好きな人とするキスというものは、どんな感じなのだろう。
本当にお砂糖のような甘い味がするのかな。
恋愛という言葉とは縁遠かった私でも、小さい頃、男女の恋愛に纏わるお話を読んだ時は、そんなことを考えもした。
なんとなく流していたドラマのキスシーンを眺めながら、そんなことを思い出して、隣に座る彼をちらりと見る。
彼も私の方を見ていて、ぱっちりと目が合った。
「わっ!ご、ごめん。あ〜...、その...」
すると、彼はドギマギしたように、忙しなく手をバタバタと動かす。
少しの迷いの後、覚悟を決めたように、真っ直ぐな瞳で私を射抜く。
「.....キス、してもいいか?」
「うん...。いいよ」
目を閉じて、そっと唇を触れ合わせる。
柔らかくて暖かい。
幸せで溶けてしまいそうというのは、こういうことをいうのだろう。
『このまま時間が止まってしまえばいいのに』という、あのお話の少女の言葉が頭の中に思い出された。