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    しえる🍙

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    幻覚

    「あの瞬間の再現をしよう。目覚めろ、光の戦士達よ」

    空が燃え、流星が降り注ぐ。

    「これは……、アーモロートで見た景色と似ているわ……」
    「これは何…?幻覚なの!?」

    取り乱す仲間たち。

    「これ……、俺はこれと似た光景をもっと前に見たことがある。」
    「あの流星は……!?」
    「落ち着け!被害はない。……幻覚だ、これは」

    そうだ、これは幻覚でしかない。
    だから落ち着いて——

    落ち着いて——

    「………ッ」

    突然視界が歪んだ。

    『貴方、何をしているの!?』
    『サンクレッド!大変だ、ヤ・シュトラが!』
    『どうしたんだ、何があった!?』
    『あの人がヤ・シュトラを……うそ、嘘だって言ってよ!!ねぇ!!?』
    『そんな……どうして……』



    フラッシュバック
    蘇るのは、あの日の忌々しい光景。


    目の前のヤ・シュトラは力なく項垂れ、傷口からはとめどなく血が溢れ出ている。

    『や、やめてくださいでっす……、冒険者さん……どうしてでっすか……?』

    悲痛な面持ちで助けを求めるようにこちらへ手を伸ばすタタル。

    止めに入り無惨に切り裂かれていく仲間達。


    実行犯は


    ——かつて英雄と、光の戦士と呼ばれた男。


    『お前は……!何のつもりだ、何故こんな事を………!』


    答えは知っている。
    それでも、口から零れたのはあの日と全く同じ言葉。


    『邪魔だったんだよ、お前らが』


    知ってる………ああ、知ってる。
    知ってたよ、なぁ。

    気付いてたよ、お前のこと。
    なのに止められなかった。

    俺のせいで皆が死んだ。
    俺のせいだ……


    「俺の…………」

    「エル?」
    「Ciel?どうしたの?」

    「……はぁ……はっ……、俺が……俺のせいで……皆が……!」

    血みどろの仲間達が、俺を見ている
    息が苦しい、身体が震えて止まらない

    「……!いけない、落ち着かせないと!」
    「Ciel!大丈夫!?」
    「Cielさん……大丈夫です、落ち着いてください…」

    許してくれ、許して……
    ああ、どうして俺だけ生き残ってしまったんだ

    「しっかりしろ!おい!」

    ふと肩を掴まれ、揺さぶられる。
    何故だろう、目の前に俺がいる。
    仲間を死に追いやった自分が。


    「───ぐぁッ…!?」


    その首に手を掛け締め上げる。

    「サンクレッド!……ちょっと!何してるのよ!!」

    「俺のせいだ……俺が、おれが、オレが……!!なのに何で俺は生きてる!!」

    ギリリと手に力を込めれば、指は更にくい込みその喉からはヒュッと音が鳴る。

    「サンクレッド!!」
    「そんな事をしてはいけない、落ち着くんだ!」

    誰かが、声を荒らげている。
    目の前の俺は、真っ直ぐにこちらを見据えて…

    「………っの、ばか、力が……!
    ……お、い……!目を…開け、て……周り……よ、く……見てみろ……!!」

    周り……を……?

    恐る恐る周りを見渡してみる。
    そこに居たのは、血に塗れ睨む……ではなく、動揺した様子でこちらを見遣る仲間達。

    ───生き、てる。

    生きている。

    「エル、手を放すんだ。」

    ふと背後から聞こえた優しい声と気配に、一気に身体から力が抜ける。

    解放されたもう1人の俺も、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。

    「───ッは…!ゲホッ、ゴホッ…!!
    ったく、死ぬかと思ったぞ……」
    「大丈夫ですか…!?」
    「ああ、大丈夫だリーン。……俺よりも、ボロボロなのはあいつの方だ。診てやってくれ。」
    「えっ……あ、はいっ!」

    「ぁ……あ……悪い…、おれ…俺は……」
    「大丈夫。大丈夫だから、な?」

    優しく頭を撫でる大きな手に、安堵と、罪悪感と、涙が溢れて止まらなかった。

    「今度は俺がついてる。お前は一人じゃないんだから。俺達で皆を守ろう、約束だ。」

    「サン…Ciel…!まずはエーテルの揺らぎを抑えます。それから……、私達はあなたの事を責めたりはしません。だって、あなたは私の───だからっ、大丈夫です!」


    ハッとして顔を上げれば、心配そうに覗き込む仲間たちと目が合う。


    ああ──本当に、生きている。
    俺があの時守れなかった仲間たちが、世界が。
    ここでは未だ形を残し生命を宿している。

    「……取り乱して悪かった。
    ははっ、かっこ悪いところ見られちまったな……」
    「もう!本当よ、私の憧れ返してよね!
    ……心配、したんだから」
    「ああ、良かった……。同士討ちを始めるのではないかと肝を冷やしておりました……」
    「そんな事はさせなくてよ?
    私のブリザジャで頭を冷やしてあげるもの」
    「それは……恐ろしいな」

    「さぁ、まずは事態の把握をしよう。あの光景を見たのは俺達だけじゃない筈だ。」
    「街の人達も何か影響を受けているかもしれません。皆で手分けして聞き込みをしましょう!」

    そっと頷き、乱れた身なりを整え立ち上がる。



    そうだ、守らなければ。

    あの絶望満ちる終焉の中、
    たった独り生き延びた理由を。


    ──やっと、見つける事が出来たんだから。
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    しえる🍙

    MOURNINGさんくえる君と帝国の兵士の話眩い月明かりの下、必死に救いを乞う兵士を男が静かに見下ろしている。
    「し、しし、仕方がなかったんだっ!俺だって本当は嫌だった!でも、でも命令だったんだよぉ!!」
    「それで?」
    かぶりを振って後退る兵士に、男はゆっくりと歩み寄り確実に退路を塞いでいく。
    ついにはその背には壁のみとなり、完全に逃げ場を失った兵士は半狂乱になり泣き叫ぶ。
    「いっ……嫌だぁアァァ!!死にたくない!!
    何でもする、何でもするから命だけは…!」
    地べたに額を擦り付け、必死に許しを乞うその姿に男は舌打ちをする。
    「お前は、そうやって命乞いをする人間をこれまでに何人嬲り殺してきた?」
    怒気を含んだ声音に、兵士はビクリと大袈裟に肩を震わせる。
    「そ、そんな……だって彼奴らは蛮族だぞ!?
    属州民にかける情けなんて……ギャアッ!!」
    恐怖故か開き直る兵士の腕が、宙を舞った。
    「痛いか?痛いよな。……お前が殺してきた人々は、それよりも更に酷い苦痛を味わってきた。」
    憤怒と憎悪を滾らせた隻眼が、激痛に呻く兵士を見下ろしている。
    「お前が踏み躙ってきた大地は、そこに暮らす人々が大切に受け継いできたものだ。
    お前が殺した子供達は、こ 909

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