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    やこ(夜狐)

    字書き・男女CPしか書かない・KOFけーくー推し、他も雑多に。

    衝動的に作品を消すことがあるので、消えてたら諦めてください。

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    やこ(夜狐)

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    pixivで書いた奴(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17555440)のオマケのつもりで書いたら思いのほか長くなった。K'のクリムゾンスターロード復活しませんかね、あの謎台詞好きなんだけど。黒好きだなお前…ってなる。

    #KOF
    #ケークー
    wildCakes

    オマケ。その後の二人。「けーだっしゅー、ねぇ、お茶しよー?」
     クーラが間延びした口調でそんなことを言いながら顔を出したのは、ウィップが休暇を終えて去っていった、その日の午後のことだった。手にしたトレイからは、馴染みのない、紅茶の香りが漂っている。
     彼女はK'の返事を待つことなく彼の個室に入ってくると、矢張り無許可で彼が座るベッドの上に自分も腰を下ろした。そうするのが当然、という所作だ。
     ちなみに普段はソファを定位置に決め込んでいるK'が珍しく個室に引っ込んでいたのは、少し前までマキシマとクーラが残り物のケーキで楽しいティーパーティーと洒落こんでいたためであった。近くに居ると確実にクーラの「一緒に食べよう」攻撃に晒されると彼は学習していたのである。
    「あ、ケーキは全部食べちゃったよ。K'ほんとに要らなかった? 美味しかったよ?」
    「要らねぇ」
    「ふぅん」
     美味しかったのになぁ。
     まだ名残惜し気にそんなことをぼやきつつ、クーラはK'の、滅多に使われない(ほぼソファで寝起きしている為だ)ベッドに手にしていたトレイを置いた。ティーカップの中では、猫舌のクーラの好みに合わせた温めの紅茶が揺蕩っている。そのうち片方を、クーラは「はい、K'の分」と彼の前に差し出した。
     ケーキを押し付けられるよりは余程マシだと判断していたから、K'はそのカップを何気なく受け取り。
     ──そして口に入れた液体の異様な甘さにその場で派手に咽た。
    「えっ、どうしたの」
    「……これ、てめぇのだろ……」
    「……あれ? ごめんね、ホントだ。そっちがクーラのだ」
     一体幾つ砂糖をいれたらこうなるんだ。文句をつけようにも口の中の甘ったるさに胸やけさえ覚えて、K'はクーラが手にしていた、もう一つのカップの方を飲み干そうと手を伸ばしたのだが。
     それより早く、カップをトレイに置いて、クーラが彼の懐に入り込んでいた。彼を見上げる赤い瞳が悪戯に煌めく。良いこと思いついた、と言わんばかりに、愉しげに口元が弧を描いていた。
    「じゃあそれ、ちょっと頂戴」
    「は? おま……」
     言葉の後半は咽喉の奥で消える。クーラの唇が、彼のそれを塞いでしまったからだった。柔らかくて少し体温が低い彼女の舌が、「頂戴」という宣言通りに彼の口内を味わうように撫ぜていく。
     一通り味わうと満足したのか、クーラは吐息を漏らしながら顔を離した。それから首を傾げて、
    「あんまり甘くないね?」
    「お前……」
     言いたいことが山ほどあったものの、K'はそのどれもを飲み込んだ。どこでそんな手管覚えてきたんだ、とか、もう少し色気のあることは言えねぇのか、とか。とはいえどの発言でも墓穴を掘る気しかしなかったし、特に手管云々に関しては身に覚えがあったものだから余計に何も言えなかった──彼女の学習能力の高さをこんな形で実感したくは無かったが。
     ついでに言うならば。彼女の方の唇は、やたらと甘ったるかった。先程まで食べていたとかいうケーキと、これでもかと砂糖を溶かした紅茶のせいなのだろう。
    「…お前そのお茶飲んどけ」
    「えー。これ、甘くない方だよ。私、そっちが飲みたいのに」
    「いいから、」
     さっさと口の中の甘さを洗い流せ、と。言外に匂わせた意味に、クーラは一拍遅れて気が付いたのだろう、さっと頬に朱が走る。何しろ彼女は色白なので、そうした変化が分かりやすい。
     しかし彼女の方から仕掛けておいて何を羞じらう必要があるのか、その点はいつまでたってもK'には理解しがたかったのだが。
    「えええ……やだ」
     挙げ句の発言がこれである。が、クーラの言い分なぞ最初から聞く気はなかったK'は即座に、彼女が背後に隠そうとしていたティーカップを奪い取った。
    「飲まねぇなら飲ませるぞ」
    「えっ、ちょっと待っ…」
     何しろやられっ放しは性に合わないのだ。勿論、彼女の抗議は強引に封じ込めた。




