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    @nene84681745

    キメツの二次創作小説を書いてます٩( ᐛ )و

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    ギャグ?笑って許して系です。ぎゆさんが腐男子。
    これもしぶにそのまま上げておく勇気がなく削除したやつ。供養!供養!

    凪よ聞いてくれ「ねえ炭治郎、この話『波よ聞いてくれ』のパロディだって言ってるんだけど」
    「そうだ、善逸。『波よ〜』は沙村浩明先生の傑作だ。だけど読んでなくても大丈夫だそうだぞ」
    「そんなんアリ?」
    「なんでも、読んでたらセリフを丸パクリしているのがバレるだけだと言っている。当然クロスオーバーではないので、ミナレさんも出てこない」
    「ミナレさんって誰だよ?」
    「それは善逸が知る必要のないことだな!」
    「そうなの?なんなのさ、もう…」
    「それから、大正であって大正ではない。むしろ現代とのクロスオーバーだ!細かいことは考えるな!感じろ!」
    「ちょ、炭治郎、大丈夫?キャラ変っちゃってるよ!」
    「あと、キャラ崩壊、特に柱が腐っているから閲覧注意だ!」
    「えっ?腐った柱ってなんなんだよ。シロアリ被害なの?!」
    「そういう意味ではないと思うぞ!あと、ここでコソコソ話。この話では俺の兄弟子が大活躍だ!」
    「大活躍っていうより、ここの水柱、変態扱いだよねぇ?!カッチョいいとみぎゆ至上主義の人はブラウザバックだよねえ!?」
    「そうだ!なんでも笑って許してくれる人向け!ということで、よろしく頼む!」
    「炭治郎、話聞いてよ〜。チョット、これ読んだ人怒り出すんじゃない?責任取れないよぉ、知らないヨゥ〜。ヒィィィ〜」

    「ハア、ひとりは寂しいなぁ」
    職場の自分の机の周りだけ明かりをつけて、隠の縫製係小島よしおはため息をついた。
    縫製係は、緊急の補修依頼に対応すべく、交代で夜間勤務を実施しており、小島は本日の当番だった。
    今日はたまたま急ぎの依頼がないので、手が空いている。だが、急に依頼が来ることもあるので、必ずひとりは詰めていないといけない。
    本部は働き方改革とか言ってるけど、なんでひとりなんだろう、と小島は眼鏡をずり上げた。

    小島は眼鏡のせいで、ゲスメガネこと前田まさおとよく間違われる。彼にとっては、間違われること自体が心外だった。同僚だが、あいつは友達でなくてもいいと思っていた。
    今日も間違われ、心当たりのないクレームを浴びせられた。前田のスンとした顔を思い出すと、あいつ本当にムカつくなと腹が立つ。

    こういう時は、と小島は職場に常備している鎹九官鳥かすがいきゅうかんちょうをカゴの台座ごとズルズルと机の近くに持ってきた。
    鎹九官鳥は、隊士に支給されている鎹鴉の移動しないバージョンで、どういう仕組みかは分からないが、全員に伝達するような緊急連絡がある場合、勝手に喋りだす。小島のように職場固定の隠は個別に鎹鴉を持たないので、伝達はもっぱらこの鎹九官鳥で行っていた。
    また、あまり公にはされていないが、この鎹九官鳥には、もうひとつ機能があった。

    この鎹九官鳥は、なんと!毎晩深夜零時から五時まで放送される「柱のオールナイト⭐︎鬼殺隊」を聞くことができるのだ。この番組は柱が日替わりでパーソナリティを務め、様々なぶっちゃけトークが聞けるため人気だった。
    月曜の「恋柱のキュンキュン⭐︎マンデー」に始まり、火曜の「炎柱のわっしょい⭐︎チューズデー」、水曜の「岩柱の南無にゃんこ⭐︎ウェンズデー」、木曜日の「蛇柱のネチネチ⭐︎サースデー」、金曜日の「音柱のアゲアゲ⭐︎フライデー」、土曜日の「蟲柱の毒舌⭐︎サタデー」、日曜日の「風柱のヒーリング⭐︎サンデー」まで。
    どれも個性的で人気だったが、小島は特に女子トーク全開の恋柱マンデーがお気に入りだった。
    今日はたまたま月曜日ではなかったので、ミツリサマの声が聞けないなあ、残念だなあと思いながら、鎹九官鳥のチューニングを合わせる。
    今日は金曜日だった。合わせるといきなりアゲアゲなクラブミュージックが流れ始め、ああ、音柱様らしいや、と小島は思った。
    長い夜を一人で過ごすには、これくらい騒がしいくらいがちょうど良い。音柱は際どい下ネタトークも人気だった。
    小島は音柱のトークにゲラゲラ笑いながら、そういえば柱って九人じゃなかったっけ?と、気がついた。
    確か霞柱様はまだ年若いため、青少年保護条例に引っかかるとかで、免除されていると聞いた。そうなると後はひとり。
    あの人、なんで担当ないんだろう?小島は首を傾げる。


