君の名は 問診票、という面倒な書類がある。面倒ではあるが、これが必要不可欠であることは、如何なVRCでも避けられぬところなのだ。人命軽視は殺人事件を犯していい理由にならない。
「書けました」
「うむ」
治験協力あたって、彼の身分証明書を初めて見た。車の免許証だが、思ったより彼は若かった。
自動二輪に中型にAT限定解除。なるほど、実用的だ。
「清々しいほど健康体だな」
「丈夫なだけが取り柄なんで……」
そんな彼も、仮性吸血鬼化騒動では我々の予測を超える変化を示した。既往症や持病の有無というより、受け継いできた遺伝子レベルの問題だと推測している。更なる研究が必要だ。
ふと、氏名欄が目に留まった。
「……君らしい名だな」
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