タイトル決まってないけど闇鍋小噺ごう、と音を立てて砂埃が巻き上げられる。陽の光を吸い込んで生温くなった鉄の扉が、青年の遅い戻りに苛立ったのか、歯軋りのような不気味な音を立ててゆっくりと扉が開かれた。差し込まれた光の筋の中で、埃が逃げ惑って宛所もなく散っていく。
此処は“組織”の地下研究所。人里離れた場所に作られており
、今では人口が減ったとされる錬金術師が、追い立てられた合成獣(キメラ)が、研究所の中で生活をしている。今日も今日とて、息を潜めながら細々と過ごしているわけなのだが──……
出入口傍の廃材置き場では、何に怯えるでもなく、衣服が汚れるのも気にせず、一人の青年がなにか作業に集中していた。
「おい〝電解〟お前また、夜通しで作業していたのか」
「おや、お帰り。なんの事だい? ミスター・クワイヤ」
「ああ、ただいま……」
声をかけられた青年──〝電解〟は、飄々とした声音で振り向くことなく手元の基盤にパーツを置いて手を動かしている。カチャカチャと耳障りな音を立てて、小さい舞台の上に細かな部品が積み上げられ、銅線が編まれて、が形を成していく。それは、錬金術などという不可思議な術式とは程遠い、複雑かつ近代的な構造をしていて、いつだってクワイヤの目を丸くさせる。
実際今彼の手元にある装置も、何の意味を持ってどのようにして成り立ち、どんな効果をもたらすのかクワイヤにとってさっぱり意味がわからない。
「──って、おい! とぼけるなよ、君の部屋からの物音が騒がしくて堪らない」
「……それは済まなかった、急な締切がない限りは時計を見る癖が無くてだね。何時頃まで聴こえていたかな?」
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