チェリーピンクな予感 高校三年間全く進展の無かった玲太くんとわたしだが、卒業式を境にようやくわたしたちの恋は動き出した。
春休みが終わり、わたしたちも大学生になり、一緒に一流大学に進学した。成績優秀だった玲太くんは勿論、わたしも玲太くんの幼馴染として恥ずかしくないよう高校三年間で勉強を頑張った甲斐があり、玲太くんと同じ大学に無事進学できた。
「ねぇ、あなた入学式の日に風真くんと一緒にいたけど、風真くんと付き合ってるの?」
大学に入学して少し経ったある日、高校入学時と同様の質問を大学の友達にされた。大学でも玲太くんの人気は高く、その玲太くんの隣にいる女の子としてわたしも既に注目されているらしい。
「えっと……」
「この子ね、風真くんと幼馴染なの」
わたしが答えるより先に同じはば学出身の女子が答えた。
「えっ、幼馴染?」
「高校の時もそんな感じで風真くんとよく一緒にいてさ。みんな二人は付き合ってるんじゃないかって噂してた」
「そ、そうかな……」
高校の友達にもそう見えていたなんて……。何だか照れてしまう。
「でも、実際は付き合ってるとかそういうのは全然なかったよねー」
「なーんだ、そうだったの」
「あ、あはは……」
高校の友達の言う通り、高校時代の玲太くんとわたしは全く進展がなかったのは事実だが、改めてこうして言われると……。
(あれからわたしたちだって少しは進展したけど……)
しかし、大学に入学してからはお互い新生活に慣れるのに必死で春休み以来、玲太くんとデートをしていない。この春休みでやっと玲太くんと親しくなれたのに、大学に入学してから進展がないなんて……。
その週の週末、やっと一息つけると自宅の部屋でくつろいでいた。
(折角時間あるなら玲太くんに会いたいな……)
今までデートは玲太くんに誘ってもらってばかりだったし、今度はわたしからデートに誘おうとスマホを手に取ったその時、スマホが着信を告げた。玲太くんからだ。
「もしもし、玲太くん? すごい、今わたしも玲太くんに電話しようと思ってて」
「そっか。俺たち、昔からそういとこあるもんな」
電話口から聞こえる玲太くんの声は嬉しそうに弾んでいる。
「な、今からうちにランチ食べに来いよ?」
「え?」
玲太くんをデートに誘うつもりが逆に玲太くんか家に来るように誘われた。今日は用事がないので、勿論玲太くんの家に行けるのだが、突然のことに驚いていると、
「たっぷり作ってお待ちしてまーす」
と、玲太くんは電話を切った。
(え、ちょっと、玲太くん⁉ ……すごいことになっちゃった)
玲太くんにランチに誘われたことは勿論嬉しいのだが、実はわたしが玲太くんの家へ行くのは小学校以来になる。高校三年間はあの通り全く進展がなかったため、家デートなんてとてもできなかったし、そもそも玲太くんがうちに来たのもイギリスから帰って来た高校の入学式前日と卒業式の日に一緒に夕飯を食べた時くらいだ。十年ぶり以上に彼の家を訪れること考えると、緊張してきた。
(とりあえずまず着替えよう)
部屋着のまま行くわけにはいかないとクローゼットを開ける。すると、春休みにショッピングモールでデートした時に玲太くんに選んでもらって買った白のフリルラップスカートが目に入った。玲太くんからも「今度、それ着て来いよ」と言われ、次のデートで着ようと決めていたものの、あの日以来デートはできず、ずっとクローゼットの中にしまいっぱなしだった。
(今日、これ着て行っちゃおうかな)
このスカートと上にピンクのレースキャミソールとパイル生地のボーダーブルゾンに着替えて玲太くんの家へ出かけた。