    「なんで担当外されちゃったか、わかります?」
    プロデューサーの産屋敷くいな&かなた嬢を前に、水柱は正座し肩を竦めて小さくなっていた。
    「分からない」
    「分からない、じゃあないでしょう」
    「そこ分からないと、戻すことはできないんで」
    同じ顔にダブルで責められ、ますます水柱は小さくなった。
    水柱も以前は担当を持っていた。ところが、トークが抜群に上手い恋柱が加入してきたばかりに、蹴り出されるように担当を外されたのだった。
    何がまずかったのだろう、と水柱は考えてみたが、何も心当たりがなかった。確かに「水柱の流流⭐︎マンデー」は特に目立って面白いわけではなかったが、放送事故を起こしたこともなく、問題はないと思っていた。
    延々と将棋の話ばかりしていたのがダメだったのか…。
    もしかして俺は嫌われている…?
    考えれば考えるほどドツボにはまり、水柱はしおしおと落ち込んだ。


    「気にすんなよ、そりゃ、あの口から生まれてきたような甘露寺には敵わねえよ」
    「そこが問題じゃないんだ。なぜ押し出されたのが俺だったのか、だ」
    夜の酒場、水柱冨岡義勇がクダを巻く相手は、甘露寺と同じく口から生まれてきた男、音柱宇髄天元だ。
    「そうはいってもなァ…」
    困ったふりをしている宇髄だったが、実は理由を知っていた。「水柱の流流⭐︎マンデー」は、リスナーアンケートで最下位をずっと維持していたのだった。つか、アンケートの結果は柱にも公開されてるだろうが、見ろや、と宇髄は思う。
    ちなみに現在のトップは、甘露寺のキュンキュン⭐︎マンデーである。さもあらん。
    「俺は先輩なのに不甲斐ない…」
    冨岡は珍しく、ぐでんぐでんに酔っていた。そんなにショックなのかと、宇髄は意外に思う。
    「マア、あれが本業じゃないし、その分本業を頑張ればいいんじゃね?」
    「そんな慰めは要らない」
    「ハア?お前腹立つなあ。そもそもお前のトークが面白くないのがダメなんじゃ」
    「うずい。俺のトークは面白くないか?」
    「え?まあ、あまり…」
    「うずい」
    ガン、と音を立てて冨岡はおちょこを机に置いた。ド派手に目がすわっている。
    「俺の話を聞け」


    「善逸、善逸、起きてくれ」
    深夜の山の中、竈門炭治郎は目の前で眠っている同僚の肩をゆさゆさ揺すっていた。
    同僚の黄色い男こと吾妻善逸は、鼻提灯を膨らませて夢心地だ。炭治郎はその鼻提灯を指で突っついた。パチンと音を立てて、勢いよく鼻提灯が弾ける。
    「わあっ」
    ものすごくビックリしたていで、善逸は跳ね起きた。
    「あれ?炭治郎。鬼はどうなったの?」
    もうすっかり恒例となってしまったやり取りに、炭治郎はニッコリ微笑む。
    「もういない。善逸がやっつけてしまったぞ」
    「またまたァ。炭治郎様お強いんだからァ」
    デレデレと善逸は目の端と口元を下げ、炭治郎の肩をバシバシ叩いた。そしてふと気がついたように、目をしぱしぱと瞬かせる。
    「炭治郎、そういえば今日は何曜日だっけ?」
    「月曜日だ。それがどうした?」
    首を傾げる炭治郎に、善逸はあァァー!と声を上げた。
    「げっつようび!今日はキュンキュン☆マンデーじゃない?!ミツリサマじゃない!?ワァァ、俺としたことが忘れるなんて!」
    そして、手をバタバタさせながら、チュン太郎!と自分の鎹雀を呼んだ。どこからともなく、チュンチュンと鳴きながら雀が飛んできて、善逸の黄色い頭のてっぺんにおさまる。
    「チュン太郎!鬼殺隊ラジオにあわせて!」
    善逸の声に、チュン太郎はチュンとひと鳴きすると、ガァーガァーとノイズのような声を出した。
    え、何やってんの?と目を点にしている炭治郎の前で、チュン太郎の口からジングルが流れ出す。

