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    mochichiti

    モチです
    作品、原稿の進捗とか
    今のところdcst 千ゲのみの予定

    えっちなのはワンクッション置いてます

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    mochichiti

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    千ゲ マシュマロリクエスト
    「石化前からこっそりゲンの強火ファン(イベントのチケットは当たったためしがない)だった千空ちゃんと付き合っているゲンのラブラブな話」

    ラブラブ…はどこかへ飛び立ちました……

    人間誰しも夢中になるものはあるはずだ。そして、その対象が何であれ隠す必要はないと俺は思っている。勿論公に言えないような趣味であれば人目につかないようにするなど配慮は必要であるが、基本的に趣味嗜好を隠す必要はない、はずだ。
     何かに惹かれるということは当たり前のことである。であるからして、俺の石化以前からの趣味が「芸能人あさぎりゲンを見ること、ゲン著作の書籍を読むこと、グッズを集めること」などであったとしても何の問題もない。ない、はずだったのに。
    「千空ちゃん早くってば〜」
     だから早く寝てって昨日言ったのに、と頬を膨らませながら玄関先でぶつぶつと言っている人物と俺がずっとずっと応援し続けている人物が同じ場合、これは本人に気が付かれてはならない事案ではないだろうか。
     そう、俺の恋人は俺の推し。こんなのアリかよ。


     簡単に俺とメンタリストの馴れ初めを説明すると、裏切り同盟船旅諸々を経ての恋人だ。世界が復興し、純情科学少年をしてもいいんじゃないかと思っていた頃に互いが友情とも違う好意を抱いていることが発覚し、そこからトントン拍子で話は進んだ。
     そして今日、初デート、というわけだ。意気揚々と俺を迎えにきたゲンは浮かれた声を隠そうともせず俺を呼んでいる。名誉のために言っておくが、断じて寝坊したわけでも準備が終わっていないわけでもない。むしろ準備はだいぶ前に終わっていて、じゃあ何をしているかというと心の準備をしていた。
     復興に全力で向き合っている間はそんな余裕もなく、過度に反応しないようにとしていたが世の中が落ち着いてしまったらそうもいかない。ゲンは再びラジオやマジックショーなどエンタメの仕事を始め、それに伴って以前の「芸能人あさぎりゲン」を見ることも増えた。そうなってしまったら、もうダメだった。封印していた俺のファンとしての感情が溢れて止まらなくなってしまった。
     それなのにこれから言わば推しとデートだ。デートだぞ? 旧時代でもチケットが当たったことなんてないのに、公式の現場を吹っ飛ばして二人きりでプライベートでのデート。
     俺は耐えられるのだろうかと頭を悩ませ、自分を激励し、そうこうしていたら当の本人が迎えに来てしまったというわけだ。
     そして問題点が一つ。俺は自分があさぎりゲンの割と熱狂的なファンだということを本人に隠していた。乗り切れるのだろうか、と頭を悩ませる。が、恋人を待たせるわけにも推しを待たせるわけにもいかない。覚悟を決めて玄関へ向かった。
    「おー、待たせたか」
    「寝坊したのかと思ったよ、でも準備万端みたい。何かあったの?」
     大丈夫、と俺を覗き込んでくる瞳が眩しくて、つい視線を逸らしてしまう。
    「何もねえよ。――それより、行くんだろ」
     買い物、と手を差し出せば当たり前のように手のひらが重ねられる。……こんなことがあっていいのだろうか、とファン目線の俺が大暴れするのを必死で堪えながら雲ひとつない空の下に出た。



