女装アイドル立香くんちゃんは有能マネージャーの若モリくんが大好きです♥ 大規模なライブハウスは興奮による熱気と熱狂に包まれている。男性も女性も半々程度、その年代も様々だったがその視線はステージ上、たった一人のアイドルに向けられていた。
「みんなー! 今日もありがとう!」
均整の取れた身体をチアガール風の衣装で包み、会場の男女達を魅了し続ける可愛らしい──青年。藤丸立香だ。
生物学的には立派に男。声変わりもしっかり終了している。だから彼のことを本当の女と勘違いしている人間はこの会場内で一人もいない。しかし性別を超越した元気一杯な魅力はあらゆる年代から支持されていた。
ファン曰く「男の子の方がお得」「ダンスも歌も上手い」「メカクレサイコー」。
デビュー当初こそ色物扱いだったがいつしか万人に愛されるアイドルとなっていた。
今日はチアガール風衣装の他にも制服風、正統派なドレスなど複数の衣装替えをしたがどれも好評。早着替えの練習は大変だったが喜んでくれて良かったと安心しながら楽屋に戻っていく。
「お疲れ様。マッサージはご入用かな」
「おねがいします……」
楽屋で待ち受けていたのは、マネージャーであるジェームズ・モリアーティだ。いつでも完璧に整えられた銀髪に、きっちりと几帳面に着込んだスーツ。どうして自分がアイドルにならないのかと不思議がられている整った顔立ち。厳しく優しく立香をここまで引っ張ってきた相棒の姿を見てようやく一息ついた心地になった。
楽屋のメイク用机には既に飲み物と軽食が準備されており、椅子に座ればツインテールのウィッグを外され一気に頭が軽くなる。すぐに肩にタオルがかけられて優しいマッサージが始まった。立香はどんなプロのマッサージ師よりもモリアーティのこれが好きだった。
「ライブ中に今日のSNS用写真と文案を送っておいた。更新しておいてくれ」
「ん、分かった」
SNS更新もアイドルの大事な仕事だ。基本的に立香本人で文面は考えろと言われているが立香が限界に近いときはモリアーティが作ることもある。
絵文字も区切り方も普段の立香の書き方を完璧にエミュレートした文案は完璧で、手直しもせずに投稿した。それにしても、生真面目な彼がどんな顔でこれを打っているのか少し気になってくすりと微笑む。
モリアーティのマッサージは最初の肩慣らしから本格的な施術に入っていた。パンパンパンと適度な力で背中や肩を叩かれるとつい声が出てしまう。
「あ〜ぎぢいぃ」
「ファンには聞かせられないな、その声」
モリアーティは笑いながら次のバラエティ番組「マネージャーだけが知るアイドルの秘話」のネタはこれにしようと考える。無尽蔵の体力で歌って踊る彼が実は温泉とマッサージに目がないというのは可愛らしいギャップだろう。女性ウケも悪くない。
立香の人気はもちろん本人の努力もあるがモリアーティの戦略が当たったところも大きい。可愛らしさの中にも男の色気を少し混ぜることで他のアイドルと完全に差別化する、というのが彼の作戦だった。
「ほら食べて」
「寝そう……」
「あと五分でマッサージを終えるから十分でクレンジングして。着替えは五分。そうすれば計算上は三十分後には家だよ」
「がんばりゅ……」
もぎゅもぎゅとサンドイッチを口に入れながら、立香は眠たい目を擦った。化粧を落として着替えると本当にどこにでもいる好青年といったいでたちになる。街ですれ違ってもあの立香だとは誰も気付かないだろう。
それでも念のため人目を避けるようにパーカーを被り、地下駐車場から車に乗り込む。
「短時間だが少し休むといい」
「ありがと」
手続きを終えて駐車場を出る頃にはもううとうとし始めていた。こうやってどこでも寝られる強さというのが立香の美点でもある。
「ごめん、荷物も持って上がってくれるかな」
「構わないとも」
