無題今夜はレセプションセンターで潜入任務だった。令嬢のフリをして身を包んだ着慣れない大仰なドレスに、貴族たちの上辺だけの会話。ターゲットはボロを見せず、対した収穫もなく、疲労だけを溜め込んでしまった。早く休みたい。しいなは疲れた体を引き摺って、メルトキオで拠点代わりにでも家代わりにでも使って欲しいと伝えられたワイルダー邸に訪れた。(令嬢のフリをした自分が神子と繋がっていることをバレないようにもちろん最新の注意を払って入った。)
早く与えられた自室に行ってこの仰々しいドレスを脱いでしまいたい。疲労困憊していたしいなは拠点に戻ってきたことで、気が抜けていたのか、他人の気配に気づけなかった。
素通りしたはずのこの館一煌びやかな部屋のの扉が開いてその主がしいなを攫うように部屋の中に引き込んでも、しいなは抵抗らしい抵抗が出来なかった。けどそれは突然しいなを攫ったその本人が恋人であるゼロスだと直ぐに気づいたからかもしれない。
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