お仕置の時間「や、だって、んっ」
自室の壁に無理矢理押し付け、唇を奪う。
「で、あの男は誰か、言う気になった?」
ゼロスはしいなの両手を頭の上で纏めあげていて、しいなは身動きができず、足をばたつかせるがその足はゼロスの足で壁に押し付けられていて意味が無い。
「だからっいくら、あんたでも任務の守秘義務が…んっ」
「それ聞いたから」
聞き飽きた言葉は唇で塞いでしまう。なかなか、情報をもらさないしいなに業を煮やしたゼロスは耳元でわざと息を吹きかけるように喋る。
「もう一度聞く」
耳に息を吹きかけられ耐えられず身を固くするしいなに構わず言葉を続ける。
「街で手を繋いで歩いていたあの男は誰だ」
それは、昼間の出来事だった。仕事に少し時間が空いたため、散歩に出た。ゼロスはメルトキオの活気づいた下町が好きでよく散策に出る。前はこの辺りが得意なナンパスポットだったが彼が女性に声をかけることはもう無い。数ヶ月前から恋人関係に関係が変わったしいながいるからだ。
適当に街を歩くこと数分、突き当たりの曲がり角に見覚えのある桃色の布が揺蕩うのが見えた。しいなの帯だ。メルトキオであの帯を取り入れたファッションをしているのはしいなくらいだろう。迷うことなく、彼女の曲がった角を曲がり、声を変えようとした。したが、できなかった。
見知らぬ男と手を繋いでテセアラ城の方へ歩いていく後ろ姿が見えた。
そして、任務が終わったと言ってワイルダー邸に尋ねてきたしいなを自室に連れ込んで今に至る。
「任務だったら、俺以外の男とキスしたりするのか?」
「っしないよ!」
「手を繋ぐのはしいなの中で浮気じゃないんだな」
「………仕方なかったんだよ」
「へぇ」
舌先で耳の縁を舐める。ビクッとしいなが全身を震わす。
「その、仕方ないわけ、教えてくれる」
「…守秘義んぅっ」
聞き飽きた言葉は唇で塞ぐ。
「それ、もう聞きたくない」
しいなは目をうるうると潤ませて許しを請うように見つめてくるが、喋るまでやめる気は無い。
やがてしいなは諦めたように目を伏せた。
「……護衛対象はは盲目だったんだよ。護衛任務を陛下から仕ったわけだけど、護ってる間に白杖奪われちゃって…」
「…へぇ。そうだったのか。それで手をいい子だな」
しいなを拘束していた手と足をどいてやる。しいなは安心したようにへたりと力を抜いて壁に体重をかける。
「あぁ、守秘義務があるのに…」
「ダイジョーブ、ダイジョーブ。俺様神子様ですし。なんなら王家に次ぐ公爵家なわけだし」
「…でも」
「…それよりしいな、相手が盲目だったとしても、手を繋ぐ以外の方法あったんじゃ、ねーの?」
ゼロスの目が再び怪しく光る。ゼロスはしいなを担ぎ、ベッドへと向かう。
「おしおきの続き、な」
しいなは抗議をする気力を失ったようで、ぐったりとしたまま、ベッドに押し倒された。