「だから、君がここに開けたくなったらいつでも言いに来なよ。なんたってそこいらの医者より上手いと評判だからね」
高杉の筋張った指が自身の左耳の銀色を指差す。高杉の指すシルバーピアスは惑わせる様に裸電球の暖色を鈍く反射している。
「それって非合法じゃないかな」
「商売じゃないからな。法もクソもないだろ」
クツクツと高杉が笑って受皿に煙草の灰を落とす。
火種が残っていたのか水に落ちた灰は抗議の様にじゅわり、と小さく音を立てた。
「どうせその鬱陶しい髪の毛に隠れて見えないだろうから試しに一つ開けてみたらどうだい? そういうトラブル避けにもなるだろ」
「今は大丈夫だよ。気遣ってくれてありがとう」
こうしてあれこれと坂本に言ってきているのは、恐らく何某かと坂本の何らかで気に掛かることが高杉にあったようだと察した。
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