クリスマスツリーデコレーション「すっごーい大きいクリスマスツリー……んで、これどうしたの?」
英智が個人で所有するマンションの一室、スバルは部屋に入ってすぐにあまりにも立派なレプリカではなく、聖樹のクリスマスツリーに呆然としながら隣に立って同じようにツリーを見上げる英智に問いかけた。
「市井の人はこういう風にクリスマスを祝うって聞いて。あとは飾り付けを自分でするのが楽しいらしいよ」
「……今度は誰に何を聞いたの?」
じとりと英智を見遣れば、彼は「白鳥くんだね」とつぶやく。
同じ部屋に零もいただろうに止めなかったのか……なんて思いながら、とても大きなツリーを見上げた。
「あ、あとキラキラしたものをつけると聞いたから、思いつく限りキラキラしたものを集めたよ、君こういうのが好きだろう?」
よいしょ、と隣に置いてあった箱の中には沢山のキラキラがあって、一瞬スバルのテンションも爆上がりするものの、このちょっとズレた思考回路だけはなおしておかなければと、英智に向かいあう。
「一般的なクリスマスツリーはレプリカの木を使うんだよ、特に部屋の中に置くなら」
スバルも星奏館に飾られた聖樹のクリスマスツリーは見たことはあったが、部屋の中に聖樹が飾られているのは見たことがない。
「そうなのかい、星奏館にあったのも聖樹だったからスバルくんが喜んでくれるかと思ったのだけど」
態とらしくしょんぼりとして見せる英智にスバルはじとりとした目を向ける。付き合って長いのだ、英智がわざとこういった木を準備したのもなんとなく分かっていたし、スバルのためだというのも本当なのは分かっている。ただ、突拍子も無いことをたまにするこの皇帝陛下にスバルも一言は言っておかねば、と甘やかすだけではダメなのだ。
「本当は知ってるくせに、藍良だったら部屋にクリスマスツリーとか飾ってるでしょ。あとヒメミンとかさぁ……」
「ふふ、どうかな。で、君はこのツリーはお気に召さなかった?」
大きな本物の聖樹を自分と英智二人だけで飾り付けられるのは確かに魅力的だ。彼の準備したキラキラした飾りにうずうずしてしまうのも。
それがわかっていてそんなことを聞く英智は意地悪だとは思いながらも、スバルははぁとため息をついた。
「こんな機会ないから嬉しいよ? でも次からは事前に教えてよね。突然呼び出されて部屋に入った瞬間クリスマスツリーとご対面はびっくりするからさ」
「わかったよ、次からはちゃんと先に説明するね。……じゃあ、スバルくんどれから飾りつける?」
いそいそと箱を開ける英智は、彼自身も楽しみにしていたのだろう声がうきうきとしていて、スバルの顔にも笑みが零れる。
「オーナメントもキラキラだし、モールもこれ光るヤツでしょ? あ、俺たちのぬいぐるみもはいってる!」
どれもキラキラしてる、と笑うスバルに英智も同じように頬をほころばせた。
「君が喜びそうなものを選んだかいがあったよ」
「えっ、英智先輩が選んだの?」
いつものように手配したのかと思っていたのだが、英智はスバルと二人きりで飾りつける特別なオーナメントは自分で彼のことを考えながら選びたかったのだ。
「君のことを考えながら選んだんだ、ほらこの雪の結晶はオレンジ色でラメが入っているだろう? スバルくんの色でキラキラしてたら嬉しいかなって」
そんな事を言われてしまえば、スバルも照れてしまうし、それ以上に英智が自分の為だけに選んでくれた事実にぶわぁっと好きだなぁという気持ちが溢れでる。
「うん、嬉しい、ありがと、英智先輩」
えへへっと抱きつけば、英智も嬉しそうに受け止めて、抱き締めてくれる。
「ちゃんと喜んでもらえるか分からなかったけど、こうしてその顔をみれるのは嬉しいものだね」
じゃあ、飾りつけしてしまおうか、と英智に言われて、二人は大きなツリーに飾りをつけていく。
丸いキラキラのオーナメント、濃いオレンジに薄いオレンジの互いの色をした雪の結晶。事務所からだされたぬいぐるみなど……最後にモールを巻いて、テッペンにお星様を飾りつける。
「ね、最後の星は一緒にやろ?」
「いいの?」
「もちろん」
二人で手を伸ばして飾った星は見た目以上にキラキラしていてスバルは完成したツリーを見上げた。
「すっごいキレーだし、キラキラ。英智先輩、ありがと」
笑うスバルに英智も微笑みを返して、先程とは違う強い力で身体を抱き寄せられる。
「どうしたの?」
「スバルくんとこうして過ごせて嬉しいなって、ふと思っただけだよ」
なんて事ないようにいうけれども、その吐息は熱くて、スバルもそれに応えるように腕を回す。
「もっと嬉しいことも、しちゃう?」
ぽとりと落とした言葉が合図だったのか、英智は一瞬驚いた顔をしてから、唇にちゅっとキスをして、そのままスバルに覆いかぶさった。