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    たんごのあーる

    遅ればせながら、久方ぶりに沼入り。
    夏+五。幸せだったら、それでいい。

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    たんごのあーる

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    第42回 お題:無害、子猫、船を漕ぐ #夏五版ワンドロワンライ延長戦(@725_drwr)
    ワンライにも、猫の日にも遅刻…。

    #呪術廻戦
    jujutsuKaisen
    #腐術廻戦
    theArtOfTheRape
    #呪専

    猫の話その腕の中に居たのは、小さな小さな仔猫2匹だった。真っ黒いのと真っ白いのが縺れるようにひとかたまりになって小さく震えている。
    「どうしたの、それ。」
    「任務の行きに見かけたんだけど、帰りもまだ元いたところにいて、で、雨もだんだんひどくなってきてたし、なんか、そのままにしておけなくて…。」
    いつもの傍若無人さは鳴りを潜め、少しずつ声が小さくなり、どんどんと大きな背が丸まりうつむき加減になる悟に対して、場違いとは分かっているけれど、思わずカワイイと思う自分に気がついて、慌てて気を引き締める。
    「どうするの、それ。」
    「ヤガセンにはもう報告してて、とりあえず飼い主見つかるまでは面倒みろって言われてて。…傑も手伝ってくれるよな?」
    上目遣いにそう言われて、断れるわけもない。頼られることが嬉しいけれど、
    「しょうがないね。悟だけじゃ手に余りそうだし。」
    と、渋々といった体でそう返すと、パッと嬉しそうな顔を上げる彼を、やっぱりカワイイと思ってしまった。
    「とりあえず部屋に入れる前に、まずはお風呂だね。きれいにしてから、よーく乾かさないと。」
    そう言って寮の浴場に連れていき、スウェットの裾をまくり上げると、温めのお湯を洗面器に入れ、ペット用シャンプーなどはないので、無添加の石鹸を軽く泡立てて手早く洗う。身体が冷え切っていたようで、手やお湯の暖かさに安心したのか、思ったよりも大人しくしている仔猫の泡をよく洗い流すと、まず白い方の一匹を悟に渡す。
    タオルドライしてドライヤーかけてやって、と促され、恐る恐るタオルでくるむ「最強」を見てゆるく笑うと黒い方に取り掛かり、四苦八苦しながらも、どうにか2匹ともドライヤーをかけ終えた。
    「うん、可愛くなったね。」
    ふわふわになった仔猫たちに頬ずりし、良い子だねー、と声をかけながら脱衣カゴにそっと入れる。
    「悟もシャワー浴びてきたら?この子たち、部屋に置いたら、着換え持ってきておくよ。」
    なんとも言えない顔をしている悟にそう声をかけて浴場を出ると、部屋の前では補助監督が待ち構えていて、猫用のトイレとかケージなど手渡してくれる。ずいぶん用意がいいな、と思っていると「よくあることなんですよ。」と、笑った。
    「よくあること?」
    「連れて帰ってきちゃう子がね。一応、寮はペット禁止なんだけど、こういうことが頻繁にあるから、いろいろ揃えてるうちに、ね。」
    なるほど、と納得し、仔猫用の餌とか、明日の獣医の予約の確認をしているうちに、悟が下半身にタオルを巻いただけの姿で戻ってきた。
    「傑ぅー、着替えー。」
    「悟、早すぎ。ってか髪、ちゃんと拭いて。風邪引くよ。」
    ポタポタと雫を垂らしている悟にダンボールを1つ手渡し、補助監督にお礼を言うと、飼い主のほうはこちらでも声掛けしてみますね、と頼りになる声を返してくれた。

    部屋に入り仔猫を下ろすと、悟には着替を最優先させる。
    「お腹空いてるだろうから、ご飯が先かな。」
    お湯を沸かし、ドライフードをふやかしていると、にゃーにゃーと自己主張しながら、足元に2匹が纏わりついてきた。同時に肩口から、着替え終わった悟も顔を覗かせる。
    「悟もお腹空いてるなら、カップ麺ならあるけど。甘いのが欲しいなら、冷蔵庫にプリン入ってるよ。」
    「んー。プリン食べる。」
    顎をのせていた大きな方の引き剥がしに成功した隙に、仔猫達の前にエサを置いてやると、器に顔ごと突っ込んで食べ始めた。その微笑ましい様子を少しの間眺めたあと、ケージを組み立てる。頼りにならない部屋主は、仔猫の横で胡座をかきプリンを頬張っていた。その顔も微笑ましく思いながら、手早くトイレや寝床なども調えていく。
    お腹いっぱいになった仔猫たちは、今度は温もりを求めて、近くにいた悟の膝に登り始める。おろしてもおろしても登ってくる仔猫たちに、悟がついに根負けする頃、2匹は居心地の良い居場所を見つけてウトウトし始めた。
    無下限を解き、彼に触れることを許されるのは、害をなすものではないと、彼自身に判じられたものだけ。
    仔猫につけられた悟の腕の小さな傷に気づき、同じくらいの小さな嫉妬を覚える。
    ふう、と小さくため息をつくと、仔猫をつまみ上げて準備を終えたケージの中の寝床に柔らかく移す。2匹はしばらくもぞもぞと寝床の中を確認していたが、やがて互いに身を寄せ合いぐっすりと眠りについた。振り返ると悟もゆっくり船を漕いでいるのが見える。
    「悟、寝るならベッドで寝な。身体痛くなるよ。」
    起こそうとして手を伸ばすと、その手を引っ張られてその腕の中に抱き込まれる。
    「俺にも、優しくして。」
    「…え?」
    「俺も褒めて。」
    首に回された腕にギュッと力が入ったのが分かる。
    「…あぁ。悟もよく頑張ったね。お疲れ様。イイコだよ。だから、ちゃんとベッドで寝よ。」
    ふわふわの頭を撫でながら、もう片方の手で背中をなだめる様にぽんぽんとゆっくりたたく。無防備に預けられた身体から伝わる体温に、胸に刺さっていた冷たく小さな棘は溶かされて、いつの間にか消えていた。
    「一緒にいられたらいいのにね。」
    つぶやくと、悟が顔を上げてこちらを覗き込む。猫の話だよ、そう言うと、何も恐れることはない柔らかな帳の布団に二人で潜り込んだのだった。
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