【腐/七虎】宣言!サプライズ!いつ頃だったか。
多分、七海を意識し始めたのはそ時間はかからなかった。
好きになって、好きとは言えなくて、せめて何か少しでも特別扱いだったら…いや、えっと、何か喜んでもらえたらと思い始めて、それから伊地知さんに聞いてみた。
「七海さんの誕生日、ですか?」
「うん。いつかなって。」
「7月3日ですよ。あ、また誕生日会でもやるんですか?」
きっと何かしらイベント毎はやるんだろうと聞いてみた伊地知に何故かごまかす様に焦る悠仁。
「いや、それもいいんだけどさ、何かプレゼントしたいんだけど…何あげていいか今から考えておこーかなって…。」
「なるほど…。」
「うん…。」
「まだ1か月あります。ふふ、内緒にしておきますね。」
「あ、ありがと…。でさ?ナナミンの好きな食べ物…あ、パンか…以外で何かないかなって…。」
「虎杖君。」
「ん?何?」
ガラっとドアが開いて七海が入ってきたが、悠仁の驚いた顔と何か知っているだろう伊地知の表情に?を浮かべる。
「どうか、したんですか。」
「お疲れ様です、七海さん。」
「お疲れ様です。」
「あ、明日のスケジュール後でメールを。」
「お願いします。」
「では、お疲れ様です。」
「…。」
さっと退出してしまった伊地知。
残された悠仁と七海。
「ナ、ナナミン、お疲れ!」
「何かあったんですか?」
「え!いや??」
明らかに動揺している悠仁に七海は近寄って目の前に立った。
「あっ、えっと…ナナミン?」
「何を隠してるんですか…。」
「へっ?いや、何も!?」
大きく溜息をついたことに「じゃ、じゃあ!」と用事を思い出したと背を向けたが引っ張られた腕でそれは叶わなかった。
「言ってください。」
「いやぁ…。別にこれといって、」
「不愉快です。」
「え。」
いつもの口調だが、胸にグサリと刺ささる言葉。
悠仁の顔色が青ざめる。
「虎杖君。何を隠しているんですか。」
悠仁は自分の指先を力なさげに両方合わせ俯いた。
「…。」
「言えないことですか。」
言葉に詰まるがサプライズしたいのに言えるわけがない。
だけど誤解されていることに傷ついている自分がこんなにショックを受けている事実に驚いている。
七海はまた隠れて無茶をしていないかと心配だったのだが、何も言わない悠仁にまた溜息をついた。
その溜息はまた悠仁を不安にさせる。
七海の手が悠仁から離れた瞬間、俯いた悠仁の肩が震えた。
「ぁ…、ごめ…。ん。えっと…。」
恐がらせるつもりはなかったが、この反応に心配になった。
「ナ、ナナミンの…、誕生日、何、あげよ……かな、って、伊地知、さんに、そーだん…。」
少し驚いたように七海が「は?」と声をあげた。
「でも、あれだね。ナナミンの欲しい物なんて、俺が買えるわけなかった、はは…。ごめん。」
「今、なんと?…。虎杖、く…!」
ぽろぽろと涙を零す悠仁に驚いて七海が少ししゃがみこんだ。
「虎杖、君…。少し、キツク言いすぎました。」
「へ?あ、いや、これは泣いてないから。」
「虎杖君、顔をあげてください。」
「ごめっ、いやちょっと、俺、…。」
悠仁は苦笑して離れようと後ずさった。
「へっ?」
悠仁が声をあげる。
七海に抱きしめられている。
何故???
ぎゅうっと七海の腕が悠仁の背中を抱いて、その仕立てのいいスーツに顔を埋めている自分の状況が飲み込めない。
「すみません。」
「ナ、ナナミン?」
「少し驚いて…います。」
「ど、どして…。」
小さく悠仁が鼻声になりながら訪ねた。
「いえ…、そんなこと、考えてくれているとは思って…いません、でした。嬉しくて…。」
「で、でも、サプライズ、もーできないや。」
ハハっと笑う悠仁をさらに抱きしめる。
「もう、既にサプライズ…ですよ…。」
「そ、そう?……で、でも、誕生日まだ、先だし…。」
「では…お願いがあります…。」
「な、何?」
悠仁の耳元に伝えるのはうって変わって優しい声。
「当日…、私と一緒に過ごしてください。」
「へっ…ええ!?」
「嫌、ですか?」
「ナ、ナナミン?」
頬を染めて期待と信じられないと目を見開いた悠仁を見下ろす。
「ドライブに、行きましょう。」
「い、いいの?」
「はい。……それから、美味しい物を食べて、海にでも行って、」
「ん。」
悠仁が七海のスーツをぎゅっと握った。
「それから…。」
「!」
悠仁の耳元で囁かれたのは、高校生の悠仁の心臓は想像していたよりキャパオーバーしそうだ。
「お、俺っ、ホテル泊まるの初めて、かも…。」
「君の初めて、もらえるんですね。」
「なっ!いや、」
「冗談です。」
「もぉーっ!ナナミン!」
ぎゅっとされては怒るにも怒れずむしろ嬉しくて、仕返ししてやろうと七海の耳たぶに口づけた。
「虎杖君!」
「ナナミン。大好き!」
「虎杖君!!」
不意打ちはさすがの七海も予想していなかった。
さっき悠仁の涙を見て自覚した。
「虎杖君…、覚悟、しておいてください。」
「え?な、何を?」
「秘密です。」
口元を人差し指で遮って、少し微笑んだ七海に悠仁は「大人って…っ」と心の中で呟いた。