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    takeruru_Y

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    ビルドバーンでやらかしちゃったイサミのバレンタインなスミイサ小咄。

    Happy Valentine’s Day「スミス、ブレイバーンに伝えておいてくれよ。〝アレ〟は流石にイサミに怒られるぞ!ってな」
    「言っとくけど、俺達はスミスを探しにブレイバーンの部屋を覗いただけだからな」
     ――自分達は不可抗力で見てしまっただけだ、と。
     海兵隊の仲間達に異口同音に言葉を投げかけられ、スミスは廊下で呆然と立ち尽くすのであった。
    「イサミに怒られる?」
     何故ならば、スミスには全く身に覚えがないのだから。
     己の自室に関する事でイサミが――あのイサミが、怒る原因。
     スミスには全く思い浮かばなかった。それを第三者に指摘されるという点も含めて。しかも、言葉のニュアンス的には〝チラっと覗いた〟程度の視認情報で。
     十数秒悩んだ後、スミスはブレイバーンの自室へと即座に方向転換をした。仲間達はスミスに嘘をつくような人達ではない。ならば、それ相応の何かがあるのだろうと。
    (自室といっても、最近は俺よりイサミの方が入り浸ってる状況だけど)
     勇気融合合身を経た後、イサミもビルドバーンが操作可能となっていたのである。その結果、彼が起こした行動は自室を茶室に改造するという事態であったのだが。
     茶室の件以降はビルドバーンに触れなかったイサミであったが、豪華客船の旅を終え、地球を舞台にした追いかけっこも終え、再度の融合合身を経た後、彼はビルドバーンを度々使用するようになっていた。ヒビキが無くしたボールペンの蓋を生成して、彼女に呆れられたりもしつつ。
     対して、スミスはあまりビルドバーンを使用する機会はなかった。ブレイバーンは未だに自分の手で作りたいプラモデルのキットを生成していたりするが、スミスは自室にプラモデルの箱が増えていく一方なのだから。
    (そうだ。次の週末はイサミも誘ってプラモデルを組もうか)
     裁縫も得意で、手先が器用なイサミだ。彼がプラモデルを気に入るかは別だが、折角なので誘ってみようとスミスは一つの決意を胸に秘めるのであった。
     そして、ブレイバーンの自室へと足を踏み入れた瞬間。
    「――What」
     スミスは思わず、その場に立ち止まってしまうのであった。
     何故なら、そこにはイサミが立っていたのだ。
     イサミ〝達〟が。

     自衛隊の隊服を着たイサミ。
     TSスーツを身に纏っているイサミ。
     ブレイバーンスーツを着てくれているイサミ。
     空手の道着姿のイサミ。
     船上でのボクシングの際の恰好をしているイサミ。
     勇気融合合身の際に髪が伸びたままのイサミ。
     豪華客船で度々着用していた礼服姿のイサミ。
     スミスがカットしてあげたツーブロでアロハシャツを着ているイサミ。
     スミスの愛用品である〝トリコロール〟と日本語で書かれたシャツを着ているイサミ。
     ハロウィンパーティで着ていた警察官の衣装姿のイサミ。