    『深夜の女子トーク!甘露寺蜜璃がお送りしているキュンキュン☆マンデーですっ』

    チュン太郎の口から聞いたことがある声が流れ出し、炭治郎は目ん玉を見開いた。
    「ぜ、善逸。これ何だ?」
    「え?知らないの炭治郎。ダッサあ。ミツリサマだよ!今流行ってるんだぜ」
    いや聞きたいのはそういうことじゃなくてね、と炭治郎は思ったが、鼻の下を伸ばしてデレデレとトークに聴き入っている善逸を見て、まあ善逸が楽しいならいいかという気になった。

    『さて、今週の特集は、いよいよ!先週予告したアレです。『街角ロンリーハート』このダサいタイトル、仮ですからね』

    深夜の山の中に、恋柱の可愛らしい声が響き渡る。善逸は、ミツリサマ最高♡と両手をニギニギして、目からハートマークを飛ばしていた。

    『えー、鬼殺隊内で、ひどい体験をした人たちにその恨みつらみを赤裸々に語ってもらおうという企画です。…あまり趣味のよろしくないコーナーになりそうですがぁ。まあ、ちょっと聴いてもらいましょう』

    何だか分からないけど、面白いなあと思っている炭治郎。

    『真面目な話、俺はカップリングにおける右左ってめんどくさいなって思っている』

    そこで突然男の声に切り替わった。背後がザワザワしている。男の声は随分と酔っ払っているようだった。
    その聞き覚えのあるイケメンボイスに、あ、と思い炭治郎は固まった。
    「あれえ?」
    善逸がすっとんきょうな声を上げる。
    「これ、水柱じゃない?」


    同時刻。

    鬼狩り終了直後の現場は、ざわざわとごった返していた。あちこちに怪我をした隊士が座り込み、それを隠が手際よく手当てを行なっていく。
    今回は、厄介な血鬼術を使う鬼だったので、隊士十人で当たっていたが、あわや全滅の憂き目に合いそうになり、慌てて柱を呼んだのだった。
    呼ばれた水柱冨岡義勇は、お決まりコースの「凪からの〜、ハイハイごめんよ、斬り!」で鬼を瞬殺し、あっさり終わらせた。最初からこの人呼んでおけば…とその場の誰もが思ったが、それは言ってはならない。

    「おい、大丈夫か?しっかりしろ」
    怪我をした隊士を、仲間が一生懸命に励ましている。励まされている方は、意識がモウロウとしているのか、力なくカクカク頷くのみだ。
    「そうだ、お前が好きなミツリサマの声を聞けば元気がでるかも!」
    励ましている方は名案とばかりに、早速自分の鎹鴉を呼び、チューニングを合わせた。
    「ほら、ミツリサマだ!」
    そう言って鎹鴉の口を、ずいと向ける。
    しかし聞こえてきたのはミツリサマの可愛らしい声ではなく、酔っぱらった男の声だった。

    『俺はしのみつ派だ。逆も可。どっちも尊い。そもそも両思いならどっちが右左でも同じじゃないか』

    聞こえてきた内容に、隊士はポカンと口を開ける。何の話なのやら。

    『なのに昨今の腐女子は右左固定だのうるさい』

    声の主の方に顔を向けてみると、水柱はみるみる顔色をなくし、いつもの冷静な様子が嘘みたいに、目をかっと見開いて驚愕の表情をしていた。

    『だいたい総攻めとか総受けとかなんだ』

    その瞬間、バッと水柱の姿が消えた。そのままものすごい勢いで、本部の方向に移動していく後ろ姿が見え、みるみるうちに遠ざかっていった。
    なんなんだ…。
    隊士は、これこのまんま聞いていいのかな、と思いながら同僚の顔をみると、先ほどまでは死にそうだったのに、今は何故か目をキラキラさせている。同僚は彼を見つめ言った。
    「俺もしのみつ派」

    『総攻めは単に節操がないだけだからまあいいが…、総受けってなんだよ。誰に対しても股を開くってことか。とんだ淫乱だな』

    うん、まあだいたいあなたがその総受けになることが多いんですけどね…
    と、またもやボッチ夜勤をしていた隠縫製係の小島よしおは、茶をズズズとすすりながら心の中でツッコミを入れる。