立香の住まいは他にも芸能人が住んでいると噂されるセキュリティの整ったマンションだった。この部屋もモリアーティが見つけてきたのだ。地下の駐車場から直接エレベーターで居住階へ行けるので人目を避けるのにも良いと言う。よく分からずにモリアーティに言われるがままここに決めたが、疲れているときはそのありがたみが骨身に沁みた。
「ただいまぁ〜」
「はいはいおかえり」
玄関を開けて中に入る。誰もいない室内に向けて、立香は律儀に挨拶した。それに気のない返事をしつつモリアーティも立香に続く。
立香のリュックと自分の荷物で両手が塞がっているモリアーティも疲れから少々ぼんやりしていた。だから閉まったドアに押し付けられる時も、不埒なアイドルに唇を奪われる時も碌な抵抗ができなかったのだ。
「ん、こら……疲れてたんじゃなかったのかい」
「さっき寝たからもうダイジョーブ」
「この体力オバケ」
つい一時間ほど前まで可愛らしい笑顔で人々を虜にしていた立香は今、捕食者の笑顔でモリアーティを追い詰めている。頬を染めつつも彼はゆるりと首を振って拒絶の意を示す。
「明日も早いんだからダメ」
「えー、この間の衣装好きそうだったから……準備してるんだけど」
「っ!」
形の良い唇が低い声で誘惑を耳に吹き込む。
それは先日のバレンタインデーイベントで使った衣装のことだ。立香の衣装にレンタル品はほぼなく、専属衣装担当による変態的もとい献身的な作業によって成り立っていた。だから衣装が立香本人の手元に残っているのだ。
性欲なんてございませんと言いたげな彼が正統派の可愛さに弱いのを立香は知っていたし、イベント中密かに見惚れていたのにもしっかりと気付いていた。
モリアーティの鋭い目が泳ぐ。
「ジェームズ」
「……明日は六時にはここを出るんだ。ねぼすけなキミをきちんと起こすためにマネージャーが泊まりがけで世話することくらいは、ある、だろう……」
ボソボソと言い訳じみた言葉をいくつか並べながら、モリアーティは立香を押し除けて居室の中に進む。リビングに荷物を置いて振り返ったその顔は期待で潤んでいて、それがあまりにも可愛くて立香は何度か啄むようなキスをした。
「ありがと、大好き!」
「ああもう、僕もだよ!」
アイドルと恋愛関係になるマネージャーなんて下の下だ。そうモリアーティは自分を戒めていた。大事な商品であるアイドルに手を出す──モリアーティの場合は出されているのだが、そんな事をすれば関係が濁って適切な判断ができなくなる。
それなのに、どうしようもなく惹かれてしまった。誰よりも努力する姿を間近で見せつけられて、それであんなに格好良く口説かれて。さらに身体の相性もとんでもなく良くて……とっくに離れられなくなっている。
「シャワー浴びようか」
誘われるがまま、互いにキスしながら服を脱がし合う。このスーツはシワになってしまうが、どうせこの家に数着置いているのだから気にしない。
常に女装で人前に出ているから気付きにくいが、立香の身体は引き締まって筋肉質だった。ダンスの練習やハードスケジュールに耐えるだけの体力を求めると必然的にそうなるのだろう。
「ジェームズ、綺麗だよ」
「そんな……きみに言われると照れるな」
シャワーを浴びながら甘く戯れ合えば、マネージャーもアイドルも関係なくただの恋人同士のようで。ずっとこうしていたい、という甘い考えを苦労して振り解いた。
立香の部屋着を借りて寝室へ連れて行かれる。シンプルだが寝心地にはこだわったダブルベッドはモリアーティが勧めたものだ。この上で何度抱かれたのか、もう数えるのすら馬鹿馬鹿しい。
「少し待ってて」と言い残して立香は別室へ行く。その間、事務所に簡単に報告を入れてモリアーティはスマートフォンをサイドテーブルへ放り投げた。ややして家主が戻ってくる。
「どう? 可愛い?」
「……ああまったく可愛いよ!」
自分の好みから性癖まで全て見透かされているという羞恥を誤魔化したくて堪らず叫んだ。