    「……ブラウス。染みになっちゃう」
     解放されたクーラが吐息の後に零したのは、大層現実的なそんな一言であった。色気も何もあったものではない。
     唇に僅かに残っていた紅茶を舐めとりつつ、K'は彼女のアイボリーホワイトのブラウスを見遣る。クーラの口の端から零れた紅茶が顎を伝って、胸元に小さな染みを作っていた。
     口元を手の甲でぬぐい取りながら、彼女はじとりとK'を見上げる。
    「セーラと一緒に買ったの。お気に入りなんだからね?」
     おまけに彼女の口から、この場面では出てきて欲しくない名前が出てきたもので、K'は脱力した。何でその名前が出てくるんだ。最初のクーラの発言で色めいた空気は霧散しているのだが、ほんの微かにでも残っていた熱が片端から叩き落とされた気がしてくる。
    「知るか。零したのてめぇだろうが」
    「K'が急にあんなことするからでしょ」
     そこは否定が出来ないので沈黙する。クーラは恨めしげに彼をもう一度睨みやってから、あ、と何か思い出したように小さく声をあげた。
    「思い出した! セーラに伝言頼まれてたんだった」
    「今思い出すのかよそれを…」
     よりによってこの状況で。ベッドの上で並んで座っているこの状況で。
    「え、だってK'が言ったんだよ、あとで教えろって」
     記憶に無かったのでK'は少しばかり眉根を寄せた。それから、クーラに何を伝えたのかを思い出す。そういえば──彼にしては珍しいことではあったが、彼女に頼み事などしていたのだったか。
     ──え、セーラ? うん、ちょっと元気ないね。…ええっと、つまり、元気づけてあげたらいいの? 任せて!
     普段、周囲に庇護されることが多い立場のクーラは、「頼られた」ことが相当に嬉しかったらしい。それはそれは張り切ってリビングへ戻っていったのだったか。
     確かにその後どうなったか、彼は何も聞いていなかった。
     マキシマは何故だか笑いを堪えるような様子で「お姫さんに訊いたらどうだ」と言うばかりだったし、ウィップはウィップで何故か帰り際、彼の顔を見るなり微妙な表情をしていたのが引っ掛かってはいる。彼女はあの時、まだ引き摺っていたのだろうか。ほんの些細な名前の呼び間違いを。それに付随しているであろう、傷跡を。
     何しろあの瞬間。呼び間違いを自覚した瞬間の彼女は、まるで、開いた傷口の痛みに遅れて気が付いたような顔をしていたから。
     別にウィップを気遣った積りは、K'にはない。ただその様子を見て、酷く落ち着かない気分になった、それだけだ。クーラを差し向けるような真似をしたのは──単にその方が彼女にとっても気が楽だろうと判断しただけである。あとはまぁ、ウィップがクーラを溺愛しているのは彼の目にすら明らかなので。
    「……伝言?」
     そこまで思案したところで、彼女の発言に違和感を覚えてK'はその単語を繰り返した。クーラが気まずそうに目を逸らす。
    「ええっと、確か…『気になるのならクーラを寄越さないで、ちゃんと自分で言いに来なさい』…って」
     賢しらな口調はウィップのそれとよく似ていた。実は血の繋がった姉妹じゃねぇのかお前ら。現実逃避気味にそんなことを一瞬考えてから、K'は深々と嘆息し、その場で顔を覆った。
    「バレてんじゃねぇか」
