日がちょうど沈んだ頃、ディシアは中身の詰まったバッグを手に酒場へ訪れた。
バッグの中には菓子や化粧品などが入っている。いずれもホワイトデーのお返しだった。
発端はバレンタインの日、ニィロウに誘われ成り行きでチョコレートを作り、友人、知人に渡したことによる。
お返しは要らないと予め言っておいたのだが、ひと月後のホワイトデーである本日、ほとんどの者からしっかり返礼をもらってしまった。
申し訳なさやら嬉しさやらでむず痒くなった胸中を、甘いカクテルで落ち着けつつ、美味い料理に舌鼓を打っていると、座っていたカウンター席の隣に腰をかけてくるやつがいた。
誰かと思えば、アルハイゼンだ。
「びっくりした。珍しいな」
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