電光線の夢ゆら、と頭が揺れる感覚がして、ゆっくりと目を開ける。この時点で明晰夢だ、と思った。
ぱっと目にはいったのは木目がよく見えるフローリングの床。俺が座っているのは教室の椅子みたいな座面が硬い木の長椅子で、顔をあげれば天井から吊り下がった向日葵の吊革が揺れている。自転車の籠の金網でできた荷物棚を支えるのは公園にある鉄棒の錆びた鉄柱で、車内アナウンスは次の停車駅ではなく今乗っている路線の名前を繰り返す。
「ただいまご乗車いただいておりますこの車両は環状線、電光線でございます」
窓の外は真っ暗で、時々真っ白く光が瞬くのに合わせてごろごろと雷鳴が轟く。天井付近の案内板には、ただいまの通過駅 イ合/かメと表示されている。今視界に入ったもの全てに見覚えはない。それでも、放送を聞く前、目が覚めた瞬間にどこだかわかった。
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