幼なじみと約束放浪の旅でふらりと立ち寄った街。
やけに混みあった雑貨店で必需品を買い物かごに放り込んでいると、街の人たちの噂話が嫌でも耳に入る。
「二つ隣の町が蛮族に襲われたらしい」
「蛮族に襲われたので村を捨てて逃げてきた」
「街道で商人が襲われて品物が届かない」など。
近頃は蛮族の噂を聞かない日はない。この街に滞在して1週間程だが、いよいよ身近に危機が迫っているらしい。
村を出た幼馴染に憧れ、自分も人を救いたいという気持ちで住んでいた村を飛び出してきたはいいものの、神官がひとりで出来ることは少なく、傷ついた冒険者を見かけては手当をして回る日々が続いていた。
このままではダメだ。
元を絶たねばまた人は襲われる。
回復が出来る範囲ならいい。けれど死んでしまった人は治せない。
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