秘密の植物園社会に疲れて柄にもなく訪れた寂れた植物園。俺がこの街に生まれ落ちた頃にはもうそこにあったという古臭い植物園は、人気はほとんど無いものの訪問者を静かに迎え入れていた。
区で運営しているここは入園も無料で、申し訳程度にパンフレットの置かれた無人の受付を通り過ぎ、ズカズカと歩みを進める。
入ってすぐは綺麗な花々が咲き乱れ、少ないとはいえ訪問してくれる人々を歓迎してくれているようだ。学生くらいの歳にみえる男女の組は花々をバックに写真を撮り、年配の男女はベンチに座り静かに花を眺めていた。
ここは俺の求める場所じゃない。綺麗に咲き誇る花は心をも浄化してくれるようだが、今の俺には少し色も匂いも賑やかし過ぎる。もっと落ち着ける静かな場所を探そう。
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