居酒屋のバイトで今日はバニーの日だからと髪色に合わせた金茶色のうさ耳を渡され致し方なくつけていたタルタリヤ。
まあ時給いいし、酔っ払った客にチップもらえることもあるしこういうイベントごと嫌いじゃないけどと客引きしていたところ、タルタリヤ?と呼び止められた。
思わず声の方を振り返れば、驚いた様子でこちらを見ているほたるがいる。
「何してるの?」
「………蛍こそ、なんでこんな所いるの? ここ歓楽街だよ?」
「クレープ食べたくて。まだ6時だし」
「……ああ、新しくできたあそこか」
「うん。バイト?」
「そう……ここの居酒屋の。今日は8月2日でバニーの日ってことでうさ耳を支給されてしまってね」
最悪……蛍には絶対会いたくなかったんだけど。
恥ずかしそうにそっぽを向くタルタリヤは、いつもにこやかに物事を流していく様とは印象が異なる。
珍しいものを見られたことに気を良くした蛍は似合っているよと笑みを湛えて言った。
「……思ってもないこと言わなくていいから」
「本当に似合ってるよ」
「それ褒め言葉にならないからね?」
「可愛いよ、タルタリヤ」
「他人事だからって……可愛いよりかっこいいって言われた方が嬉しいんだけど?」
「えー…うさ耳で?」
「……それは確かに無いな」
ほんと最悪。見られたくなかった。むすっと拗ねてしまったタルタリヤを見ながら、蛍はふふっとこみ上げる笑みを漏らした。
かっこいいより、可愛いと思ってしまう方がよっぽど質が悪いし手遅れなんだけどなあ、なんて。
言ってあげはしないけど。