それでも呪ってくれるか1.
その日五条悟は、生まれて初めて呪術高専を訪ねていた。六歳の春だ。
五条の家の者は五条を管理したがる。口に入れるものも身につけるものも訪れる場所も、五条はすべて選びぬかれていた。そして五条はそれらすべてが大嫌いだった。
だからその日、家の者に連れられてやってきた高専で、わざと迷子になってやったのだ。迷子になったというか、連れを全部撒いた。腹立たしいが、連中がこれを迷子と表現するだろうことは察している。
ほんの数刻姿を消して、相手がてんやわんやし疲れ切ったころにしれっと姿を見せてやろう。五条にとってのいたずらであり、反抗期だった。自分を飼う大人たちを苛々させてやりたかった。そしてそれ以上に、初めてやってきた広い学校に興味も抱いていた。
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