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    hiromu_mix

    ちょっと使ってみようと思います。
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    ワーパレ。
    オル相で、14「白い柔い熱い肢体」 せめぎあう/見下ろす/白い肌

    お題のわりにエッチにならずすみません、無力……

    冗談にしないで寮に移ってから、夜な夜な行われる飲み会を相澤はいつも上手にかわし、なんとなく断れずに酔っ払いに囲まれている私を、時々助けてくれたりもする。無理して最後まで付き合う必要ないですよ、と肩をすくめて呆れたように言うけれど、その言葉には本当に怒ったり呆れたりしてるときみたいな厳しさはなく、ただ、いつものヒーロースーツよりさらに緩い感じの部屋着と同様、いつもよりリラックスしてるのか緩い雰囲気で告げられる言葉は、ただ、私にどことなくくすぐったさを与えるだけで。そうだね、って返事をして。共有リビングから互いの部屋に戻るまでの短い距離が、私はとても好きだったりする。
    そうして時々、どうにも逃げられずに捕まってしまうのだろう、相澤がその飲み会の輪の中に居たりするときは、結局私も逃げられないので最後まで居るのだけれど。居酒屋で飲んでる時も結構酔っ払いになる彼は、寮だと帰る手間を考えなくていいと思っているのか、明日が休みだったりするとそりゃあもうぐでんぐでんになるまで飲んでいた。
    今日もそんな日で、今は、隣に座るマイクにもたれかかり、それでも片手のジョッキは離さずに拍子の外れた鼻歌を歌っている。私はそれにこっそり耳を傾けながら、ソファの隅っこで一人、ウーロン茶をちびちび啜って、ランチラッシュが作ってくれたあんかけ豆腐を一口ずつゆっくり食べていた。相澤の声は、酒のせいか少し掠れてて、でも心地よい響き。昔の映画のテーマソングか何かだったかな。ああ、この映画のDVD、私の部屋にあるなぁ、とぼんやり思う。
    フ、と歌が途切れた。マイクがトイレにでも行くのか、立ち上がったようで。ソファの上でぺしゃりと寝転がるようになっている相澤の手の、ジョッキが不安定で危ないなって思って、私は立ち上がるととことこと近寄り、ジョッキを掴んで持ち上げた。とろんと眠そうな相澤の目が、ゆっくりとこちらを見る。
    「おーるまいとさん」
    「うん、私が来た」
    ふふ、と相澤が笑う。ジョッキを掴む手が解けるように外れたので、私はそれをテーブルに置く。マイクがさっきまで居た場所は、寝転んだ相澤が占領してしまったので、私はそのまま床にしゃがみ込んだ。
    「お部屋で寝たら?眠そうだぜ」
    「ん、ん-……」
    「私が連れてってあげるから」
    最後まで無理して付き合わなくていい、って、君、私にもよくそう言うでしょ?と笑えば、相澤は口元を緩め、そうですね、と呟く。ソファの背もたれに手を掛け身体をよいしょと起こすと、寝ます、と相澤は思ったよりもしっかりした足取りで立ち上がった。けれど、一歩、踏み出そうとしてよろりと脚をもつれさせ、ソファに逆戻りしそうになったので私は慌ててその肩を掴んだ。こつ、と相澤の頭が肩のあたりに触れる。いつもは捕縛布に隠れて見えないうなじが、眼下に晒され。思った以上に、白い肌。それがほんのり桃色に上気してて、思わずごくりと喉が鳴ってから、なんで?と反射的に思ってぶるりと首を振る。それをどう取ったのか、相澤は身体を離すと、すみません、と平坦な声で呟き、私を避けるようにして歩き出したので慌てて隣に並んだ。
    トイレから戻って来たマイクが、あれ?と目を丸くする。
    「ショータ、戻んの?」
    「眠ィ」
    「あ、そ――マイティも戻るんです?」
    「うん。あと、相澤くんの付き添い?」
    冗談めかしてそう言えば、マイクはちらりと相澤を見てから、そうっすねお願いします、と笑った。