     知らず声が不機嫌に低くなる。クーラがしょげた様子で、両手でカップを抱え持ちながら俯いた。壁を背に膝を立てて、彼の隣に並ぶように座り直しながら、
    「クーラ、ちゃんと黙ってたよ?」
    「だろうな」
     もう一度嘆息して、K'は壁に背を預けた格好で天井を仰ぐ。
     ──考えてみるまでもないことなのだが。
     クーラに隠し事をさせる、というのはあまりにも無理があった。そんなことに今更気が付いた己に自分で呆れてしまったのだ。まして相手は素人ではない、百戦錬磨の傭兵達に揉まれて過ごしているウィップなのだから尚更である。
    「うーん、クーラ、何も言ってないのに、どうしてバレちゃったんだろう…。セーラが凄いから?」
     トレイ一つ分を挟んで隣に座るクーラは一人、そんな頓珍漢なことを言いながら紅茶に口をつけていた。ンな訳あるかよ、と適当にあしらいつつ、K'は横で半ばまで空になった紅茶を一息に飲み干す。
    「あ、そうだ、ブラウスだけど」
    「しつけぇな。…何だよ」
    「染みになっちゃったら、新しいの買ってね」
    「……何で俺が」
    「だって、K'のせいでしょ」
     頬を膨らませてクーラが言い募る。その点は否定できないのだが、しかし。
     荷物持ちやら何やら、幾つか理由があってクーラの買い物に付き合ったこと自体は何度かある。だからこそK'は顔を顰めた。何度経験しても慣れそうにないほどに、彼女に連れられて行くあの手の店舗は大変に居心地が悪い。
    「またあいつが休みの時に行けばいいだろ」
     何とかウィップへ押し付けようとそう返すが、クーラはまだむくれた表情のままだ。
    「やーだ! K'、ちゃんと責任とって!」
    「うるせぇな。たかが服一枚で騒ぎすぎだろ」
    「もう、すぐそういうこと言う! ひどーい! セーラに言いつけちゃうからね!?」
    「何をだよ」
    「K'にお洋服駄目にされた、って」
    「……」
     ともすれば誤解を招きかねない物言いである。
     さて。
     とにかくウィップがクーラに甘いことをK'は良く知っている。それはもう、血が繋がっているのはそっちじゃないのかと勘繰ってしまう程に。
     そしてもうひとつ、クーラが嘘が不得手であることもK'は良く知っていた。「黙っとけ」と言えば沈黙を守ることはできるようなのだが、彼女はどうにも感情が顔にすぐに出てしまう性質なのだ。ついでに言えばクーラの方もウィップをそれこそ実の姉のように慕っているから、彼女に理由や原因を問われてずっと沈黙を守れるとも思えない。
     つまり。
     余計なことを、それもよりによってウィップに告げ口されるよりは、居心地の悪い空間に放り込まれる方がいくらかはマシだろう。そう結論付け、彼は深々と息を吐きだし、隣の少女を横目に見遣る。
     たっぷりの期待が籠った赤い瞳は、その視線を受け取り、無言の降伏を察したのだろう。きらきら、火の粉を思わせる色合いで輝いた。ベッドの上にぴょこんと立ち上がる。その拍子に、空になっていたカップが倒れて転がったが彼女は気にすることはなかった。
    「じゃ、明日ね! 明日お買い物行こう!」
    「せめて一度洗濯してからにしろ」
     一応悪あがきではあるが、抵抗の意思だけは示しておいた。