     千空ちゃんと恋人同士になった。何かを隠しているのはとっくにわかっているけれど、本人が隠したいようだから何も言わない。それに多分だけれど、意地になってその隠し事を暴かなくてもきっと俺はわかってしまう気がする。いやだって、だって千空ちゃんの家の鍵に付いている紫と白のトランプカード型キーホルダー。それ、俺のグッズだよね? しかも確か新グッズは結構激戦で並んだけれど買えなかった人がいるというのを始めたばかりのS N S上で知ったのは記憶に新しい。
     ねえそれどうしたの?
     その一言を聞けばいいだけなのだけれど、聞けない。千空ちゃんがファンとして俺を好きでいてくれているならそれはもちろん嬉しいけれど、本人が隠したいと思っていることを無理やり暴く趣味はなかった。特に好きな相手であれば尚更。
     というわけで、俺は今日一日……というか千空ちゃんが俺のファンだということを白状してくれる日までずっと気がつかないふりをし続けるのだ。
     手を重ねて歩く恋人をちらりと見て、手に力を込める。疑問も持たずに握りかえされる少し乾燥したその体温が酷く愛おしかった。



     千空は疲れていた。非常に、疲れていた。
     ゲンとのデートはそれはもう楽しいもので、隣で屈託なく笑うその顔を見るたびに心臓がぎゅうと締め付けられては堪らなかった。恋人として、何の不満もない時間を俺たちは過ごしていた。
     疲れていたのはデートにではない。その節々で交わされる会話の中でどう頑張っても強火ファンとしての人格が顔を出してしまうのだ。昼食のレストランを選んでいた時、昔ロケで似たようなもの食べたことあるんだと言われれば反射的に何年何月の番組名しまいにはその番組の司会者名まで即座に答えてしまい、それを訝しがるゲンにそんな気がしただけだなんて無理にも程がある言い訳をしてしまった。更に他にも色々とやらかしている。例えば今日の十五時からゲンがメインパーソナリティーを勤めているラジオの五十回目の放送があり、どうしても今日流す曲が知りたくて便所を装って一瞬だけ聞いてみたりだとか、旧時代に販売されていた書籍の復刻版が売られていたらついそちらを見てしまったりだとか、もうとにかく隠す気があるのかないのかわからない行動ばかりをとってしまうのだ。
     こんなことではいけない。今日は初デート、絶対に成功させなければならない。幸いこのショッピングモールの側には星がよく見える公園がある。そこで恋人としての俺に頑張ってもらうしかない。千空は気合を入れ直し、雑貨屋でおそらく次のマジックに使える小道具を見繕っているであろう自身の恋人に声をかけた。
    「それ、次の公演で使うのか?」
     違う。聞きたいのはそうではなく、このあと少し歩かないか、というお誘いなのに。
    「え、あ、うんそうそう。使えるかな〜と思って」
    「そ、そうか……それならあの店に売っていたやつの方がプラスチック製で軽くて使いやすいんじゃねえか」
     そうではない。いやでも推しにできる限り軽いものを持ってもらいたいと思うのはファン心理としては当然なのではないだろうか。ファン心理では困るのだが。
     見に行ってみよ〜、と跳ねるかのような足取りでゲンが俺の指した店の方に向かう。ゆっくりとそれを見守りながら着いていき、真剣な眼差しで道具を見比べている恋人へ声をかけた。
    「このあと行きたいところがあるんだが、いいか?」
     もちろん、と当たり前のように首を縦に振る。いいか俺、もう絶対にファン人格を出すんじゃないと言い聞かせながら指先へするりと手を絡めた。



     いやこれ隠す気ある? 千空ちゃん、隠す気ある??
     この数時間で俺は確証を持っていた。千空ちゃんは俺の「強火」ファンだということを。証拠はいくつも出せるけれど、まずは見つけてしまったキーホルダー。俺ですら覚えていないような詳細の出演情報。やけに長いお手洗いの時間は俺のラジオが始まるのと同じ時間。最近復刻されたインチキ心理学本への過剰な食いつき。欲しいならあげるからとりあえずファンだということを白状して欲しい。そうでないとこちらも何もしてあげられない。
     もうこっちから聞いちゃおうかな、なんてことを考えていた時だった。するりと千空ちゃんの指が俺の指に絡む。普段より熱く感じる体温に緊張してくれていることを察して、その瞬間俺の心臓も飛び跳ねた。
     今こうやって誘ってくれているのは恋人の千空ちゃんだ。彼が俺のファンだろうとなんであろうと、俺の恋人。
     返事と共に力を込めた。どこに連れて行ってくれるんだろう、と思いながら。