    何も話さないまま並んで歩いた。階段までくれば、リビングの喧騒もあまり届かなくなる。相澤は慎重な足取りで、階段を一段上がった。
    「相澤くん、さ」
    「……はい」
    「さっきの、歌。昔の映画だよね?」
    怪訝そうに、一段下にいる私のほうに顔を向け――そうするとやたらと顔が近くてどきりとした――それから、ああ、と呟いて前に向き直った。
    「マイクと高校の頃、見に行きました」
    なんでかまだ覚えてるんですよね、と相澤はひょいと肩を竦める。
    「見たい?あるよ、私の部屋に、その映画のDVD」
    相澤はなんだか驚いたような顔で私の方を振り向いて、じっと、その真っ黒な目で見つめる。私はそれを真っすぐ見つめ返した。少し充血している白目が可哀想だけれど、でも、吸い込まれそうな色だと思う。私の身体のどこを探しても見つからなそうな、綺麗な黒。それをフと細め、相澤はうっすら唇の端を上げ、フンと鼻を鳴らす。
    「そうやって、オールマイトは女を部屋に連れ込んだりするんです?」
    「へ?」
    「お持ち帰りするときの常套句みたいでしたよ、いま」
    カッと頬が熱くなった。そんなつもりはなかったけれど、でも、本当にそんなつもりがないとは言い切れない自分が居るから。赤くなった私の顔を見て、相澤は可笑しげに肩を揺らして笑い。そのはずみでよろけたところを私は慌てて支えた。階段一段分、いつもより距離が近くて、ふわ、と癖のある黒髪が私の鼻をくすぐる。シャンプーの匂いにぞくりと肌が粟立った。
    「せっかくのお誘いなんで、連れ込まれてあげますよ」
    ぽつ、と相澤が囁いた。首を上げ、私の顎に頭を付けてぐぐと首を逸らし、至近距離から上目遣いで見上げてくる彼を、私は呆然と見下ろす。信じられないものを見るような顔をしてたんだと思う、相澤はまた笑い、身体を戻すと階段を上がり始めたので私はそれを追いかけた。
    どこまでが冗談で、どこからが本気だろうか。
    まさかと思いながら一緒に階段を上がっていれば、相澤が自分の部屋がある階に着いてもそのまま階段を上っていくので、私は何も言わずにその背を見つめて階段を上がった。相澤はまるで自分の部屋に行くみたいにすたすたと歩き、私の部屋の前で足を止めた。
    「オールマイトさん」
    「うん」
    「自分の部屋に連れ込んだ相手に、あんたみたいな人でも手ェ出したりするんです?」
    チェシャ猫みたいに、にやんと笑う顔が、可愛い、と思った。意味深な言葉にどきどきした。それと同時に、ああ、これはそういうことかと思う。別に、本気で酔った相澤を部屋に連れ込んでどうこうする気などなかった。好きなのかどうかすら分かってなかった。でも、これは。
    相澤の横に立ち、部屋の鍵を開ける。この部屋に彼を入れてしまったら、もう後戻りできないような気がしたけれど。だからと言って自分の部屋に戻ってとも、情けないことに言えなかった。
    ここまで来て、そんなことを言う君に正直、私は、期待をしている。
    「そりゃあ、私も男だからね……好きな子、なら、出しちゃうかもね」
    「へえ」
    本音に冗談を混ぜこんで言った私の言葉を、聞いているのかいないのか。相澤はルームシューズをぽいと脱ぐと、すたすたと躊躇なく私の部屋に入る。テレビの前のソファに腰を下ろし、膝を抱えて、膝に顎を埋め。
    「それは残念」
    確かに、そう言った。そうとしか、聞こえなかった。

    たとえば目の前にいる人が好きな人であっても、恋人になる前に手を出すなんてこと、私は、考えたこともなかった。だけど。心が、せめぎ合う。冗談のはずだったのに、でも、もう冗談にしておけない。今手を出さなきゃ、君を好きじゃないと思われてしまうのだとしたら。私は。

    彼の隣に座る。驚いたようにぱっと顔を上げた相澤の頬に手を伸ばし、私は、そっとその唇に、くちづけた。




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