     そして結局、染みは落ちなかったそうだ。
     翌日午後、何故か勝ち誇った表情でクーラにそう宣言されたK'がどれだけ陰鬱な表情をしていたかというと、横で見ていたマキシマ曰く。
    「KOFの招待状が届いた時みたいな顔だったな」
     とのことである。──まぁ、どちらがマシかと問われると答えに窮するのは確かだ。






     
     新しいお気に入りになったブラウスを纏って、クーラはご機嫌だった。
     「お仕事」だとかで呼び出されたセーラの職場だ。この場所自体はあまり面白みがないし、勝手な行動はするなとよく叱られるので大人しくしているしかなく、退屈な場所だから嫌いな部類に入るのだが。
     今日は話だけだから好きな格好でいい、と言われて大喜びで新しいブラウスを引っ張り出したクーラは、それでも大層ご機嫌だった。
     襟元に大きなリボンタイをあしらった黒地のブラウスに、すらりと長い足を惜しげもなく晒すショートパンツ。足元は低めのヒールのショートブーツ。歩くたびに揺れるリボンタイと、腕を撫でるさらりとしたブラウスの布地の感触が楽しくて仕方がない。
    「セーラっ」
     ご機嫌なまま、クーラは迎えにやってきたらしいセーラ──ウィップに抱き着いた。彼女は「あら」と楽しげな笑い声をあげて、飛びついてきたクーラを受け止めるとそのままくるりと一回転し、
    「クーラ。独り?」
    「うん、おじさんたち、話があるんだって。先にセーラのところに行っててって、追い出されちゃった」
    「あらあら。仲間外れにするなんて、酷い人達ね」
     そんなことを笑いながら言って、ウィップが抱き上げていたクーラを床に下ろす。それから彼女は鳶色の瞳を僅かに細めて、ほんの少しだけ彼女より背の低いクーラの姿を見下ろした。おもむろに、ブラウスのリボン部分に彼女は手を伸ばす。クーラがここまでスキップしていたものだから、少しばかり歪んだそれが気になったらしい。
    「新しい服なのね。ダイアナかフォクシーが送ってきた?」
     あの二人からは時折、クーラの使う小物類や衣服が送られてくることがあるのだ。だが、クーラはふるふると首を横に振った。それから少し思案してしまう。──果たしてこれは言ってよいことだったろうか、黙っておいた方がいいことだったろうか。
     うん、黙ってろとは言われてない。多分言っても大丈夫だ。
    「K'にね、買ってもらったの!」
     頬を上気させ、満面の笑みでクーラは答えて、両手を広げてその場でくるりと回って見せた。襟の後ろのところのデザイン可愛いの、見てみて、と新しい宝物の自慢を続けようとして、肩越しに見やる先、何故だかウィップが固まってしまっていたので、あれ、と首を傾げる。
    「…K'に」
    「うん」
    「何でまた…どういう風の吹き回し?」
    「K'のせいでクーラのお洋服に紅茶零しちゃったんだもん。あれも気に入ってたのに…」
     思い出すとやっぱり気持ちが萎れてしまって、クーラはしょんぼりと俯いた。あれはあれで気に入っていたから、やっぱり惜しい。
    「折角、セーラが選んでくれたのに」
    「ああ、あの──…駄目にしちゃったの?」
    「ちょっと染みが残っちゃったの。勿体ないからまだ着てるよ」
     胸元に少しだけなので、上からカーディガンなり、ストールなりを羽織れば目立たない。そういうことを説明しようとして、クーラはもう一度おや、と首を傾げた。
    「セーラ、どうしたの?」
    「……面白くないわ」
    「ご、ごめんね?」
    「いいのよ。クーラは悪くないんでしょう?」
     腕組みをするウィップはそう言うものの、どうやらお怒りらしい。鳶色の瞳に、暗い炎めいた危険な色が見え隠れする。軍服姿の凛々しい彼女がそういう表情を浮かべているのは格好いいなぁとクーラはつい思ってしまうのだが、今はそれより彼女の怒りを宥める方が先だ。
    「あのねセーラ、ええっと。K'がね、ちゃんと選んでくれたんだよ」
     ──まぁ試着室から出たクーラの「どっちがいい?」という質問(それも一度や二度ではなくかなりしつこく繰り返した質問だった)に非常に面倒そうに一瞥しただけでろくに似合うかどうかも確認せず、無造作に応じただけのことなので「ちゃんと選んだ」は言いすぎかもしれないが。それでも、どうやらウィップは彼に対して怒っているようだし、何とかフォローせねばとクーラなりに考えた結果の発言である。が。
    「そう。選んだのね。ふぅん」
    (あれぇ? 何で?)
     ウィップの機嫌は、何故か更に急降下してしまった。更に彼女は「用事を思い出した」とかで、クーラを待機室のひとつへ押し込むなり踵を返して廊下を早足に去っていく。何故か去り際に襟の後ろ、つまり彼女が普段から愛用の鞭と銃を納めている場所に確認するように触れていたように見えたが気のせいだろうか。
    (セーラ、お仕事かな。武器触ってたし…誰かやっつけに行くのかな…?)
     そういう荒事であれば自分も力になれる。お手伝いに行こうかな、と一瞬クーラは思ったものの、「そこでいい子で待っててね」というウィップの言葉を思い出して、少し悩んでから室内のソファに座り直した。テーブルには、クーラが来ることが分かっていたからだろう。キャンディの詰まった小瓶が置かれていたので、そちらに心を奪われてしまった、というのもあった。



     その後。
     予定の時間を大幅に過ぎてようやく戻ってきたK'が、何故か酷く不機嫌そうで、加えて少しばかり硝煙の匂いをさせていたので、クーラは更に首を傾げる羽目になった。「あの女…」と彼は恨めしそうに呻いていたが、一体何があったのだろうか。
     とりあえず「キャンディ食べる?」と尋ねたら、要らねぇよ、といつもの答えが返ってきた。
    (どうしたんだろ?)
     K'より先に話を終えて、クーラと差し向かいにお茶を飲んでいたマキシマは事情を知っているらしく、「お疲れさん」と同情の視線を向けている。クーラだけが何も知らないらしい。仲間外れにされることは珍しくなかったけれども、何だか面白くない気分でクーラは口を尖らせた。
    (…あとでK'に訊いてみよ)


     彼は断固として、何が起きたのか教えてはくれなかった。



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