金色、名月、月見酒満ちた月を見ると、思い出す刀がいる。
その髪は、日の光を浴びて輝く、月の色をしている。
◇◇◇
今日は中秋の名月、満月らしいから月見酒でも、と大倶利伽羅を誘った。
ここは綺麗に月が見えるから、と自室に呼んだが、肝心の月は、今は大部分が雲に隠れてしまっている。
これでは何のために誘ったのかわからない。
ひとつ、ため息をついてお猪口の酒をあおる。
もう一杯注ごうとして、ふと、大倶利伽羅がこちらを見ていることに気がついた。
「……どうした」
「…………いや、こういう月見酒も悪くない、と思ってな」
そのまま月の方に目をやった大倶利伽羅は、目を細めてそう言った。
月が出てきたのか、と思い空に目をやるも、見えるのは月光を受けて光る雲と、わずかに見える月の端。
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