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    Karasuma

    @TakeMako__Karas

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    Karasuma

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    エイプリルフールアキウィル
    途中からエイプリルフール関係なくなってしまったなぁ

    「あっ…甘い物とか、すぅ…好きじゃないからっ!」

    部屋に戻ってきての第一声に、思わず呆けた顔をしてしまう。
    何事か合点がいかずにウィルを見つめていれば、居心地が悪いのか視線を彷徨わせている。

    「アキラ…」
    「拗ねんなって。いきなりそんな嘘言われても困るっつーの。どんな反応を期待したんだよ」
    「……だって迷惑じゃないものとか考えてたら、何も思いつかなくなったんだもん…」
    「"もん"ってお前なぁ」

    幼馴染であり、恋人でもあるウィルの普段らしくない姿に頭を掻く。
    どうしたものかと目線を部屋に巡らせれば、カレンダーが目についた。
    あぁ、そうか。今日は4月1日だ。

    「ふ〜ん、そうかそうか。ウィルは甘い物が好きじゃないんだな」
    「アキラ?」

    オレは不敵な笑みを浮かべながらベッドから立ち上がり、リビングへと向う。ウィルが不思議そうに後を付いてくる様子が、雛鳥みたいで可愛らしさを感じる。
    そんな感情をぐっと堪えて、冷蔵庫の扉を開けてある物を取り出した。

    「今日のパトロールでたまたま近くを通ったから、買ってきたんだけどなぁ。赤べこ堂の饅頭」
    「えっ」
    「しかも数量限定の塩饅頭」
    「嘘だろ?!毎日開店してはすぐに売り切れるっていうあの?!」

    証拠と言わんばかりに蓋を開ける。見た目はいつもウィルが食べているものと大して変わりないが、内装が夏らしく涼やかな物になっている。
    思っていた通りにウィルの目は饅頭に釘付けだ。期待に満ちたキラキラした瞳に、どきりと心臓が跳ねる。

    「でも甘い物が食べれないならしょうがない。ブラッドにでもやるとするかー」
    「甘い物好きだよ!!!」
    「おぉ…手のひら返すの早すぎねぇか?プライドは無いのか…」
    「甘い物のためなら意地なんて張ってられないよ!ブラッドさんには悪いけど、アキラが俺にって買ってきてくれたんだし」

    話しながらも目線は饅頭から一瞬も離れない。
    これはチャンスだ。普段のウィルなら恥ずかしがって絶対にしてくれない"アレ"ができるはずだ。

    「ウィル、こいつを食べたいか?」
    「食べたい」

    食い気味の返事に確信する。オレは饅頭を1つ取り、持ち上げる。追うようにウィルの目線が動き、饅頭越しに目が合った。

    「あーん」
    「はぇ?」
    「ほら、食べたいんだろ?」

    きょとんとした口元に饅頭を押し当てる。遅れて理解したウィルの顔が、見る見るうちに赤くなる。
    ほら、ともう一度柔らかい唇に伺う様に当てれば、腹を括ったことが分かった。

    「あー…んむ」

    大きく開けられた口はオレの指ごと口に含み、口腔の生暖かさに変な汗が吹き出た。涎でぬるついた舌が指を舐めあげ、糸を引きながら離れていく。
    ウィルの恥ずかしがりながらもしてやったという顔に、負けたと理解した。理解はしても受け入れることはできなかった。
    ウィルの襟首を乱暴に掴み、力任せに引き寄せる。勢いがついて歯がぶつかったが、気にせず舌を捩じ込んだ。
    いつものウィルの味に饅頭の甘さが混ざる。口内に饅頭が残っているせいで舌を絡めづらく、早々に口を離す。

    「塩饅頭っていっても甘いんだな」
    「……俺は味がよく分かんなかった…」
    「ははっ!まだまだあるからゆっくり食べればいいだろ」

    今度は箱ごとウィルに渡せば、納得がいかないもののしっかりと受け取った。
    勝ったという満足感と、ウィルが可愛いという幸福感でオレの腹は満たされた。
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