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    mct_ichi

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    mct_ichi

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    七さに。
    七星剣様に絶賛片想い中の審神者さんと、それを知っていて塩対応だった七星剣様。
    疲れている彼女を見て、どうやら甘やかしてやろうと思ったようです。
    猫ちゃんな七様風味でいかがでしょうか。

    七星剣様に甘やかされる?甘えられる?お話 ――目が痛い。
     集中して時間を忘れていた。唐突にズキンと痛み涙の滲んでくる目に、瞬きの回数が減っていたことに気付いた。
     机の上に置いてある疲れ目用の目薬を点して、目頭を押さえる。
    「どうした?」
     いつの間にやってきたのか、手を退けて見れば七星剣が立っている。
    「ちょっと目が疲れてしまっただけですよ」
     溢れた目薬を拭おうとティッシュに手を伸ばせば、手首を掴まれる。どうしたのかと視線を上げると、七星剣は少々険しい顔になっている。多分それは、わかる人にしかわからない程度の表情の変化。それに気付けた自分にひそかに喜ぶ。
     しかし。
    「……泣いているのか」
     低く問われ、頬が引き攣る。もしかして、怒られる? 肩を竦めると、彼の指が目の下を拭ってきた。
    「なにが、おまえを泣かせた」
    「違、これ、目薬で、泣いていたわけではないんです」
    「……目薬……」
     呆気にとられたような声を出して、彼の手から力が抜ける。だがすぐに目の前に広げてあった書類をまとめて奪われる。
    「あっ!」
    「薬が必要ということは、無理をしているのだろう」
    「目薬程度で――」
    「…………」
     じと、っと見られた私は、口を閉じてまた肩を竦める。もう少しで終わるので、と言っても、彼は書類を返してくれない。近侍用の机の上にそれらを置くと、目を細めて私を見た。黙って見つけられると、居心地が悪い。視線を逸らそうとすれば、くいっと顎を持ち上げられた。
    「ほら、存分に見ると良い」
     この顔が好きだと言っていただろう、と彼は言って、薄い笑みを浮かべる。
    「眼福だ、と、癒されると、いつも言っているだろう?」
     確かにそれは自分がしじゅう言っていることではあるのだが、この至近距離で見つめ合うのは、少々――いや、かなり心臓に悪い。
    「ん?」
     じわじわと頬を染める私を見て、七星剣は小首を傾げた。
    「どうした? やはり無理をしすぎて具合が悪くなったか」
     そうじゃない、と首振るが、彼は攻撃の手を緩める気はないようだ。私のことを立たせると、ソファーのところまで連れて行って、座った自分の膝に乗せようとする。
    「いっ?!」
    「遠慮するな。少し休め」
    「でも、おさわりは」
    「触っているのは、おれだ」
     問題はない、と言いたげな態度に、問題しかないと返したいところ。しかし、そんなことを言ったところで彼は聞き入れないだろう。抵抗しているうちに、彼の足の間に膝をつくような姿勢になる。中腰になれば、視線が近付く。
    「目を閉じてみろ」
    「はぁ……」
     どうして、と思うけれど、至近距離でこの美貌を浴びるよりも幾分か心臓に優しいだろう。素直に目を閉じると、頬を両手で包まれ――両瞼に、柔らかなものが当てられた。
     ――っ、今のは、もしかして――
     そっと目を開けると、難しい顔をしている七星剣がいる。私の瞼を指の腹で拭って、小さく眉を上げた。
    「あの」
    「なんだ」
    「いつまでこうしていれば?」
    「その姿勢が辛いなら、おれの膝に座ればいい」
    「それは結構です」
     断る私に
    「どうしておれの誘いを断る」
     全く理解出来ないとでもいうように首を振る。突然の彼の態度の理由が理解できなくて戸惑っていると、じっと見上げてきた彼はぎゅうっと腰にしがみついてきた。
    「な――っ」
    「明らかに疲れている。おれに隠せると思ったのか?」
    「そんなに疲れた顔してます?」
    「ああ」
     おなかのあたりから見上げてくる七星剣を見下ろすような形になった私は、ぐっと唇を引き結ぶ。
     ――可愛い。
     そんなことを言ったら、怒られてしまうかもしれないから言えない。でも、彼の頭に、猫耳の幻覚が見える。つい先日まで私に興味のない態度だったのに、今日は一体どうしたのか。
     好きな相手から甘えるような態度を取られて嬉しくないわけはない。しかも彼は、こうやって擦り寄ってくることで己の要求を飲ませようというような下心は、ほぼないだろうひとだ。
    「あの」
     辛抱堪らなくなって「頭、撫でても良いですか」ダメ元でお願いしてみる。
     きょと、と瞬いた彼は「ん」短く言って下を向く。形のいい後頭部が無防備にさらされる。
    「失礼します」
     そっと手を乗せると、絹のような手触りの髪が指に絡んでくる。引っ張らないように細心の注意を払って、何度が撫でる。
     ――おさわりを、許されてしまった……!
     妙な感動に包まれていると、彼は頬を私のおなかに押し付けるような格好で見上げてくる。
    「もう終わりか?」
    「え? まだ良いんですか」
    「駄目だと誰が言った」
     そう言って、ほら、とまた頭を撫でやすいような姿勢をとってくれる。
     ――なにこれ、なにこれ! 夢? 私にとって都合よすぎるんですが!?
     こんな展開、あるわけがない。夢ならば、もう少しだけ、と欲が出る。頭から頬に手を滑らせていく。滑らかな肌が手の平に吸い付いてくる。気持ちよさそうに目を細められて、ゾクッと背中が震える。
     ――もう少し。
     もう少しだけ、と彼の頬を両手で包んで、顔を寄せる。
     ――夢なら、イイよね?
     首を傾けて、目を閉じる。そのまま触れようとすれば、少しだけ硬い感触に阻まれた。
    「……?」
     目を開けると、彼が自分の手を口の前に持って来ていた。
    「なにをしようとした」
     夢でも駄目かー、と苦笑いして「キスしようと思って」正直に返せば彼はまた数度素早く瞬きをする。
    「きす?」
    「えっと、接吻? 口付け? 口吸いとか、言うんでしたっけ」
    「ああ」
     それか、と呟いた彼はゆるりと笑みを浮かべた。
    「それは駄目だ」
    「ですよね。ありがとうございます。おかげさまで元気になりました」
     さっきまで枯渇しかけていた気力が湧いてきた。こんな自分に都合のいい夢で、なんとも調子のいいことだ。
    「それならば、おれから」
     聞き間違いかと思えば急に引き寄せられ、バランスを崩した私は彼の膝の上に乗っかってしまう。そして、覗き込まれる顔。いくら夢でも、これは距離が近すぎる。
    「七星剣様、これでは、あまりに私にとって都合が良すぎますってば」
    「?」
    「いくら夢でも、望みすぎだなー、って」
    「夢?」
     なにを言っている、と返され、もしかして現実? と慌てて頬をつねる。
    「痛い!」
    「なにをしているんだ」
     呆れたような声が降ってくる。
     ――え? 現実? なんで?!
    「赤くなっている」
     つねった場所に、彼の唇が当たる。悲鳴を上げれば、口を塞がれる。
    「?!」
     硬直した私と唇の重なっている彼の視線は――近すぎて焦点が合っていないものの――合ったまま。
     ――なんで目を閉じな……いや、そうじゃなくて!
     混乱の極みにいる私の唇を軽く吸って離れた彼の唇から目が離せない。いつもの、少し冷たくも見える笑みを浮かべたままのそこが、今の今まで、私のそれと重なっていただなんて。
    「うん、顔色も良くなったようだな」
     するりと頬を撫でられ、ボッと赤くなる。
    「ん? いや、やはり具合が悪いのか。身体が熱いようだが」
     彼の少し冷たい手が首筋に触れる。供給過多になった私の意識は、ふっ、と遠くなっていった。
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    mct_ichi