たっぷりとしたパニエで膨らんだチョコレート色のメイド服風スカートにはホイップやイチゴ、マカロンなどの可愛らしいスイーツがプリントされて、白いエプロンを際立たせていた。トレードマークのツインテールはくるりと緩いウェーブを描き、その頂点にはキャンディを模した飾りが付いている。
人形のように可愛らしくて一度は見ているはずのモリアーティも感嘆のため息が漏れてしまった。
一フレーズだけ踊ってみた後、くるりと優雅に回転してベッドに座るモリアーティの隣にぽすりと収まる。きっとファンの男からすれば夢のようなシチュエーションだろう。立香一番のファンであるモリアーティにとってもそれは同じで。
「ジェームズ、可愛いオレが大好きだもんね?」
仕事の時ほどしっかりメイクをしていない、多少白粉をはたいた程度なのだろうが薄化粧はその可愛らしさを損ねていなかった。
つい、と自分の唇をなぞった人差し指がモリアーティの唇に触れる。小悪魔の微笑みが体面や社会的な規範など容易に溶かしていく。
「可愛い格好のオレに女の子みたいに泣かされて一番奥までハメられるの、大好きだよね?」
「ぁ……」
「スカートの中に顔突っ込んでオレのちんぽ舐めるのも、喉奥突かれるのも……ぜーんぶ大好きなんだよね?」
「あ、ぁ……♥」
可愛らしい顔と衣装で露骨な淫語を囁かれて、それだけで熱い息を吐いてしまう。全て経験済みの身体は余すところなくそれらを覚えており、思い返すだけで気持ちよくなって理性が消えていく。
かぷりと唇を喰われるように口付けられ、舌を絡ませられる。唾液を吸われ、内側を全て舐められて全て丸裸にされてしまう。
「ん、は…ぁ……」
「ん、く、はぅ……」
立香が唇を離した時にはもはや有能なマネージャーの面影はなく、恋人の愛に飢えた淫らな男が一人いるだけだった。
ずるずるとへたり込むようにベッドから降りて立香の足元に跪いて媚びる。
「好き……すき、だから……おちんぽ、舐めさせて♥」
「っ、……どうぞ♥」
可愛いプリントスカートとふわふわのパニエを掻き分けて勃起しきったペニスを見つける。それは男性の平均よりも相当大きいだろう。この顔と服のギャップに、頭がおかしくなりそうだ。
ぺろり、と亀頭を舐める。雄の味に脳を犯されるのが気持ちよくてスカートの中に頭を突っ込んでじゅぷじゅぷと亀頭を吸い上げる。スカートの中は暗くて、雄の淫臭が籠っていた。
衣装を汚してしまわないよう細心の注意を払いながらも大きな飴を舐めるように夢中で太い幹から雁首まで舐め上げて、玉まで愛撫すればその太ももがひくりと戦慄く。
「どう?」
「ん、うれひぃ、おいひ……♥」
立香の視点からは、スカートの中が不自然に盛り上がりそこから伸びたモリアーティの腰が誘うように揺れているところしか見えない。
声を掛ければ幾重にもなった布越しに、ややくぐもった声が立香の耳に届いた。じゅるじゅると粘液を啜る音と舐めているだけで感じているらしいモリアーティの微かな喘ぎ声が寝室に響く。
「っ、は…っ♥ジェームズのフェラ顔見れないのは残念だけど……そんなに嬉しいならいっか」
モリアーティが次に何をしようとしているのかはスカートに阻まれて窺い知れないため、もどかしさが興奮を助長する。あまりにも太い亀頭に歯を立てないようにしていると何度か喉奥に滑り込んでしまうらしく、えずく音が生々しい。だがモリアーティはそれすらも快楽を得てしまうのだ。
「あ、は……っ♥もう出そう……どうする?」
そう聞いたのは一応の配慮からだがモリアーティの返事は毎回ほぼ決まったものだった。精液をねだるように吸引が強くなる。
「ん、のむ、のませて……♥」
「あっ♥出る、ジェームズ、全部のんで♥♥♥ っぁ♥♥」
びゅるびゅる迸る一番濃くて量の多い精液を口の中で受け止める。スカートの中から這い出て立香を見上げていると、これが彼から出されたものなのだと強く感じてまた脳が溶ける。
美味いはずもないものだが、不思議と美味しくてゆっくりと味わってしまう。
一度口を開き、その量の多さを見せつけた後こくりと嚥下し、食道も、胃も犯されていく様をうっとりと感じた。
