」
    東惣太郎 : 「……落ち着いた?」
    東結衣 : 「え、ええ……なんとか」
    東惣太郎 : 「良かった。……もうやらないでくれよ、こんなこと」
    東惣太郎 : 「おれだって、結衣さんが酷い目に遭うのは見たくないんだから」
    東結衣 : 「……ごめんなさい」
    東惣太郎 : 「……なに笑ってるの」
    東結衣 : 「べつに」

    KP : そのようなやりとりをしていると、扉のほうから錠が回る音がした。扉が開いたのだろう。

    東惣太郎 : 「今、あそこ、開いた?」
    東結衣 : 「そんな感じの音したわね」
    東惣太郎 : 「じゃあ、さっさとこんなところ出よう」

    KP : 扉を開けると、目が眩んだ。
    真っ白な部屋の真っ白な扉の先は、真っ暗な闇の中だった。

    いや、違う。
    明暗に眩んだ目を凝らせば、淡くではあるものの照明が点在しているのが分かる。

    KP : その様相はまるで博物館だ。
    大小様々なショーケースが厳然と立ち並び、黒い部屋の中で淡白の照明が当てられている。
    足元には順路を示す矢印が記され、導くようにロープで部屋が区切られている。
    人の気配はなく、またけたたましいほどの無音だ。耳が痛い。

    東惣太郎 : 「静かだな。……離れないで」
    東結衣 : 「……ええ」

    KP : (順路1:ショーケース・小)
    扉のすぐ横に置かれたこぢんまりとした小さなショーケースだ。
    一枚の紙が淡い照明で照らされている。
    短い文字でこう記されているようだ。

    「ようこそおいでくださいました。
    何のおもてなしも出来ませんが、どうぞ御覧下さいませ。

    お客様に一点、お願いがございます。
    どうか展示物には、お手を触れられませんように。

    お手を触れられませんように。
    お手を触れられませんように。
    お手を触れられませんように。
    お手を触れられませんように。

    ■■■■■■■■お手を触れられませんように。」

    ……赤黒いインクと相まって、繰り返される文言がどこか寒気を感じさせるだろう。
    最後の一文の文頭はぐちゃぐちゃに塗り潰され、判別ができない。
    しかも、紙の重石の代わりに置かれているのは……どうやら、歯のようだ。
    薄気味悪い光景は、まだ続くらしい。【SANC 1/1d2】

    東惣太郎 : CCB<=71 SANチェック (1D100<=71) > 5 > 決定的成功/スペシャル
    東結衣 : CCB<=76 SANチェック (1D100<=76) > 73 > 成功
    [ 東惣太郎 ] SAN : 71 → 70
    [ 東結衣 ] SAN : 76 → 75

    東惣太郎 : 「結衣さん、何も触らないでくれよ」
    東結衣 : 「触らないわよ」
    東惣太郎 : 「いつも触るだろ、こういう時」
    東結衣 : 「それは……まあ、時と場合はわきまえるわよ。流石にね」
    東惣太郎 : 「ならいいけど」

    KP : (ロープ)
    あなたたちはロープを辿り、お行儀よく順路を辿るだろう。
    部屋全体は暗く、足元の照明と妙な艶のあるロープだけが頼りだ。

    東惣太郎 : CCB<=65 目星 (1D100<=65) > 62 > 成功
    東結衣 : CCB<=75 目星 (1D100<=75) > 31 > 成功

    KP : ロープ? ……いや、違う。あなたたちは気付いてしまうだろう。
    妙な艶のある赤い紐。いいや、紐ではない。
    それは、はらわただ。人間の腸だった。【SANC 1/1d3】

    東惣太郎 : CCB<=70 SANチェック (1D100<=70) > 89 > 失敗
    東惣太郎 : 1d3 (1D3) > 2
    東結衣 : CCB<=75 SANチェック (1D100<=75) > 34 > 成功
    [ 東惣太郎 ] SAN : 70 → 68
    [ 東結衣 ] SAN : 75 → 74

    東惣太郎 : 「う、わっ……こんなところまで……」
    東結衣 : 「ほんと、悪趣味ねえ……」

    KP : (順路2:ショーケース・中)
    中程の大きさのショーケースには、小さなプレートの説明書きと共に、いくつかの肉が展示されている。
    そう──また、肉だ。

    「心情」には脳が。
    「感情」には眼球が。
    「愛情」には唇が。
    「欲情」には指が。
    「激情」には足首が。

    丁寧に切り取られ、並べられ、さも当たり前のように展示されている。
    精巧に作られた玩具のようだ──そこに滴る赤色がなければ。【SANC 1/1d3】

    東惣太郎 : CCB<=68 SANチェック (1D100<=68) > 16 > 成功
    東結衣 : CCB<=74 SANチェック (1D100<=74) > 37 > 成功
    [ 東惣太郎 ] SAN : 68 → 67
    [ 東結衣 ] SAN : 74 → 73

    東惣太郎 : 「……」

    東結衣 : 「……もう、あんまり見ない方がいいかもしれないわね……」

    KP : ショーケースの端には説明書き用の紙が一枚。
    入口にあったものとおなじように、画鋲の顔をした白い歯がぽつんと置かれている。
    そこには赤黒い文字で、こう記されている。

    「未来の取捨選択と人殺しとは、どう違うのか?
    一つの未来を殺すことと、人を殺すこととは、何が違うのだろうか?」

    KP : 先へ進もうとしたその時。
    ショーケースの中から、鈍い衝撃音がした。

    東結衣 : 「今の、音……」
    東惣太郎 : 「……多分、またろくでもないものだろ。早く先進もう」

    KP : (順路3)

    人間でもすっぽりと入れそうな、縦長のショーケースだ。
    張り紙がしてある……画鋲代わりの歯に留められて。


    「幼少期を思い出しましょう!

