夜明けは君の色 ダイニングテーブルの真ん中にスライスレモンの小皿と蜂蜜の瓶を置くと、ラウダがとろりとした半目を数回瞬かせた。朝陽で艶めく蜂蜜をぼんやりと眺めてから、どうしたのかと尋ねるように俺の顔を見上げてくる。
その眠たげな琥珀色から胸元へと視線を落とすと見える、無垢な眼差しとは対照的な生々しい赤褐色。パジャマの襟からのぞく範囲だけでも四つの痕がある。そのうちの一つは、昂りすぎて数年ぶりに残してしまった噛み痕だ。
正直、昨日はまったく自制が利かなかった自覚がある。無我夢中で何時間も貪ったのは自分のくせに、一晩経って蛮行の証拠を突きつけられると、あまりの強欲ぶりと自分勝手さにいたたまれなくなる。
じっと見つめるのがためらわれて、つい目を逸してしまう。まだ準備の途中だからと己を正当化して、逃げるようにキッチンに引き返した。
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