    PAST先日開催されていた、利き福さに小説企画に提出した作品です。
    少し書き足しました。自分の癖な表現方法とか削ろうとしてた部分も、いつもの書き方に直してあります。
    投票に参加してくださったから、見抜いてくださった方、ありがとうございました!
    利き福さに寄稿話 テーマ 「雨」 雨だ。雨が降っている。運悪く、今日は傘を持っていない。
     いや、用意はしていたのだ。していたにもかかわらず、玄関先まで持って来ておいて、靴を履くのにその辺に置いて、そのまま忘れた。
     今日私が出掛けることを知っている子も何振りかいる。でも、迎えなど頼んでいないから、待ってても誰も来てはくれないだろう。
     本丸から少し離れた場所にある転送装置のところから、小降りになったタイミングで駆け出し、建物を目指す。本降りになる前、そしてたいした距離ではないとはいえ結構濡れてしまった。玄関まで走るのは諦めて一番近い軒先に駆け込んで、頬に流れ落ちる雨粒を拭おうとした。
    「……大丈夫かい?」
     突然背後から掛けられた声に驚いて振り返る。そこに、心配そうな顔でこちらを見ている福島さんがいた。彼も花を摘んで戻ってきたところらしく、腕いっぱいに花を抱えている。雨の匂いに混ざって、生の花の青い香りがする。
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