璃月に限らず、港の朝は早い。やけに早く目が覚めてしまって、埠頭をうろついていれば見慣れた背中を見た。
「あ、おはよう公子野郎! 突然だけどよ、誰かに言われてドキッとするセリフとかないか?」
「……確かに随分と唐突だね、どうしたのかなおチビちゃん」
「あー……それがね、別の世界にある恋愛小説の話をしたら、パイモンすごく盛り上がっちゃって」
ぴょんぴょん、くるくる宙を舞う少女の隣、苦笑するのは旅人だ。ふむ、と顎に手を当て考えてみる。
「……もう待てない、こいつは俺のものだ、とかかなあ。もちろん相手が強敵であることに限るけどね!」
そりゃそうか、という反応。当たり前である。タルタリヤがときめくのはいつだって強者との闘いであり、俺が焦がれるのは強者との出会い。つまりはそういうことだった。
1917