anpk72話後妄想「そう言えば、コハルはニャースと一緒だったよな」
イッシュ地方の地下迷宮での騒動の後、ふと思い出した。合流したとき何故かコハルはロケット団のニャースを連れていた。
「大丈夫だったか? 何かされなかったか?」
「うん、大丈夫」
騒動から落ち着いた今になって心配になったが、コハルは大丈夫だったと言っていて安心した。
「あのニャースね、そんなに悪い子じゃないみたい」
コハルは信じられないことを言う。
「悪い子じゃないって、ロケット団のポケモンじゃん! ロケット団は悪の組織だろ?」
「そうだけど、地下迷宮で私のこと助けてくれたし……」
「俺だってコハルが危ない目に遭ったら助けるし!」
「オレも昔旅してたときニャースと一緒だったことあるけど、結構楽しかったな」
サトシまでそんなことを言う。確かにコハルやサトシの話を聞けば悪い奴じゃなさそうな気もするけど……。
「だから、悪いことなんてもうやめない? って言ったんだけど、ロケット団の仲間だからやっぱり無理だよね。喧嘩してたみたいだけど、仲直りしてたし」
コハルはニャースとのことを楽しそうに話すが、俺は何だかそれが面白くない。あのニャースが悪い奴だからなのか? それとも……。
「あっ、イーブイ、泥がついちゃってる」
コハルはイーブイの首元に泥がついていることに気づいた。多分、地下迷宮の中でついたものだろう。コハルはイーブイの泥を落とそうとポケットからハンカチを出すが、ハンカチは泥だらけだった。
「ハンカチ、泥だらけじゃん」
「そうだ、地下迷宮でニャースが土まみれになったから」
「もしかして、ニャースに使ったのか?」
ハンカチをニャースに使ったことにサトシは驚く。
「うん。ごめんね、イーブイ」
イーブイに謝るコハルに、俺はハンカチを渡した。
「ほら、これ」
「ゴウ……って、それ元々私のだけど」
そうだ、このハンカチは元々前にコハルから持たされたものだった。スイクンの手当てに役に立ったこともあり、そのままリサーチへ行く時はいつも持ち歩いていた。
「いいだろ、別に。ほら」
再びコハルにハンカチを突き出す。コハルはありがとう、とハンカチを受け取り、イーブイの泥をハンカチで拭いていた。ニャースにまで優しくするから……とも思ったが、それがコハルだもんな、なんて考えていた。それでもコハルの優しさがニャースに向けられたことが俺は気に入らなかった。
「すごいな、コハル。ロケット団にも優しく出来て」
そんなコハルの様子を見ながらサトシも言う。
「昔からずっとそうだった」
コハルは誰にでも優しくて、スクールでもすぐに友達がたくさんできた。イーブイもワンパチも俺のポケモン達もみんなコハルが好きだ。俺もそんなコハルが小さい頃から側にいたから友達なんていなくても平気だった。
「だから、俺、コハルが……」
「私が何?」
イーブイをの泥を拭き終えたコハルが戻って来た。
「コハル! いや、別に何でも……」
「ふぅん……」
何を言うとしたんだ、俺……。幸いコハルは深く追及しなかったが、
「そう言えば、ニャースも地下迷宮で何か言いかけてたなぁ」
「ニャースが?」
気になることをコハルは言う。コハルは大丈夫だったって言ってたけど、やっぱ……。
「ニャーと、おと……って」
「何だよそれ?」
「さあ……私はそれよりさっきゴウが言おうとしたことの方が気になるけど」
さっき深く追及されなかったから安心したが、再びコハルは先程の話に戻す。
「えっ!? いや、それは大したことないっていうか、その……」
「大したことないなら、言ってもいいじゃない」
「うっ……ほんとに大したことじゃないって! ていうか、やっぱコハル、ニャースと何かあったんだろ? そっちはどうなんだよ?」
「それは……ゴウが教えてくれなきゃ私も内緒!」
「えぇ……」
結局コハルには敵わないなぁと痛感した。