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    yukiji_29

    @yukiji_29
    倉庫用。
    ほぼアスカガ。
    挫折した文章やら年齢制限のものやら。

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    yukiji_29

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    種自由後のアスカガ。

    全然休んでくれないカガリを心配して、トーヤ達がアスランを呼んでカガリを預ける話。

    積水成淵有明の空の下に美しいオーブの海が広がり、その絶景を一人占めするかのように建てられたアスハ邸。カガリの朝は、この眺望を眺める事から始まる。
    まだ体に纏う眠気を払うように、グッと伸びをして朝の冷えた空気を胸一杯に吸い込む。カガリが起きたのを見計らったように扉をノッ クする音がして、短く返事をすれば幼い頃から自 分を世話するマーナがワゴンを引いて部屋に入っ てきた。

    「おはようございます、カガリお嬢様」

    「あぁ。おはよう、マーナ」

    「朝茶を持ってまいりましたよ。ご朝食はいつ頃お持ちしましょうか」

    「一時間くらい書類仕事をするよ。今日は朝食は いい、代わりに何か簡単に腹に入れられる食べ物を用意しておいてくれないか」

    マーナから淹れたての朝茶を受け取りそう答えれば、そのように厨房スタッフに伝えておくと言われマーナはまたワゴンを引いて部屋を下がった。
    カガリは温かいお茶を口に含み、昨夜机に置いた書類を手に取る。目を通してはパラリと紙を捲り、また目を通しては紙を捲り、紙の音だけが部屋に響き渡る。静かで平和な朝だ。
    ほんの数ヶ月前、オーブに再び戦火の炎が落とされるかもしれなかったあの日が、まるで夢のようだ。何とかオーブに火の粉が降りかかる事は防げたが、安堵も束の間。その後の大量の事後処理がカガリを待っていた。
    自国の事はもちろん、各国との外交面や経済面の協議、コンパスの事、被害地域への支援派遣、ファウンデーションの暴挙により一時不安定になった情勢の立て直し、その他諸々。猫の手も借りたいくらいカガリは多忙を極めた。
    あの頃より幾許か対応案件は減ったが、そうは言っても猫も借りたい状況の場面はまだまだある。 今日もこなさねばならぬ公務の数を数え、頭が痛 い気持ちになった。
    そうこうしているうちに再びコンコンと部屋の扉が叩かれ、トーヤ様がご到着されましたと扉の向こうからマーナの声がかかる。今日はトーヤを連れて一日視察の予定だ。多忙なカガリが少しでも休む時間が確保できるようにと、トーヤが今朝はアスハ邸へ赴きそのまま視察先へ迎えるようにと計らってくれたのだ。 利発な子の心遣いに感謝し、カガリはそれを受け入れ今日はいつもよりゆっくり眠る事ができた。
    通してくれと返事を返せば、ガチャリと扉の開 く。カガリは書類に目を落としたまま、トーヤに 声をかけた。

    「おはよう。トーヤ、すまないが少しだけ待って いてくれないか この書類だけ目を通したいん だ」

    「分かった。それが最後だぞ」

    すぐに終わらせると告げようとした瞬間、思わぬ声にカガリはバッと勢いよく顔を上げる。 視線の先に立つのは金髪のアイスブルーの瞳を持つ秘書官の少年ではなく、夜空の色の髪を持つ青年だった。

    「アスラン…?」

    定期報告を受ける為に画面越しで顔は合わせていたが、こうして画面を隔てる事なく二人が会うのは実に数ヶ月前に起きたファウンデーションとの戦闘振りだった。

    「なんでお前、ここに」

    ターミナルにいるんじゃ。と驚きで声を失う。
    アスランは現在メイリンと一緒にオーブのエージェントとしてターミナルに出向していて、日夜オーブや世界の平和の為にカガリと共に戦ってくれている。一年を通しオーブから離れている事の方が多い彼が何故。

    「マシマ秘書官に頼まれたんだよ。どれだけ言っ てもカガリが全然休んでくれないから、何とか休 ませてほしいって」

    「え…?」

    「毎日遅くまで公務をして、働き詰めだと聞いて いるぞ?」

    そう言って歩み寄ってきたアスランが、カガリを引き寄せスッとカガリの目元を優しく撫でる。目元に居座る薄いクマが、カガリの疲労を物語っていた。



    遡る事、数日前。
    出向先のターミナルで、アスランにトーヤから通信がかかってきた。トーヤと話す事はあるが、いつもカガリの横に並んでいる時に三人で話す事が専らで、二人きりの一対一で話す事は意外にも少ない。
    珍しいと思いつつ回線を開けば、開口一番オーブに近々一時帰国はできないかとの打診だった。緊急用件かと思いアスランに緊張が走る。何事だと問えば、カガリがオーバーワーク気味で止めてほしいとの事だった。