     ――など、など、など。
     大勢のイサミが、ブレイバーンの部屋のあちこちに立っていたのである。
     色がない、石造のようなイサミ達が。
     そこで、スミスは仲間達の言葉を思い出す。
    『流石にイサミに怒られるぞ!』
     確かに、正に、そうであろう。当人に黙って、彼を模した等身大の何かを生成していると知られたら、流石のイサミもスミスに怒るだろう。だが、スミスは困惑するしかなかったのである。
     何故ならば、イサミ達を作ったのは――ブレイバーンではないのだから。
    「スミス?」
     目前の光景を処理しきれずに戸惑うスミスに投げかけられたのは、彼にとって愛しい人の声であった。声がした方向は、ビルドバーンが設置されている側であり。
    「お前、どうしてここに」
     部屋に立ち並ぶイサミ達の合間をぬって、イサミ当人が姿を現したのであった。
    「それは俺の言葉だよ!イサミ、もしかして、このイサミ達は……?」
     スミスには身に覚えのないイサミ達の像。
     そして、イサミ達を作ったのはブレイバーンでないとするならば。
    「うっ」
     明らかに〝見つかってしまった〟という顔をしているイサミ。それが回答だ。
     イサミが現れるより前に、この状況の実行者は彼一人に絞られていたのであるが。
    「イサミ」
    「スミス、その、これは」
    「イサミ」
    「……すみしゅ……」
    「甘えてくれるお前は可愛いけど、今は駄目だからな」
    「うう……」
     スミスから距離をとろうとするイサミであったが、彼はあっという間に壁――ではなく、壁のように存在するビルドバーンにまで追い詰められてしまうのであった。
    「イサミ」
     背後にはビルドバーン。目前にはスミス。
     イサミを逃がさない為にと、スミスの両腕はビルドバーンに伸ばされて、イサミが左右に動けないようにと囲っている状態だ。イサミには逃げる先が残されていなかった。
     そして、何よりも。
    「イサミ」
     至近距離でイサミの姿を映しているエメラルド色の双眸。真摯なスミスの視線を身に受けている中でイサミには黙り込んだり、嘘をついたりは出来なかったのである。
     故に、彼は恐る恐る理由を吐露したのであった。
    「……そろそろ、バレンタインデーだろ」
    「2月14日のことか?」
    「ああ、だから、チョコの準備を」
    「チョコの準備?」
     日本ではバレンタインデーにチョコを贈り合う習慣がある。それに関しては、スパルガイザーでスミスは学んでいた。
     けれども、今問題となっているのはイサミ達の像についてだ。
     等身大のイサミ達の像とチョコが全く結びつかない。だが、確実に嘘はついていない様子のイサミの姿に、スミスの困惑がより深まる。
     もしや、日本では等身大のフィギュアを贈るという自分が知らぬ風習があるのではないか、とスミスが真剣に考え始めてしまった瞬間であった。

