ときめき 今日は彼女と初めて花火大会に行く。さすがに俺も幼稚園や小学生では彼女を花火大会へ連れ出せなかったので、高校生になった今、こうして彼女と花火大会へ行けるようになったことは単純に嬉しくて彼女に一緒に行こうと誘われたときは即座にOKした。
浴衣に着替えて待ち合わせ場所へ向かうと、既に浴衣姿の彼女が待っていた。彼女の浴衣姿も初めて見るが、誰にも見せたくないくらい似合っていて、改めて今日がデートなんだと実感した。小さい頃も彼女と二人で遊んでいたが、こういうきちんとしたデートは初めてだ。
「浴衣、歩きにくくないか?」
「大丈夫。玲太くん、ゆっくり歩いてくれるから」
彼女がきちんと隣を歩いているか何度も確認してしまう。彼女と一緒にいるのが当たりだった小さい頃は気にならなかったことが気になるようになった。小さい頃よりもずっと彼女を意識している。
「次はどれにするんだ?」
「えっと次はね……」
縁日に着くと、今までの鬱憤を晴らすべく彼女と夜店の大人買いを楽しむ。こうして時間が経つに連れて段々昔に戻った感じがしてきた。気がつくと、もう花火の時間が近づいてきたので、
「りんご飴のおじさんにいい場所教えてもらったから行こう。こっち」
と、会場へ向かって歩き出すと、
「待って、玲太くん……!」
彼女の手が伸び、俺の指先に触れた。その瞬間、鼓動が大きく跳ねるのを感じる。この感覚はあの日彼女を知ったときと同じだ。あのときはこの気持ちが何なのか知らないくらい幼かったけれど、その意味を知った今なら分かる。この気持ちが何なのか。この気持ちに気づいたそのとき、
「あっ……」
花火が上がり、空が一瞬昼間のように明るくなった。すると、頬を赤く染めた彼女の顔がよく見える。彼女も今、俺と同じ気持ちなのか……? 二人の想いが共鳴するのを感じる、この感覚は――。
「きちんと掴まれよ。離れないように、さ」
「うん……」
彼女の手を取って歩き出す。二人の本当の始まりはこれから、そんな予感がして。