we used to be 5「食堂にて」
いつもの時間に目を覚まし、着替えを済ませ、いつものように食堂に向かったが、その日はいつもと様子が違った。
いつもならテーブルの上には朝食が並び、僕より先に起きてきたのであろうおじさんがお茶を片手に新聞を読んでいるのだ。
それが、今日はテーブルの上に何も載っていないどころか、誰もいない。
「起きてきたのか?」
不意に、厨房の方から声がした。
「おじさん?」
厨房に入ると、おじさんが振り向いた。
いつもそこにいるはずの、メイドの姿はない。
「お前が起きてくるまでには朝食を作っておこうと思ったのだが…
いやはや、久しく料理などしていなかったからどうにも勝手が分からん」
「おじさんが作るの?おばさんは?」
「いや実はさっき息子さんがいらしてな、昨日の夜、家で転んで腰を痛めてしまったらしい」
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