    「俺の、等身大チョコを作ろうかと。それで、シリコンの型を作る為に、原型を作ってた」

     イサミの口から、とんでもない話が飛び出して来たのは。
    「Wait. イサミ、Sorry. ちょっと、ちょっと待ってくれ」
    「ん」
    「ありがとう。……それで、ええと、What was that」
    「俺の等身大チョコを作ろうかと」
     本人から改めて理由を聞いた瞬間、スミスは思わず口から「What」という叫びが飛び出しそうになった。
     けれども、必死に飲み込んで考えるのであった。どうして、イサミはこんなことを言い出したのかと。
     冷静で真面目で物静かなイサミであるが、彼には大胆な側面がある。だからこそ、イサミは彼にとっては初対面であったブレイバーンに乗り込んでくれたし、出家騒動を引き起こしたりもした。
     現状もその一端なのであろうとスミスは考えるが、〝等身大のチョコ〟の話題を出した記憶は全くなかった。ふと、思い浮かんでしまったのは仲間の一人であるミユの姿である。だが、もしも彼女が関わっているのならば、何かしらの情報連携がミユからスミスにされている筈だ。
     どうして、と思考を回転させるスミスであったが。
    「俺、バレンタインとか、全然興味が無くて。でも、スミスに喜んで欲しくて」
     必死に考えたんだ、と。イサミも真っすぐにスミスを見上げるのであった。鳶色の双眸に、スミスの顔を映しながら。
    「スミス、俺のこと好きだろ」
    「当然だ!大好きだ」
    「だから、俺のチョコなら、喜んで貰えるかなって」
    「――」
     スミスは再び耐えるのであった。今度は、ブレイバーンにチェンジしかけた自分を。
     要するに、だ。
     部屋の現状を目撃した仲間達も、スミスですらも「何事か」と身構えたこの光景は、スミスを喜ばせたいと願うイサミの気持ちの現れだったのである。
    「イサミ」
    「……」
     ビルドバーンから手を離し、そっとイサミの顎にスミスは手を伸ばした。
    「っ!」
     指先がイサミの顎に触れた瞬間、びくりと彼は身を竦めた。そして、視線を横に逸らしてしまったのである。スミスの視界から、愛おしい鳶色が消えてしまった。
    「イサミ、My Dear. どうか、顔を上げてくれないか。お前の顔を見ながら伝えたいんだ」
    「伝えたいって、何をだよ」
     イサミの声は、僅かに震えていた。
     恐らくは、スミスに叱責されるだろうと思い込んでしまったのであろうとスミスは察する。何事もそつなくこなせてしまうイサミであるが、彼にはどうにも自己評価が低い部分があるのだ。
    「イサミ」
     だから、スミスはイサミの名を紡いだ。
     君が怯えることなど、何一つとしていないのだと。
    「イサミ、My Love. こっちを向いてくれないか?」
    「……んだよ」
     スミスのその思いが通じたのか、ゆっくりとイサミの視線がスミスへと向けられる。
     エメラルド色の――碧色の双眸に、僅かに怯えが見えるイサミの顔が。鳶色の双眸に、スミスの朗らかな笑顔が映し出されたのである。
    「イサミ、ありがとう。とても嬉しいよ」
     スミスはイサミの顎から手を離して、両腕で愛おしい人を抱きしめたのであった。
     興味がなかったイベントだというのに、スミスを想って必死に考えてくれたイサミ。どうして、彼を愛おしく思わずにいられないのかと。
    「スミス、俺」
    「こんなに沢山の像を造ったってことは、俺が一番好きなイサミの姿を考えてくれてたんだろう?」
     スミスが問いかければ、彼の腕の中でイサミは小さく首を縦に振るのであった。
    「イサミ」
     抱きしめながら、イサミの額にスミスは触れるだけのキスをする。
    「全部正解だ。俺は、どんなイサミも大好きだから。でも、今は」
     僅かに腕の力を緩めて、イサミの額に己の額を当てながらスミスは愛しい人に〝お願い〟を伝える。
    「俺の腕の中にいるイサミをITADAKIMASHUしたいんだけど、良いかな?」
    「んなっ!」
     かぁっと、至近距離でイサミの顔が真っ赤に染まる様をスミスは眺めるのであった。どうして彼は、こんなに可愛らしいのかと。
    「俺、甘くないぞ」
    「イサミは俺にとっては、凄く甘いよ」
    「なんだよそれ」
     恥ずかしさからか、目線を逸らし唇をぎゅっと結ぶイサミであったのだが。
    「……ん」
     ゆっくりと瞼を閉じ、僅かに唇を開けて、スミスを迎える準備をしてくれるのであった。
    「イサミ」
     すみす、とイサミが己の名を呼ぶ声ごと、スミスはイサミの唇を覆いつくしてしまうのであった。少しでも早く、彼を食べてしまいたいと。
     バレンタインデー当日はまだ先だ。
     だが、愛を受け止めるのはいつでもいいだろうと――だって、二人はこんなに愛し合っているのだからと。二人は互いを愛し合う行為に踏み込むのであった。


     お互いに夢中になってしまった二人は、〝ある事〟を忘れていた。
     〝ある事〟を忘れたまま、ブレイバーンの部屋でキスを堪能した二人は、揃ってスミスの自室へと移動してしまったのである。
     〝ある事〟――ブレイバーンの部屋に鎮座している、大勢のイサミ達の像を。
    「本当に、びびったんだから!」
     翌日、夕暮れ時にイサミを探してブレイバーンの部屋を訪ねてしまったホラー映画が苦手なヒビキが怖い思いをしたのだと、涙目でイサミとスミスに詰め寄る事になるのだが。
     これに関しては、二人揃って只管に謝罪を続けるしかなかったのである。
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