    「だ、大丈夫だ!これくらい何ともない!それに今日は視察の予定が入ってるし、昨日急ぎの案件も出てきて他にもやる事が沢山…」

    「昨日の急ぎの案件は、ミリアリアとサイが当たってくれる手筈になってるから大丈夫だ」

    「手筈って、」

    「視察も行かなくて大丈夫」

    「え?」

    「スケジュールに入っていない」

    「…どういう事だ?」

    突然の予定キャンセルを告げられカガリは戸惑いの目をアスランに向ける。困惑している姿に、アスランはカガリによく見せる微笑を浮かべ経緯を説明した。

    「カガリに休んで欲しかったから、トーヤが嘘のスケジュールを一日入れたんだよ。だから今日カ ガリはオフだ」

    何がしたい?付き合うよ。と言うアスランに、急遽降って湧いた休日にカガリは何も思いつかない。だって、そんな急に思い浮かばない。久しぶりにアスランに会えて、それだけで今は充分なのに。
    ウンウンと悩んだ末にカガリが出した答えは一緒にドライブがしたいだった。アスランの運転で。 それでいいのか?と意外そうに見てくるアスランに、うんと頷く。どうやら体を動かす系の事を提示されると思ったらしい。確かにそれも捨て難いが、カガリは久しぶりにオーブに帰ってきたアスランとの時間をゆっくり味わいたかった。
    着替えておいでとカガリに促し、アスランはカガリのそばを一旦離れアスハ邸の玄関を出る。腕時計で時間を確認する。そろそろ来る頃合いだ。
    そう思い遠くを見つめていれば、ドルンと低いエンジンの音をたてて一台の車が玄関ロビーに入ってきて、そのまま横付けされる。

    「アスランお待たせ。頼まれた車、持ってきたよ」

    「サイ、ありがとう。すまない助かった」

    アスランが所持する車の運転席から降りてきたのは、四年前の大戦で共に戦った仲間のサイ。今はオーブ行政府の官僚で、カガリの側近の内の一人として勤めている。 車のキーをサイから受け取り、カガリの準備が終えるまでアスランはサイと少し談笑する。

    「何から何まですまない。こっちに戻ってきた時に、空港にも迎えにきてくれて本当に助かった」

    「どういたしまして。こっちこそ、アスランが帰 国してくれて助かったよ。代表、働き詰めで全然 休みを取ろうとしてくれなくて困ってたんだ。僕らがどれだけ言っても大丈夫だ!の一点張りで」

    そう肩を竦めるサイに、その情景が容易に想像できてアスランは苦笑する。

    「アスランから言えば、きっと聞き入れてくれると思ったから本当、ターミナルでも忙しいのにごめんな」

    「いや、俺もそろそろ一度オーブに戻らないとい けないとは思っていたから、良いキッカケをもらったよ」

    久しぶりに会う仲間と話に花を咲かせていれば、 アスランー!と着替えを終えたカガリがやってくる。

    「サイじゃないか。もしかして、何か起きたのか?!」

    先ほどの穏やかな空気が打って変わり、カガリは為政者としての空気を纏う。サイは慌てて手を横に振った。

    「俺はアスランの車を届けにきただけですから。代表は今日はゆっくりオフを楽しんでください」

    そう和かに言うサイに、本当かと疑いの目を向けるカガリにアスランはそこまでと言わんばかりに乗ってと乗車を促す。カガリが助手席に座りシートベルトを付けたのを確認して、アスランは運転席に回り込みエンジンをかける。ドルンと鳴るエンジンと振動をシート越しに感じながらアスランはギアを動かし、ゆっくりアクセスを踏む。気をつけてと手を振るサイに見送られ、二人はアスハ邸を出た。



    海沿いに走る車から、カガリは朝日で反射する海の景色を眺める。人前に立つ時のカガリと違う、リラックスした空気感を纏う彼女にアスランは見 守るように視線を投げる。

    「カガリ、朝食は?」

    「まだだ。アスランは?」

    「俺もだ。ひとまず腹拵えをしよう、行き先は朝食を取りながら決めないか?」

    「それいいな、そうしよう!」

    楽しみだと笑うカガリの手をアスランはそっと手を取り、空いている片手でカガリの指を絡めて握る。スルリと撫でられ、突然の触れ合いにカガリは驚いてアスランの顔を見た。

    「な…急にビックリするだろ…」

    「許可取った方が良かったか?」

    「そういう事じゃない!」

    イタズラが成功したような笑みを浮かべるアスランに、カガリは居心地悪くする。決して嫌ではなく触れられる事は嬉しいのだが、カガリはアスランからされる急な触れ合いが未だに慣れない。
    想い想われ、そんな関係がもう四年近く続いているが、まだ少し気恥ずかしさが残る。

    「今日はカガリをたくさん甘やかしたい気分なんだ」

    砂糖を溶かしたような甘さを伝えてくるアスランに、カガリは繋がっていないもう片方の手で顔を覆った。耳が赤くなっている事もバレている気がする。
    昔は一人でグルグルと考えて言葉足らずのアスランだったが、今はその鳴りを潜め、心の内を言葉にしようと尽くしてくれるようになった。すれ違いや誤解が起こる事は格段に減ったし、何よりアスランが言葉を尽くし行動で示してくれたお陰で、今の二人の関係がある。だからカガリも強くは出られないわけで。

    「たまに、その…手加減してもらえると嬉しい…」

    「分かった」

    小さな声でそう伝えるカガリに応えるアスランの声は、楽しそうだった。
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