「全部飲んだんだ。すごいね、ジェームズは」
「あん、りつかぁ♥」
腰が抜けてしまったモリアーティを立香はひょいと抱え上げてベッドに寝かせた。恋人の顔を覗き込む。平素は知性と理性と打算に満ちている漆黒の瞳が快楽に蕩け、どろどろになっているのを見るのが立香は好きだった。
部屋着を脱がし、汗以外で衣装が汚れないように立香自身だけではなくモリアーティのペニスにもゴムを付けてやる。脚を広げさせるとその雄膣はもう既に潤っていて立香は目を瞬かせた。
「も、準備……済ましてるから、早く」
「なんだ、最初からジェームズも期待してたんだ」
指で状態を確かめるが、彼の言う通りすぐにでも挿入できそうなほど蕩けていた。時間があるとすれば合流前だろう。あんなにテキパキと仕事をこなしながら、スーツの中はこの状態だったのだ。そう考えてしまうとますます興奮して、入り口に亀頭を擦り付けた。
「あぅ、っ、ちが……どうせきみは言うことを聞かないから! お互いの睡眠時間を確保するために僕は仕方なく……あ♥あ♥あ♥ああっ!♥♥♥♥♥」
「入れるね」
「もう入ってるぅ♥♥♥」
準備済みの柔らかな雄膣は、立香の巨根すら簡単に受け入れてしまう。軽く前後に揺すればきゅむきゅむ♥と絡みついてきて貪欲に精を搾ってくるようだ。普段の禁欲的な様子からは想像がつかないほど淫らな胎内に、立香は感嘆の溜め息を漏らした。
「ハ、ジェームズのナカすっごい♥ちんぽ溶けそう♥」
「あ……ぅ…♥」
挿入されただけで達してしまったため、付けたばかりのゴムの先端が丸く膨らんで、そんなところすらも可愛いと呟いた。
色素の薄い身体の中で、桃色の乳首がつんと主張している。可愛らしくて、スイーツみたいに甘そうで、ぱくりと食べてしまった。甘やかな悲鳴が降ってくる。
「ジェームズの声、すっごいクる……可愛いね」
「あ、ひぁっ♥♥りつかぁ♥♥♥あああッ♥♥♥」
浅い場所にあるしこりを重点的に虐められて、モリアーティの身体がしなった。身悶え動こうとする身体は立香によって固定され、ぐい、と腰を引き寄せられてまた叫び喘ぐ。
「奥行かせて? きっともっと気持ちいいよ」
「は……はひ♥」
モリアーティを見下ろす立香は美少女アイドルそのものの姿をしている。そんな彼に犯されて、ぐちゃぐちゃにに喘がされているという倒錯感で頭がおかしくなりそうだ。
立香に言われるがまま腰を上げる。枕を敷かれてずぶ、と体重をかけられれば、緩んだ結腸口に雄が入り込んできた。
「っ!♥♥♥」
「はー、気持ちいい♥♥♥めちゃくちゃ吸い付いてくる」
ぱちゅぱちゅと、肉体同士がぶつかる音が寝室の壁に反響する。
深く挿入されて近づいたせいで、モリアーティの腹から下も可愛らしいスカートで彩られている。透き通るような白い肌にはどんな色もよく映えて、立香はうっそりと目を細めた。
「ジェームズ、可愛いね。大好きだよ」
「はへ♥きもちぃ♥♥♥しゅき、しゅきなのぉ♥♥♥」
最奥を突き上げられてからというもの、モリアーティは達しっぱなしで戻ってこられていない。快楽で自慢の脳を焼かれ立香の言葉すら届いていないようだった。
顔中にキスの雨を降らせて指を絡める。それを喜ぶかのようにきゅうきゅうと締め付けてくる愛しい人を抱きしめた。
「イく♥♥♥またいくぅ♥♥♥♥」
「う、ぁ……♥ 」
一段と強くなる締め付け、奥へと誘う肉壁の中で立香も達していた。
モリアーティはぐったりシーツに身を投げ出していて黒曜の瞳も閉ざされ意識がないように見えた。だから本音がぽろりと溢れる。
「オレがアイドルじゃなくなっても、ずっと一緒にいて」
モリアーティは暗闇に落ちていく意識の中、その声を聞いた。そんなの、あたりまえじゃないか。そう返事しようとしたが舌先すら動かせなくて、とぷりと沈んでしまった。
「お休み、ジェームズ。明日もよろしくね」
眠る恋人の頬に軽くキスをして、衣装を脱いだ立香はその隣に寝転んだ。