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    秘みつ。

    @himi210

    @himi210 小説 / 毎日更新12:00〜21:00 / 凪茨右茨ジひジ▼感想質問お気軽に📩 http://bit.ly/3zs7fJw##ポイピクonly はpixiv未掲載ポイピク掲載のみの作品▼R18=18歳以下閲覧禁止▼##全年齢 for all ages▼連載一覧http://hi.mi210.com/ser▼連載後はpixivにまとめ掲載http://pixiv.me/mi2maru▼注意http://hi.mi210.com/guide▼フォロ限についてhttps://poipiku.com/19457/8988325.html

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    凪茨▼初めて手を繋ぐ
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    ##凪茨

    手をつないだら「茨、いこう」
     撮影終わりの海辺の砂浜で、凪砂は茨の手を初めて握りしめて、手を引いた。
     夕暮れに近い空は良い色をして、水平線と溶けている。
    「ど、うしたんですか、あの」
     引かれるままに茨は引き摺られて、熱い砂浜を踏みしめていく。凪砂は黙っていた。その代わりに手を強く握った。海風がばたばたと服をはためかせ、海汀は形を変えて砂浜を濡らした。
    「閣下、あまり遠くへは」
     前をいく凪砂へ茨は訴えた。これが何の時間かわからなかった。潮の香りと漣が満ちて、行き着く先を教えない。
     こうこうと海鳥が鳴く。
    「……恋人みたいだね」
    「……」
     凪砂は振り返って茨を見つめた。手を繋げたまま。
     深いつながり。物理的なつながり。凪砂はそれをしたかったわけではなかった。肉体がつながって、初めて内包された空虚を知る。その先にある目に見えないつながりが、本当に欲しかったのだとにわかに確信する。
     茨を騙して抱いていた。セックスに興味があると云った。そう云えば茨は計算して、自分の体を差し出すのが一番良いと算出する。その通りだった。準備をして、茨は体を用意した。ゆっくりメガネを外してあげたあの日のことをよく覚えている。海色の瞳が僅かに揺れて、その薔薇色の睫毛が瞬いていた。たましいの揺らめきがそこにあって、本当の奥底まで届く気がしていた。だけれどこれは茨にとっては仕事であって、決して愛の交歓ではない。それのおかげでつながれる。体の相性は良かった。ひどく気持ちが良くておかしくなりそうだった。運動を繰り返す度にとけていって一つになるのではないかと、それが一番いいのだと錯覚する。
     きっと好きだと云えば、茨は閉じてしまう。
     凪砂の望むままに、欲しい色を同じように浮かべて、偽りの仮面でわらってみせる。
     今日までそれを恐れていた。永遠の断絶がそこにあった。茨は愛を嫌って、恋を蔑んでいる。それだけは、凪砂はよく知っていて、生暖かい感情を隠して素知らぬ顔で相対していた。
     だけれど凪砂は理解してしまった。今日の撮影での茨の人あたりを見ていて理解してしまった。茨は変わっていっている。《普通》をしようとし始めている。人間になろうとしている。このまま悪人をやめて、善良な市民になってしまいそうでもある。そうしたら茨はわらって、誰かの手をとって、花園の向こうへ行ってしまうのだろうか。選ばないはずのその手が、自分以外の誰かに触れるのを、凪砂は想像して胸をくるしくする。
    「……閣下はこういったことに興味があったんですか。よくありますもんね、海辺を恋人達が連れ立って歩く、など」
    「……うん」
    「自分が代理になれていればいいのですが! 柔らかくも小さくもない手で申し訳ありません、ああ、緊張して手汗をかいてきました! 不快でしょう、離してもらっても?」
    「茨」
     凪砂は手を離さずに、もう一方の手も捕まえて相対した。きらきらと海色がひかって、綺麗だった。
    「順番をたがえてしまった。私が間違っていた。最初からこうすれば良かった。手をつないだらよかったんだね。手を取って歩いて顔を見合わせて。……君の手が欲しい、君だけが欲しいんだ、茨。私は茨が好き、愛している、恋している。かしこい君は知っていただろうけれど、……だめかな、茨」
     茨が閉じていく、そう思った。
    「……だめですよ、閣下」
     だけれどそれは少しの動揺を浮かべて、凪砂の望みとは別の茨をそこに作っていた。
    「アイドルとプロデューサーは恋愛禁止ですよ、自分たちはアイドルの高みを目指すんでしょう? そこまでいくにはもっと身軽でないといけません。そういう、契約、です」
    「私が枷になってる?」
    「いえ、……自分が閣下の枷になるのは、嫌なんです」
    「茨の気持ちだ」
    「え?」
    「茨のための言葉。私のためではなくて。本音ではないだろうけれど、それが聞けて嬉しい」
    「……」
     茨は困った顔をして、降り出しそうな雨雲の色をした。
    「私、もう怖くない。茨を掴めないと思っていた、けれどちゃんとほら、つながれる」
     凪砂はしっかりと茨の両手を握りしめてわらった。それが凪砂のやりたいことだった。きっともう、始まっている。変わっていく茨のために凪砂は変わりたかった。のがしたくはなかった。
    「茨に、恋をしてもらう。そのために、私、頑張って愛を伝えるね」
     夕日が濃くなって、海風が強くなった。強く手を握り合って二人は佇む。ざんざんと波は絶えず寄っては引き、鼓動の音を際立たせた。
     つながった手から、とろけて一つになるような温度を感じて、茨は泣きそうになる。おしゃべりなくちからは何一つこぼれていかなくて、ただ、凪砂のあたたかさを、じっと感じていた。

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    体の関係はあるが手を繋いだことが無い凪茨が初めて手を繋ぐ

    (210723)
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