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    蜂須賀

    いろいろ置いてます

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    蜂須賀

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    先生はもとより、たぶんさんうくちんもふるちんです(せんせいはもとより?
    おめでとうって書いたら誕生日文だと思うなよ

    かみ、そらにしろしめす 甘えすがるような声を聞かれたくないから、ねぇあなたは、堪えられない息音を私の名前にすり替えている。何度かに一度、呼び返してみるけれど、あなたの耳には届かない。
    そのうちにあなたの喉は、くぅ、と鳴る。

     興奮が尾を引いて入眠を妨げることは、もうこの人にはないらしい。
    果てた後に触れ合いはなく、落ちるように眠ってしまう。
    あなたの隣ひとり残されて、じっと寝顔を眺めている。
    深い息、少し開いた唇、のぞく前歯。
    指先で鼻筋をなぞると、いやだやめろ、と眉根が寄る。

     必ずふたりシャワーを浴びて、あなたの髪を乾かすのが習慣だったのは、いつの頃だったろう。

     愛しさはいつもあなたを追い越して、振り返れば呆れ顔のあなたがいる。
    バツが悪くて曖昧に笑う私に、あなたは一層ゆっくりと歩いて私に追いつく。


     マットレスが揺れて目が覚めた。
    ベッドを背にしてサンウクさんが胡坐をかいている。
    寝ぐせのついた襟足を見つめる。
    うつ伏せの身体の下から腕を伸ばし、触れる。
    サンウクさんの、汗でまだ湿る肩。

    —— あなた冷えてる、エアコンあげて
    —— 今からラーメン食うからいい
    —— そんなのあなたの都合でしょう、私も寒い

     サンウクさんは、リモコンがない、といい加減な嘘をつく。
    どこかでまるまっているだろうタオルケットを足で探ってみたけれど、届かなかった。

    —— ラーメン、私のは?
    —— もうない
    —— うそです、買い置きまだあるでしょう
    —— 自分でやれよ、湯、入れるだけだろ
    —— それっぽっち、というのだったらしてくださいよ

     続けたいだけの問答は、いつもあなたが沈黙で終わらせてしまう。
    つまらないから、身を乗り出して、冷たい二の腕に歯をたてる。
    反応はない、ラーメンの食べどきだけを気にしている。

    —— ねぇ、私のパンツ、踏んでます

     あなたは少し腰を浮かせると、尻の下から箸で摘んでポイと放ってよこす。

    —— お箸でなんてこと、あなた

     驚いて咎めるとサンウクさんは、パンツくらい、と呟いて大きな音をたてて麺をすする。
    パンツくらい、だって変な言葉。
    ふふと、笑いが込み上げる。
    なんだ何がおかしい、口いっぱいの麺を咀嚼しながら、サンウクさんが言い返す。
     
    —— なんて?聞こえません、パンツが、なんですって?

     最後は笑って言葉にならないから、冷たいうなじに顔をうずめる。
    いつまでも笑っている私のおでこに、サンウクさんが髭がこすりつける。

     ねえあなた、今日はあなたの生まれた日だというのにね

     いつもを、いつものように暮らすことを、おめでとう


                                  おわり
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    蜂須賀

    DOODLEちょっと不思議話、1篇。
    弐之助さん主催のアンソロジー『幻想奇譚蒐集録』より再掲
     二次元、映す面、その輪郭 三綴りその朝は頭痛と上がってくる胃酸の不快感で不機嫌に髭をあたっていた。電動は好かないから毎朝カミソリを使っている。
    目覚めたのは居間の床だった。カーテンを閉める習慣を忘れて久しい窓から射す朝日が、目の前のアルミ缶から零れた液体と、緑の瓶に当たり煌めいていた。まるで他人事のようにそれをぼんやり眺めるが、数時間前の自分と今の自分が繋がっていないわけはない。浴びるように飲むアルコールはやがて循環代謝され頻繁に通うトイレで体外に排出されるものが、飲酒したという自己嫌悪だけはそうはいかず、体内に溜まり続けた。肉体を管として、なにもかもがただ通り過ぎればよいものを。
     うつろな顔と荒れた肌を見たくなくてカミソリを当てる部分だけに視線を集中する。それから目を閉じて指先の感覚で顎のラインと三日分の伸び丈を探る。ふと、かすかなカビの匂いがした。のろのろと手を動かしながらぼんやりと思う。雨? いや、ついさっき陽の眩しさで目が覚めたのだ、そんな予報だったか。天気などに関心を向ける生活でもないが、けれど時折見上げる空の色を無意識に読む癖程度は残っていた。
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