     まだ六時だというのにすっかり暗い公園のベンチに座って、俺と千空ちゃんは空を見上げていた。彼が連れてきてくれたのは星がよく見える穴場の公園で、俺たち以外誰もいない。
     繋いだ手が暖かくて、嬉しくて、この距離で触れ合える幸せを十分に感じていた時だった。千空ちゃんが、聞いたことのないほど優しい声で俺を呼ぶ。ゲン、と呼ばれるたびに嬉しくて、この人の呼ぶ俺の名前はまるで甘いお菓子のようだなんてことを考えた。
    「――今日、楽しかったかよ」
     楽しかった。いろんな意味で。俺を二重の意味で好いてくれている千空ちゃんを十二分に堪能できたのだから。
     うん、と首を振れば満足げに頷いた彼の顔がゆっくりと近づいてくる。あ、キスされる。そう思った瞬間のことだった。
     ブブブ、と携帯が振動して俺たちの動きを止める。震えているのは俺の、仕事用の携帯のようだ。急ぎの仕事はなかったはずだけれど、と思い無視し続けたけれど、それでも何度も鳴っている。今日は連絡しないでってジャーマネちゃんに言っておいたはずなんだけどなあ。
     さすがに気になったのか、千空ちゃんの顔が離れていく。ああ、せっかくだったのに。
    「仕事だろ?」
     見とけ、と言うその顔が赤く染まっており心底申し訳ない気持ちになった。これでしょうもない連絡だったらさすがの俺も怒っちゃうんだからね、なんてことを思いながらポケットで震える携帯の通話ボタンを押した。
    「はいもしもし〜〜今日は忙しいって言ったよねえ、何かあった? ……うん、うん、え? 世界? は?」



     月明かりの下、誰もいない公園。そんな中でのキスは失敗に終わった。仕事なのだから仕方ない、と次のタイミングを図る俺ともうひとり、どうしようもなくファン人格の俺が何やら驚きながら電話をしている恋人兼推しの漏れ聞こえる会話を聞く。
     盗み聞きはいけないと思う心と聞こえてしまうのだから仕方ないという心が戦って後者が勝った。
    ――世界? は?
    ――いやだから、世界ツアーですってば! ゲンくんのショーを見たい人は今ではもう世界中にいるんです!!
     世界ツアー、と聞こえた気がした。世界、ツアー。あさぎりゲンの世界ツアー。なんて素敵な響きなのだろう、いやでも事実なのかどうかわからない。まずは本人に確認をしないと。
     そう考えていると、電話が切れゲンがこちらを向く。弾むような笑顔で、心底嬉しそうな顔をして。
    「せ、千空ちゃ、俺」
    「あ〜〜聞こえてた、世界ツアーだろ?」
     ぶんぶんと勢いよく首を縦に振る。こいつが泣くほど嬉しいと思っていることは痛いほどよくわかった。旧時代も石化してからもずっと、ステージに懸ける熱量は誰よりも強いことをよく知っていたからだ。
     よかった、と俺の視界も滲んでいく。それは一番近くで見てきた恋人としての感情なのか、偶像崇拝のように慕ってきたファンとしての感情なのかわからなかった。わからないけれど、それでよかった。結局俺の中にはどちらの人格もいるのだ。
    「ねえ千空ちゃん」
     おめでとうって、言って。そんなことをねだってくる愛しい恋人の腕を引く。腕の中に簡単に収まったその身体を力強く抱きしめて、いろんな俺からの祝福を伝えた。伝わっている、だろうか。
    「――伝わってるよ」
    「……心を読むんじゃねえよ」
     あはは、と楽しそうに笑う。いやまあそうだよな、と俺は一人で納得をした。どれだけ俺が頑張って隠したところで、天才マジシャン兼メンタリスト様に隠し切れるわけもない。そんなことはファン歴三七〇〇年以上の俺が一番よくわかっていた。
    「ね、あのキーホルダー、並んで買ったの?」
    「……おー、五時起きでな」
     一層大きな声でゲンは笑った。焦がれる相手の笑い声が聞けるのなら、ファンであることがばれるのも悪くなかったかもしれない、なんてことを思うのだ。

