「完食しないと出られない部屋」(じょーさや)三好は譲二と夕食をともにしようとしていた。
好感度最悪だった相手が今や慣れ親しんだご飯仲間であることに、曰く言い難い面白さを感じて三好はわずかに微笑む。
それはさておき。
ふたりが足を伸ばしたのは、二年ほど前に開店したばかりの評判のよい店だ。
可愛らしいドアベルを鳴らし並んで入店した。はずだったのだが。
「えっ」
「あれ」
間の抜けた驚きの声を上げる。
たしかに、今、ふたりを出迎えてくれた店員の姿が見えたのに、その姿が掻き消えたのだ。慌てて周りを見回すけれど、店員はおろか三好と譲二以外誰もいなかった。広い室内にはまっさらなテーブルクロスがかかったテーブルが整然と並び、柔らかな間接照明が灯る様はお洒落なレストランという雰囲気だが、人っ子一人いないのが異様である。
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