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    たんごのあーる

    遅ればせながら、久方ぶりに沼入り。
    夏+五。幸せだったら、それでいい。

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    たんごのあーる

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    [夏五ワンライ]お題:涙袋。
    呪専さしす、で、すは不在。惚れたほうが弱い、というか、どっちも硝子にいろいろ聞きにきそうだな、って。その度にうんざりしながらも頼りになるんだろうな、っていう在記。

    カワイイはつくれる最強といって憚らない同級生が、どういう訳だか、急に「可愛くなりたい」と言い出した。
    正直、また面倒なことを、と思ったが、十中八九、例の親友絡みだと分かっているので、もうそれについては口には出さずに、とりあえずどうしてなのか尋ねることにした。
    「だって、可愛いほうがモテるって。」
    「男が可愛くってどうすんだよ。ってか、誰にモテたいの?」
    そう重ねて尋ねると慌てた顔をして、拗ねた口調でボソボソと返す。
    「や、そーいうんじゃなくて、何ていうか、その、ほら、あれだよ、俺のほうが顔がいいはずなのに、傑のほうがモテるって、おかしくね?」
    「いや、お前の言ってる意味が全く分からん。それと可愛くなりたい、が、どう繋がんの?」
    「体格的には、俺の方が身長高いけど、ガタイの良さは、傑のほうが俺より分厚いからさー。で、他に勝てるとこ考えてたら、可愛さかな?って。」
    真面目な顔をしてそんなことをいう目の前の男に、今度は隠さず大ため息をついた。馬鹿だバカだとは思っていたけれど、ここまでとは…と思いかけて、いや、もう分かっていたはずだろうと、自分に言い聞かせる。彼の専属教育係は、この件では期待できない、というよりは、このバカ寄りなので、こうなったら逆にノッてやろうじゃないかと、半ば自棄っぱちになる。
    「で、どうして欲しいの?」
    「だからぁ、可愛くなりたいんだって。」
    「……。ん、分かった。ちょっとここで待ってな。」
    そう言って自室に戻ると、メイク道具一式を持って彼のもとへ引き返してきた。
    「とりあえず、私に出来ることはやってやるよ。後で文句言うなよ。あと、礼はタバコ1カートンとビール1ケースよろしく。」
    大人しく待っていた男にそう言い放つと、返事を待たずにおもむろに化粧を始める。黙っていれば確かに造作は整っているし、腹が立つくらいにキメが整った肌をしている。
    油性マジックで落書きしたい気分をグッとこらえ、ベースメイクはパウダーで簡単にして、下まぶた以外のアイメイクを完成させ、クリアなアイラッシュカーラーで密で繊細なまつ毛を整えてやる。目の下の高い位置にフワッとチークを入れて、
    「仕上げにもうひと手間。」
    と、涙袋に沿ってアイシャドウを塗っていく。涙袋の影になる位置にラインを引いて、涙袋をふっくらとみせるために、パールシャドーを指でポンポンとのせてみた。
    「光を集めて、ぷっくりとした涙袋は、カワイイんだってさ。目は口ほどに物を言う、っていうし。どうよ?」
    前髪を止めていたクリップを外し、手鏡を渡してやる。ここまで口も出さず神妙に座っていた男は鏡をまじまじと覗き込むと、小首をかしげる。
    「俺、カワイイ?」
    「んー、カワイイカワイイ。夏油にみせてきたら?」
    「そーだな!これなら勝てるかも!硝子、サンキュ。」
    と、おもむろに立ち上がり、共有部分から自室の方へパタパタと足早に戻っていった。
    「礼、忘れんなよー。」
    後ろから声をかけるも、ひらひらと手を振られて姿が見えなくなった。
    タバコが吸いたいと思いながら、メイク道具を片付ける。
    「お医者様でも草津の湯でも、って。…あーめんどくさ。私を巻き込むな。」
    そうつぶやくと、喫煙スペースに向かうのだった。

    その後、勝負がついたかどうかは、預かり知らぬこと。
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    たんごのあーる

    TRAININGこれが、本当に一番最初に書き上げたヤツ。
    百鬼夜行後。
    「すまん、起こしたか?」
    静かに戻ってきたつもりだったが、どうやら起こしてしまったらしい。今朝早く姿を見せたかと思ったら、「ちょっとここで寝かせて。」と有無を言わさず、硝子の職場でもある医務室のベッドに、五条が潜り込んだのは数時間前。
    柔らかな午後の日差しが差し込むベッドの上で半身を起こしながら、まだ少しぼんやりとした表情をしているが、その人並み外れた美貌は損なわれない。ペットボトルの水を手渡しながら、小言を言ってみる。
    「ちゃんと寝て、ちゃんと食べないと。お前も人間なんだから、一応。」
    「一応、って。相変わらずだよね、硝子は。」
    まだ眠いのか、眼を擦りながらぼやく五条は、やはり疲れているように見えた。
    「大人なんだから、睡眠も栄養も、ちゃんと摂ってるよ。そもそもどっちも少なくても、大丈夫。僕、最強だから。」
    立て膝に頬杖をつきながらにんまりとする顔に、学生の頃の屈託ない笑顔がよぎる。
    「大人、ってのは、自分のことは自分でちゃんと出来るヤツのことをいうんだ。まぁいいけど。私の手を煩わすようなことはするなよ、五条先生。」
    「わかってるよ、硝子せーんせ。クソ爺ィの相手やら、連日の任務とか 1131

    4_haru100

    DONEシャ白さんとの共同企画🍽
    5話目!

    ⚠︎ストレスに狂った七海がストレス発散のために五条に料理を食べさせる話です
    ⚠︎付き合ってないしロマンスの兆しはすごく微かです
    ⚠︎なんでも許せる方向け
    ■とびうお / クークー普通の先輩後輩みたいな、七海がそういう感じで思ってくれてたら良いな、なんて、つい先日思ったばかりのことが頭をよぎる。確かに思った、思ったけれど、じゃあ今この息苦しさはなんだろう。

    「え?五条さん?」
    いつも通り、七海の部屋に玄関からちゃんと来た。いつも通りじゃなかったのは、ドアを開けたのが家主じゃあなかったってところだ。
    「猪野くん、じゃあまた今度……」
    部屋の奥から言いかけた家主が、あと気が付いた様子で顔を上げた。入り口で立つ五条と、玄関を開ける猪野と、廊下から二人を見る七海。一同少し固まって、そうして一番最初に口を開いたのは自分だった。
    「帰った方がいい?」
    「は?」
    「えっなんでですか!」
    この部屋で誰かと出くわすことを考えていなくて、動揺する。頭が上手く回らない。いや、そうだよな別に誰かがいたって、帰ることないよなとようやく脳細胞が動き出した頃、猪野がドアを開けたままなことに気が付く。
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