    何を願いましたか?
    何を望みましたか?
    夢は叶いましたか?
    夢を叶えましたか?

    叶えてもらえなかった子供の気持ちは考えましたか?
    殺された未来の気持ちは考えましたか?
    諦められた夢の気持ちは?

    あなたたちはいくつの未来ゆめを殺してきましたか?」


    ショーケースを見る。
    否が応でも目に入るだろう。

    赤い糸で継ぎ接ぎの手足。
    転び出たはらわた。
    角度のちぐはぐな首と頭。
    飛び出した眼球。

    血の涙を流すもの。
    不揃いな体を持つもの。
    言葉を失ったもの。

    そこにいたのは。
    否。
    そこにあったのは。



    今のあなたたちに殺された、いつかの未来だったはずの「あなたたち」だった。【SANC 1d3/1d4】

    東惣太郎 : CCB<=67 SANチェック (1D100<=67) > 7 > スペシャル
    東惣太郎 : 1d3 (1D3) > 3
    東結衣 : CCB<=73 SANチェック (1D100<=73) > 95 > 失敗
    東結衣 : 1d4 (1D4) > 3
    [ 東惣太郎 ] SAN : 67 → 64
    [ 東結衣 ] SAN : 73 → 70
    東惣太郎 : CCB<=60 アイデア (1D100<=60) > 60 > 成功
    東結衣 : CCB<=90 アイデア (1D100<=90) > 27 > 成功
    東惣太郎 : 1d10 (1D10) > 4
    東結衣 : 1d10 (1D10) > 2
    東惣太郎 : 【一時的狂気】多弁症
    東結衣 : 【一時的狂気】パニック逃亡

    KP : 二人は、ショーケースの中身から即座に目を離さなかった。離すことができなかった。貼り紙の言葉を見て、同時に思い出す。共に願いながら、共に望みながら、共に諦めた、小さな生命───殺された夢の存在を。それが愛する互いの惨殺された姿となって目の前にあると、気付いてしまう。二人にとってあまりに残酷で、耐えがたい光景が広がっていたことは、言うまでもなく。

    東結衣 : 「あ、ああっ……もう嫌、嫌!」
    東惣太郎 : 「…………ゆ、いさん。ま、待って結衣さん、離れないでって言っただろ、これ以上君になにかあったらと思うとおれは、聞こえてないのか、行くな、ああお願いだから落ち着いてくれ、大丈夫だから落ち着け、大丈夫落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け……」

    KP : どこかへと走り去る結衣を引き留められないまま、惣太郎はぶつぶつと独り言を繰り返す。頭を抱えたままふと見やったショーケース。その中で「あなたたち」の口が開閉する。
    どろりと血を吐きながら。

    あなたはその言葉を理解するだろう。
    何故ならそれはあなたなのだから。



    「おいていかないで」

    声なき言葉を最後に、意識は暗転した。

    KP : ……心臓が動いている。
    鼻で、口で、呼吸する。
    指先が跳ねる。
    爪先で床を踏む。

    生きている音がする。
    自分の内側から。


    あなたたちは目覚めた。
    あなたたちの部屋で。

    東惣太郎 : 「……」
    東結衣 : 「……」
    東惣太郎 : 「……今の、夢?」
    東結衣 : 「夢、ならいいけれど……その顔……多分、同じ夢、よね」
    東惣太郎 : 「……置いていくなんて、酷いな。離れないでって言ったのに」
    東結衣 : 「やっぱり同じ夢……や、あれは、……怖かったもの」
    東惣太郎 : 「……まあ、な……」
    東惣太郎 : 「でもまあ……無事で、良かったよ」
    東結衣 : 「……そうね。あなたも」
    東惣太郎 : 「今生きてることに、まずは感謝しなきゃな……」

    KP : あなたたちはちぐはぐではない体を起こし。
    色鮮やかな世界を見る瞼を持ち上げて。
    いつかの夢と未来を殺し、今日も生きていくだろう。



    ──未来を選択するということは、選択されなかった未来を殺すことと同義であり。

    ──生きるということは、未来を殺し続けることと同義なのだから。


    KP : END「灰櫃のミュゼ」

    生還報酬:SAN回復 1d6

    東惣太郎 : 1d6 (1D6) > 5

    [ 東惣太郎 ] SAN : 64 → 69
    東結衣 : 1d6 (1D6) > 5
    [ 東結衣 ] SAN : 70 → 75
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