スーパーヘルス ディスポーザブル手袋を両手にはめて、富永は覚悟を決めた。
やるぞ。僕なら出来る。
数年ぶりに実家に帰ってきた。まだまだ病院に詰めることも多いが、ようやく馴染んできたベッド。T村にいた間は、結局診療所の客間を一室借りていた。こうして寝比べてみると両親はずいぶんと良い寝台を与えてくれたのだと実感する。子供の頃はこの広々としたベッドが好きではなかった。親子で川の字に寝る話をしていた同級生に羨望を覚えたものだが、今はちょうどよい。
シーツの上にバスタオルを敷いて、汚れ避け兼器材置き場にした。器材といっても大したものはない。今両手につけた手袋を除けば潤滑剤しかないのだ。己の指、それだけが頼りだった。潤滑剤を適量指にとると、ベッドの上で胡坐を掻いていた足を解いて、迷った末に側臥位を取った。すでに下着は脱いだ状態だったので、バスタオルのふわふわとした感触が腰をくすぐる。いよいよだ。緊張からか下腹部にざわつくような痛痒感がある。手袋のゴム越しに触れる液体に恐怖を覚えたのは久しぶりだった。
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