お面にて赤を隠す「助之進、戻ったぞ」
「おう、早かったな!」
馴染みのある声が聞こえてきたので、ああ頼んでいた依頼が終わったのだと理解する。仕事が速くて腕が立つ知り合いがいて助かるな、鼻が高いと満足げに思いながら助之進が振り返ってみると、
「流石は伊織さ……うわああぁ〜〜」
予想だにしなかった異様な光景が目に飛び込んできて、思わず大声を上げてしまった。
お面にて赤を隠す
(……そこまで異様だろうか)
まさか見ただけで悲鳴を上げられるとは思わなかった。いやしかし、それはそうかと第三者からの立場で考え、思い直す。いくら助之進が少々他者よりも大袈裟な性格だからといってもこれは普通の反応の範囲内だろう。既知の声に振り返ってみれば、狐面をつけた人間が無言で後ろに立っていたのだから。最近は盈月の儀の影響で町にも怪異が増えている。警戒して損はない。
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