見かけによらず「彼女っておとなしそうだよなー」
ある日、クラスメイトの男子が幼馴染であるあいつについてそう言った。
確かにクラスメイトが言うようにあいつはどちらかと言えばおとなしい方だと俺も思う。特に幼稚園や小学生の幼い頃はおどおどしていて、俺が守ってやりたいと幼いながらに感じていた。高校生になった今でも昔程ではないが、おとなしい方であることに変わりないだろう。だから、クラスメイトの男子にはくれぐれもあいつに危害を加えないよう目を光らせているのだが……。
「でもさ、そういう子に限って実は……とかあるよな!」
「そうそう、意外と大胆でエロかったりするよなー!」
と、クラスメイトの男子たちはあいつのあらぬ妄想で盛り上がる。
「あいつで変な想像すんなよ!」
そんな下品な奴らにあいつを穢されてたまるかと怒鳴りつける。
「そういう風真だって紳士に見せかけて、彼女でやらしいこと考えてんだろ?」
だが、クラスメイトは全く怯む様子はなく、さらに俺までからかってくる。
「なっ……! うるせぇよ!」
とは言ったものの、俺も年頃の男だから、あいつでいやらしいことを全く考えないと言えば、残念ながら嘘になる。あいつを大切にしたいから、やましい気持ちを隠しながら紳士的に接しているだけだ。
(あいつが大人しい、か……)
改めてあいつについて考えるが、本当におとなしい女の子なのかと俺でも疑問に思うことが出てきた。
その週の日曜日、あいつと二人でデートの約束をしていた。
「お待たせ! 玲太くん!」
デートの待ち合わせにやって来るなりあいつは俺の腕にぎゅっと抱き着いてきた。服越しにあいつの柔らかな胸が当たりドキっとする。その上、今日のあいつの服は胸元が大きく開いた小悪魔ファッションなのだから尚更だ。
「どうしたの?」
「……なんでもない。行くぞ」
「うん!」
やましい気持ちを抑えながらデートに出かけるが、あいつはデート中も距離を詰めてくる。昔でもこんなに近かったことは無かったような気がするのだが……。
「おまえ、そんな積極的だったっけ?」
「えっ、そうかな?(折角のデートだから、デートらしいことした方がいいのかなって思ったけど、ダメだったかな……)」
当のあいつは自覚がないのか首を傾げる。無自覚でこれとは……ますます溜息が出る。
「俺、一生おまえに振り回されそうだよ……」
「玲太くん?」
天使のように可憐でおとなしそうな見かけによらず、小悪魔のような内面も持つあいつにこれからも振り回され続けると思うと、俺の心配はますます絶えないのだった。