    「世界ツアー、関係者席で見においでよ」
    「……それは自力で取る」
    「……千空ちゃんってもしかして割と拗らせてるタイプ?」
    「もしかしなくても、だ。バーカ」
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    mochichiti

    DOODLE情報屋あさgりのはなし つづきました
    短いです
    これ書くのはちゃめちゃ楽しくてびっくりしてる
    さわがしい世界から離れて、地下への階段を下りた。表からは見えないこの道は裏社会をかじっている人間だけが知っているもの。
    剥き出しの金属音が足を進めるたびに響く。この音こそが、俺の帰宅を知らせる鐘。
    長い螺旋階段を下りて、暗闇を歩く。暗闇には橙色の電灯が灯り、布や鉄板で隠された各自の住まいが存在している。その中の一つから、童顔の男が顔をのぞかせた。
    「遅かったね」
    「あ〜〜ちょーっと色々あって」
    聞いてよ羽京ちゃん、と布をくぐればそこは俺たちが生活を営む拠点。見た目とは違いだいぶ奥行きのあるそこにはえんじ色の絨毯が敷かれ、少しだけではあるがソファやテーブルなど生活するのに役立つものが置かれている。
    どしんと革のソファに座れば、困ったように羽京ちゃんは笑った。
    「聞きたくないなあ、それ」
    「なんか変なやつらと知り合っちゃってさあ」
    バイヤーなのよ、多分。
    先ほど見た二人の男を思い出す。背の高い男の刺し殺してきそうな目や空気だけでも関わり合いになりたくなかったのに、その男を従えている人物なんてもっと関わりたくないに決まっている。
    「聞かない選択肢はない?」
    「俺と羽京ちゃんの仲でしょ」
    ない 2506

    mochichiti

    DOODLE表紙から妄想した情報屋のあさgりのはなし
    🚀と❄️もでます
    全然終わってません かきたいとこだけ……
    様々な言語が混ざる、喧騒。目に毒なほど安っぽく輝くネオン。それらの中をすり抜けるようにして歩いては、聞こえてくる会話を頭の中に仕舞い込んだ。
    この街で生きていくための、俺の仕事だ。言葉を操って、情報を得て、事実と捏造を混ぜ込んでどうにか毎日朝陽を拝む。もう何年もこうやって生きて、そうして気づけば裏社会でも顔が知られるようになっていた。
    そうなりたかったわけではないが、これはこれでお金にも困らないし悪くない。たまーに危なそうな依頼人から仕事を受けてしまうこともあるけれど、年月を重ねる中で所謂ヤバい相手の匂いはわかるようになっていた。
    派手な色彩のベストに紫色のジャケット、首元と瞳を緑で覆った俺の格好は自分で見ても一目を集めると思う。その方が都合が良くて、だからこんなに目立つ格好をしているのだけれど。
    さわがしい街の中ではこれくらいの方がいい。このことに気がついてからはずっとこんな感じで、へらへらふらふらと"情報屋"なんてものをやっている。




    安い情報ばかりが売れた日だった。思ったよりも重たくならなかった黒い財布の中を見ながら、地下に置いている拠点を目指す。
    誰かが後をつけてきている 2563

    mochichiti

    DOODLE千ゲ 
    ライブハウススタッフのゲと高校生千のパロ

    出会ってお互いに名前を知るところまでらくがきしました 楽しかったのでゆるゆる続くかも
    別に嫌いではないが、熱狂を持っているわけではない。自ら好んで聴くような対象はいないけれど、百夜がよくかけているから知っている曲もある。その程度。


