【膝髭】Follow me.○始
本丸の庭に美しい紅葉が溢れる頃。執務室の上座に座した審神者は淡々と、目前に座した男に特殊任務の内容を告げた。
その男は上から下まで真黒な軍服風の洋装と、下は細袴を身にまとい、髪は涼やかな印象を与える薄緑色、目は蛇のように鋭い琥珀色で、己を膝丸と名乗る刀剣男士だ。
彼はキリリ、と引き絞られた弓のように鋭利な視線を、半紙のような布に顔を隠した審神者へ向けている。当の審神者から緊張や恐怖といった何らかの感情は伺えない。
審神者はただ淡々と、時の政府からの任務を男士に説明するのみである。
“終息する分史の監視”
言葉だけ、噂程度には膝丸の耳にも届いていた。そのような特殊任務が極少数の本丸に与えられるのだと。そして就任すれは一生、逃れることは出来ないのだと。
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