じわりじわりと明るくなる照明。暗闇から引き戻されて、僕らは映画から現実に戻ってくる。人混みが流れてくる前に最後列の席から僕らはひっそりと抜け出した。
「面白かったねー」
「はい。 とても引き込まれるお話でした」
映画館から少し離れたカフェで、僕とクリスさんはお茶している。今観てきたばかりの雨彦さん主演の映画の感想会だ。
報酬さえあればなんでも引き受ける“何でも屋”の主人公が秘密組織の依頼を受けてトラブルに巻き込まれる、アクションありコメディありのエンタメ映画。悪役じゃないのは珍しいって、雨彦さんは自分で言いながら少し嬉しそうだったっけ。
「アクションシーンは圧巻でしたね。特に雨彦のキックで敵役が弾き飛ばされていくところは、イルカが魚を尾びれで叩いて捕食する様を彷彿とさせました」
2343