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    f_suisuizzZ

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    エイプリルフールの一ぐだ♂小話
    ※VDイベのネタバレがあります(ネタ解禁いつしていいかわからないです...)

    #一ぐだ♂

    「嘘と」「一ちゃん」
    「どうしたの、マスターちゃん」
    「ちょっと、疲れちゃった」

     カルデアの広く長い廊下の真ん中で、斎藤は息を呑んだ。目の前の男がこうも容易く弱音を吐いたことに、至極驚いたのだ。

    「立香ちゃん、」

     なんと声をかけるべきか。夜食をともにしたあの夜言葉にしたそれは嘘ではなかった。嘘ではなかったけれど、準備はまだ、整っていない。その不甲斐なさに己を呪うことだけして今に至っていたのだった。
     斎藤は大きく息を吸い込んで、そして

    「立香ちゃん。いや、マスター」
    「───なんて、ね」
    「へ?」
    「今日、エイプリルフールって言うんだ」
    「えいぷりる、ふーる?」
    「そう。嘘をつく日。ん?嘘をついてもいい日、だったかな?」

     目を丸める斎藤に反して、マスターは口元に笑みを浮かべていた。両の手を顔の前で合わせて、「みんなの反応が毎年面白くて。騙すようなことしてごめんね」と戯けている。

    「ふーん。嘘をついてもいい日、ね」

     マスター藤丸立香の目前に手が差し伸べられる。黒革の手袋に包まれた斎藤の手だ。藤丸は首を傾げた。

     「マスターちゃん。僕、ちょっと付き合ってほしいところがあるんだ」


    ***


     管制室のお偉方に特別な許可をもらってシュミレーター室に籠もった二人は海辺に立っていた。藤丸はまたもや首を傾げる。

    「一ちゃんが来たかったのって、海?」
    「そう」
    「なんで?」
    「なんでって、疲れてるときにはいい景色とうまい飯、あとは睡眠が必要だからね」

     それに酒がついてくれば万々歳であるのだか、何分、己のマスターは酒は飲まない質だった。
     そんなことに思考を巡らせていると隣に立つ藤丸が俯いた。口を横一文字にきつく結んでいるのが横目で見ても分かった。斎藤は彼の背を優しく叩いた。

    「......一ちゃんにはお見通しなんだね」
    「そりゃぁ、ね。僕は立香ちゃんのサーヴァントですんで」

     あの告白はきっと本当のものだったのだ。修飾する語が「ちょっと」ではなく、「とても」が正しいというところ以外は。
     目の下に薄っすらとできた隈に先日背中と腕につけて帰ってきた大きな傷。それにきっと、心だって。
     斎藤は察していながらも口にはしなかった。
     マスターが嘘をついてもいい日を口実に、己を一部分だけでも曝け出してくれたのだから。

     これはとある逃避行の予行練習。

     目の前に広がる光景と同じ色の瞳をした少年は、靴と靴下を脱ぎ払って今、砂浜を駆けだした。
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    ねこの

    PROGRESSキーボードが来るまでストップノウム・カルデアは閉鎖された空間だ。外気は通らず、日光など取り入れられる道理も無い。施設内に疑似日光を再現できる部屋は有るが、あくまで疑似だ。シミュレーターなんかもそうだが、どれだけ限り無く本物に近くとも欺瞞に過ぎない。
     漂白された地球が一体どうなっているのかを斎藤は知らなかった。聞いてもきっと分からないだろう。記憶にあるよりもずっと技術の進んだ施設は便利だが味気ない。昼も夜も同じよう室内を照らす照明も、人間に害を及ぼさぬよう常に働く空気清浄機もよくできていると思うものの、揺らめく火を眺めたくなる。或いは様々なものが混じった土のにおいを嗅ぎたくなった。思えばシミュレーターはこの辺りが足りない気がする。エネミーを斬ったとて血や臓物の臭いが鼻の奥にこびりつく感触は無い。
     レイシフトに手を上げたのもそういう理由だ。今回は多少の揺らぎが観測された土地の調査とあって緊張感が薄い。ベースキャンプを作り、ここを拠点に数日間の探索を行う。野営には慣れているのか、随分と手際が良かった。
     頭上には晴れ晴れとした晴天が広がっている。放牧地なのか草が青々と生い茂り、寝転べば心地良さそうだ。敵性生物の気配 9055