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    chiocioya18

    @chiocioya18

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    chiocioya18

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    雨想。雷雨の朝の話。
    雨彦さんはインテリ属性なので頭で考えるタイプだとは思うんですが、不意になんかグッときてキスしちゃったらかわいいなあと思います(?)

    #雨想
    fleetingThing
    ##雨想

    ガラス越しにもバタバタと激しい雨。時折稲光が走る空からは大型獣が喉を鳴らして威嚇しているような音がしている。窓を打つ水滴を眺めていると、外に出る勇気がどんどん削られていく気がした。それでも今日は一限から、必修の授業が入っている。

    「この天気じゃ電車も難儀だろう。学校まで送るぜ」

    窓辺から天を睨む僕を見かねたのか、車のキーを片手に雨彦さんが声をかけてくる。朝から送ってもらうだなんて、雨彦さんの家に泊まったという証拠のようで気が引けるけれど、傘も役に立たなそうな雨足を見ていると提案に甘えてしまおうかという思いに天秤が傾く。

    「稲妻にペタリ萎れる矜持かな…。悪いけどお願いしようかなー…」

    カッ ドォン!!
    一瞬の閃光と足元まで揺れるような轟音。僕の声がかき消されるのと同時に、フツリと部屋の照明が消えた。停電だ。

    「びっくりしたー。すごい音だったねー」
    「ああ。近くに落ちたらしいな」

    朝だから真っ暗にはならなくて、視界の確保は容易だった。窓から入る薄明かりは曇天を透かして、室内を淡いブルーグレーに染める。僕たちのユニットカラーみたいな色だ、と状況にそぐわない感想が浮かんだ。

    「ねえ雨彦さ、ん……」

    この思いつきを共感してくれるだろうかと、呼びかけた口が塞がれた。いつの間にかすぐ側に来ていた雨彦さんが、ブルーグレーの視界を奪うように僕を抱き寄せてキスをする。唇が離れるタイミングで、パッと部屋に明かりが戻った。

    「………なんで今ー…?」
    「………なんでだろうな」

    雨彦さんは本当に自分でもわからないみたいに少し驚いた顔をしていた。さっきまで間近で聞こえていた雷は、遠くでゴロゴロと甘えた猫のように鳴くばかりで、どこか間の抜けたムードの中僕らは見つめ合う。

    「…したかったから、じゃ理由にならないかい」
    「……そっかー…」

    したかったのなら、しかたないねー。
    理由にもなっていないようなそれにすっかり満足してしまって、僕はひとつ頷くと雨彦さんの肩にもたれかかった。触れた場所からあたたかな体温がじんわりと広がっていく。肩越しに見える窓の向こうは忙しない土砂降りの雨で烟っていて、この部屋の中だけ時間の流れが違うみたいだ。

    「…そろそろ出ないとな」
    「…そうだねー」

    実際にはそんなことは有り得なくて、一限の始業時間は刻一刻と迫っている。今日ばかりは授業があることを残念に思いながら、まだ少しだけ雨彦さんといられる車内へと急ぎ足で乗り込んだ。
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    chiocioya18

    DONEタケ漣冬の収穫祭!でネップリ公開していたバレンタイン話です。たい焼きデート。
    芸能界は常に行事を先取りしている。テレビやラジオは放送日の何ヶ月も前に録ることもざらにあるから、季節の巡りがカレンダーよりも先走っているように感じてしまう。
    バレンタインデーの特番収録をこなしたのが先月のこと。ファンのみんなからのチョコは連日事務所に届いていて、だから今日が二月十四日当日だということも、きっとコイツは忘れているに違いない。レッスンからの帰り道、来るかと訊けばのこのこと家へついてくるのもただの気まぐれなんだろう。
    コイツにとってバレンタインデーは特別な日ではない。それはわかっているけれど、それでも。カバンの中に忍ばせたチョコレートを、渡すタイミングを見計らっている。
    ちゃんと綺麗な箱に入った、コイツのために用意したチョコだ。小さくて量は大して入ってないから、果たしてコイツが喜ぶのかは想像できない。買った直後もここ数日間も、やっぱり渡すのはやめておこうかと何度も何度も思ったが、買う時にどれだけ恥ずかしかったかを振り返ると悔しくて、諦めきれずに持ってきてしまった。そのくせまだ渡せずに持ち歩いているのが情けない。
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