    高校からの帰り道、少し遠回りをして更に細い道を曲がった。1ヶ月準備をしてきた実験の結果が芳しくなかったので、気分転換にでもなればと思っての寄り道だ。
    休みの日だから制服でないことだけが救いだろうか、パーカーにジーンズは街に溶け込みやすい。
    通学路から数本ずれた道は、人の少ない道だった。ちょうどこの時間から開く店が多いのか、シャッターをあげたり看板を出したりと数名が店頭に出ている程度だ。
    居酒屋や個人経営の飲食店だろうか、中年の男性がぱらぱらといる中でひとり若い男が目についた。黒と白の髪の毛に、体格に合わないサイズの黒いTシャツ。赤字で書かれた英語は遠目からでは何がかいてあるの読めないが、日付の記載もあるところを見ると何かの記念のものだろうか。
    看板なのか、黒い板を出してその場で何かを書いている。
    あまり見ることのない光景に、ついふらりと近づいてしまった。
    文字が視認できる距離まで来て、書かれているアルファベットを脳内で読む。聞いたことのな 2897

    mochichiti

    DONE千ゲ マシュマロリクエスト
    「石化前からこっそりゲンの強火ファン(イベントのチケットは当たったためしがない)だった千空ちゃんと付き合っているゲンのラブラブな話」

    ラブラブ…はどこかへ飛び立ちました……
    人間誰しも夢中になるものはあるはずだ。そして、その対象が何であれ隠す必要はないと俺は思っている。勿論公に言えないような趣味であれば人目につかないようにするなど配慮は必要であるが、基本的に趣味嗜好を隠す必要はない、はずだ。
     何かに惹かれるということは当たり前のことである。であるからして、俺の石化以前からの趣味が「芸能人あさぎりゲンを見ること、ゲン著作の書籍を読むこと、グッズを集めること」などであったとしても何の問題もない。ない、はずだったのに。
    「千空ちゃん早くってば〜」
     だから早く寝てって昨日言ったのに、と頬を膨らませながら玄関先でぶつぶつと言っている人物と俺がずっとずっと応援し続けている人物が同じ場合、これは本人に気が付かれてはならない事案ではないだろうか。
     そう、俺の恋人は俺の推し。こんなのアリかよ。


     簡単に俺とメンタリストの馴れ初めを説明すると、裏切り同盟船旅諸々を経ての恋人だ。世界が復興し、純情科学少年をしてもいいんじゃないかと思っていた頃に互いが友情とも違う好意を抱いていることが発覚し、そこからトントン拍子で話は進んだ。
     そして今日、初デート、というわけだ。意気 4805

    mochichiti

    DONE千ゲ 復興後パロ
    マシュマロリクエスト「絶対自分からプロポーズしたい千空VS絶対自分からプロポーズしたいゲン」
    「いいから座れ」
    「お断りします」
     そんなやりとりを何度繰り返しただろう。二人で暮らす狭すぎず広すぎない部屋。千空ちゃんが奮発して買った大型のテレビ前に置かれたふかふかのソファに座ってぼすぼすと勢いよく隣の空いたスペースを叩いているのは俺の恋人で、いいから黙ってここに座れと何度も何度も言われている。
     何度も何度も言われては断って、それでもめげずに「いいから座れ」と繰り返してくる。いやちょっと狂気を感じるんだけど? と思ったが決して口には出さない。出したところで、テメーが座ればそれで解決すると自信満々に言ってくるのが目に見えているからだ。座るぐらいしてやればって思うかもしれないけれど、頑なに拒否し続けている俺にも相応の理由はある。
     座っている千空ちゃんの手に見えるのは、小さめの四角い箱。何は入ってるかも俺は知っている。だって何回も見せられているからね。
    「何でそんなに嫌がるんだよ」
     若干苛立った様子の千空ちゃんは空いている手の指先で自身の膝をとんとんとしている。あ〜〜〜イライラしてるねえ、だったらその箱をしまってくれればいいのに。
    「だって座ったら千空ちゃん、言うでしょ」
    「…… 4152

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