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    hiromu_mix

    ちょっと使ってみようと思います。
    短めの文章はこっちに投げます。

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    hiromu_mix

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    アイスクリームパレット:ダブル♪
    チョコレート(神聖 / 人たらし / 濃厚な)
    チェリー(小さな恋人 / キス / 気付いていない)

    午前5時の祈り濃厚な夜を過ごした後の、朝の気怠さが嫌いではない。
    そういう日の翌日は大抵休みだからというのもあるが、すぐにまた重たい瞼を閉じてとことんまで惰眠を貪り、昼ころ起き出して温まったベッドの中でまるでさざ波のような会話を交わしつつ、腹の鳴る音で笑いあうような、そんな日が。

    けれど、今日は何故か。疲れた気怠さはあるものの、よほど熟睡できたからかぱっちりと目が覚めてしまった。ここ数日も、そこまで忙しかったわけじゃなくて、睡眠が取れていたからかもしれない。ファットガムはふわと欠伸をしながら、腕の中の暖かな小さな恋人を起こさないようにそろりと身じろぎ、頭の上あたりに置いていたはずのスマートフォンを片手で探るが見当たらず。しかたなく首だけ伸ばすように顔を上げ、ベッド横の棚の上にあるデジタル時計に視線を投げた。時計は「5:12」と表示。だいぶ早いなって、少し驚く。エアコンの風で微かに揺れるカーテンの向こうは、すっかり日が昇った後の朝の明るさで溢れているように見えた。
    だからといって、この温もりからは離れがたく。ファットガムはさっきよりもさらに慎重に身体の位置を戻し、自分の太い腕の下あたり――腕枕をすると高すぎて結局零れ落ちてしまうので――で、ほんの少し丸くなって眠る切島の顔を覗き込んだ。閉じた瞼の、薄く生えた睫毛が寝息に合わせて震えている。
    高校生のころから知っている彼は、あの頃に比べたらすっかり大人びて、身体も出来て、毅然と立っていれば立派なヒーロー然として。けれどこうして腕の中にいる顔は、どこかあどけないのだ。きゅんと、胸が詰まる。と同時にやってくるのは罪悪感。
    ファットガムのことだけを見て、まるで他は目に入らないとでもいうように真っすぐ、この腕の中にやってきた。そういうふうに仕向けたわけではない。高校生のころから向けられた、明らかな恋慕の視線に気付かないふりをして、君にお似合いのコおるんやないの、と彼が顔を曇らせるのも構わずに、他に目を向けろと言わんばかりのことも言った。それでもここに、彼は来た。嬉しかった、けれど同時に、申し訳なくもなった。切島は、これでもう、自分との恋以外を知らぬままの人生になるのかと。だって、手に入れたらもう自分は手放せなくなることは分かっていたから。

    そろ、と伸びてきた前髪を指先でつまんで後ろに流した。どこか幼さを残す、けれど整った精悍な顔立ち。切島の、まっすぐで素直な性格にこの容姿。本人は気付いていないが、彼はかなりの人たらしだ。男女問わずめろめろになってると言うのに、彼は。ファットガムは指の背で、触れると柔らかな頬に触れた。んう、と小さく呻いてむずがって。さっきよりも近くなった距離、差し出されるように目の前にもぞもぞと移動してきたその額にキスをひとつ。
    「切島くん」
    こっそり、呟く。まるで神聖な祈りのように。どこか、禍々しい呪縛のように。
    「どこにもいかんといて、傍におって、逃げないで」
    綺麗な朝日に似つかわしくない、己のドロドロとした想いに蓋をするように目を閉じて。ファットガムはもう一度睡魔に堕ちていくために、腕の中の、柔らかな髪に鼻先を埋めた。
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