海獣のバラード~最果て~人の子のユウに海の進み方と目的地を教えてもらって、ダイチとスガと共に慣れ親しんだ海を離れた。北の海は沢山の漁師がいるから、それらに見つからないように、すり抜けるようにして移動する。網だとかにかかっても嫌だし、銛で突かれても死にはしないけど、痛いのは嫌だもんな。
本当にユウと合流出来るのか不安だった。ダイチとスガがついてきてくれたことで、進むにつれてその不安はだいぶ減っていったけれど、合流できたそこでまさか「旭さん」もいるとは思わなかった。本当に俺と同じ顔をしているんだなって思ったし、海の中からでもユウが「旭さん」に大事にされているのは分かったから、とりあえず引っ込んだんだよね。
失恋とはまた違うけど、やっぱりあの子を食っておけばよかったかなとも思ったし、そしたら「旭さん」は俺を恨むだろうし、俺と俺で争うことになるかもね。そういうのは、好きじゃない。争うとか、奪うとか、やっぱりいいことには繋がらないよね。「旭さん」といるあの子の顔を見たら、やっぱり納得出来たし。だからその夜は大人しくダイチとスガと休むことにしたんだ。
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