极刺/かえる日まで「僕、祝い事の日のソーンズは嫌いかも」
そう言われた相手は瞬いて、そうか、と口を開く。
「お前にも嫌いなものがあったのか」
「人間だからもちろんあるよ」
口に出して言うのは中々ないけれど。
そもそも短い人生だ。嫌うものに意識を向けるより、その時間を好きなものに使うのが余程建設的だ。まして負の感情をわざわざ人に知らせるなんてもってのほかだ。
そんなエリジウムの珍しい「嫌い」を受けても、ソーンズはただ興味深そうに目を細め、手にしている缶を煽った。
「参考に聞くが、理由はあるか?」
研究対象にしているような言い方。アルコールが回っている分、好奇心が剥き出しになって金の目が輝いている。エリジウムは、はぁー、と息を吐いて、艦内ではしゃぐ子供に目を向けた。
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