どうして海は青いのか1.
プロローグ
3月のいつだったか、春の陽気が頬を擽るようになった時期に、龍と琉球居酒屋の入り口に掛かった陽気な色の暖簾をくぐったときのこと。
「龍之介くん! よく来てくれたね」
「〇〇さん、お久しぶりです、お元気そうで何よりです」
都心より少し離れた下町の、雑居ビルの2階にその場所はあった。民謡音楽が控えめに店内を彩る優しい小さな空間。龍のお気に入りの隠れ家らしく、店長が一人で切り盛りしているんだと向かうタクシーの中で教えてくれた。俺が店内のどこか懐かしい内装と雑貨をまじまじと眺めている間に、龍が先頭立って店長らしき男と談笑を繰り広げている。
「龍之介くんが何度もここに足を運んでくれるのは本当に嬉しい」
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