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    hiromu_mix

    ちょっと使ってみようと思います。
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    アイスクリームパレット:チョコチップ(片想い / ぱきり / 似たもの同士)

    欠片を集めるうだるような暑さの中でパトロール。そんなときに限って発生する細かな喧嘩をさばき、上がった悲鳴の先に居たひったくりを捕まえたりしていれば、そりゃあもう、いくら体力自慢の切島だってへとへとになるわけで。
    そもそも、切島はそれほど暑さに強い方ではない。寒いのはいくらでも平気だ。真冬に裸で寒風摩擦だってできる。けれど、暑さは。暑いからと言って服を脱ぐにも限界があるわけで。
    休憩のために寄った公園で、頭から水道の水を被る。蛇口をひねって出てきた水は生ぬるく、身体を冷やすほどではないが、けれど濡れた頭をぶんとまるで犬のように振れば、多少はすっきりとした。
    「切島くん」
    近くの駄菓子屋に行っていたファットガムが、レジ袋をがさがさ言わせて戻ってくる。中にはスポーツドリンクのペットボトルと、アイスが二つ入っていた。
    「お店のおばちゃんが、アイスおまけやって。どっちにする?」
    「じゃ、こっちで」
    オレンジ色の包みを持ち上げれば、分かりやすくオレンジ味だった。こういうとき、以前なら先に選んでくださいと遠慮してしまっていたが、ファットガムは先に自分に選ばせたがる。毎回のように押し問答することになるので、最近ははっきりと選ぶようにしていた。ファットガムは残ったほうの、ソーダ味らしき水色の包みを取り出すと、袋をピりと破り、中からパッケージと同じ色の棒付きアイスを出して咥えた。切島も倣って、ぱきりと齧る。歯に当たる冷たさが心地よい。
    「ファット、美味そうなもん喰うとるなァ」
    「暑いからな、休憩中や」
    「おう、見てたでさっきの。いつもありがとな」
    近所の住人と話し始めたファットガムの横顔を見ながら、切島は自分のアイスを齧る。きさくで人気者のファットガムは、こうして休憩していてもひっきりなしに声がかかるのだ。さっきの住人が居なくなったと思ったら、今度は女子高生が一緒に写真を撮っていた。いいなあ、俺も撮りたい、なんて。絶賛片想い中なのでそんなことをこっそり思う。
    それと、ファットガムの手元のアイスが溶けそうで気になった。
    「あ、ファット、垂れてる」
    零れそうになったので声を掛ければ、おとと、とファットガムは一口でぱくんとアイスを食べて、フハ、と笑う。
    「おおきに」
    「っス」
    「サボりすぎやな、そろそろ行こか」
    ゴミをまとめてからファットガムは、まだぎらぎらと輝く日差しを睨んで、はあ、と大きく息を吐く。
    「ほんま、暑すぎるわ」
    「そうっスよね」
    「――切島くん、俺よりは涼しそうやけどね」
    「脱げるもんなら皮も脱ぎてえくらいです」
    ファ―!とファットガムは笑った。
    「怖いこと言わんといて!でもまあ、わかるわ、俺も暑がりやし」
    夏のほうが辛いよなァ、と言われ、切島は大きく頷く。
    個性も歳も体格も、全然共通点がないけど。僅かでも似たところをひとつ見付けては、似たもの同士だと、少しでも近付けたような気がして心が躍る。そうやってかき集めて縋りたいほどに、ファットガムのことを、どうしようもないくらい大好きなのだ。
    「晩飯、何喰いたい?今回のインターンも今日最終日やし、なんかうまいもん食いに行こ」
    歩きながらそう聞かれて、切島はうーん、と首を傾げた。
    「肉!喰いたいっす!」
    「お、俺もそんな気分やったわ、肉、行こ、肉」
    あ、また一緒だった。嬉しい気持ち、一つ追加して。切島は暑いアスファルトの上に足を踏み出した。
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