    『まあそれはいい。これは、俺が長いこと在庫切れになっていた推し作家の薄い本を、ようやく手に入れた時の話だ』

    え、薄い本買うんだ、とDJブースの中で甘露寺は驚いて口元に手を当てた。
    しかもしのみつ本。どんなのかしら?きゃあきゃあ。

    『俺は家に帰り着くまでに待ちきれず、昼飯のために寄った定食屋で、注文が届くまでの間、その本を読みふけっていた』

    いやいや、定食屋で読むなァ。非番でおうちオヤツタイム中の不死川は、おはぎを頰張りながらツッコミを入れる。

    『その時に声をかけてきたのがアイツだった。アイツは開口一番に言ったんだ。おお!同士よ!と』

    同士ってしのみつのか?そんなに居るもんなのか?俺は見たことない信じない。と、鏑丸をツヤツヤに拭き上げながら、伊黒は思った。
    それにしてもいい光沢だ…と、ウットリと鏑丸を撫で回す。鏑丸も、心なしか嬉しそうだ。

    『俺も信じられなかった。今までそんな奴に会ったことがなかったからだ。だが、話してみると本物だった。俺たちはすぐに意気投合した。』

    そりゃそうでしょうねえ、と鬼殺を終えてのんびり帰宅中の胡蝶はフムフムとうなずいた。
    だって冨岡さんお友達いませんものねぇ。そんな変態趣味なら、きっとなかなかできませんよねえ。

    『それからアイツとは何度か会って、しのみつについて語り合った。アイツは俺より情熱があって、俺は気圧された。これは、負けておられんと俺も情熱を燃やした』

    いやいや、情熱があるのは結構だが、燃やすとこ間違えてないか冨岡?
    夜の道場でひとり鍛錬しながら、煉獄はツッコミのかわりに藁束に面を入れた。
    めんめんめん!おめーん!

    『ある日、アイツがかつてないほど真剣な顔をして言ったんだ。「実家でオヤジが倒れて、今すぐに帰らなきゃならなくなった」って。
    ヤツの父は町工場の社長らしいんだけど、部下が金を持ち逃げして、このままじゃ不渡りが出るの出ないのって…』

    ニャンニャンニャン。膝の上のネコチャンを撫で回しながら、悲鳴嶼はふと首を傾げた。
    あれ、なんか雲行きが怪しくなってきてない?

    『涙ながらに言うわけだ。「親父に恥をかかせるわけにはいかない」「これは長男の意地だ」とかな…。
    その時は正直感心した。ただのしのみつ好きの変態ではなかったんだな、って。こういうのは尊敬しないといけないなって…』

    冨岡さんって純粋だなぁ。青春年代にありがちの布団にラジオで夜更かしをそのまま実践していた時透は、ちょっとだけ水柱を見直した。
    でもこれ、多分騙されるや〜つ〜。

    『感心するだけにしときゃよかったんだよ、ホント。俺も少し力になりたいと舞い上がっちゃって、渡してしまったんだよ。……五十万ほど』

    「ワアーッ」突然善逸が声を上げた。「ねえ炭治郎、この人、バカなの?バカなの?」

    『いや!そのまさかだよ。まあここまで言えばオチ読めただろうが』

    「うーん、なんとも言えないなあ…」炭治郎も頭を抱えた。オチもなにも、冨岡さん可愛すぎるナアと、弟弟子にあるまじき感想を抱いてしまう。

    『この話、一から十まで嘘なんだよ!あのクソ、実家になんて帰ってなかったし、そもそも、不渡りの危機なんて無かったんだよ!』

    だろうなァ。宇髄はニヤリと笑った。
    さて、そろそろ来る頃か?

    『死ねと!まァ、死ねと!!』

    ドタドタドタドタと凄まじい足音が聞こえ、バァンとドアが開け放たれる。
    そこには血相を変え、憤怒の形相をした水柱の姿があった。
    「あ、冨岡さぁん」とDJブースの中で甘露寺が声を上げる。
    その前に座っていた宇髄が、腕組みをしたまま、
    「来たな」とニヤリと笑った。
    「宇髄!貴様の仕業だな!」
    冨岡はそのままブースの中の宇髄に詰め寄った。宇髄は口笛をヒュッと吹き
    「えー、だってお前、話を聞いてもらいたかったんだろ?」とうそぶく。
    「だからといって酒の席の話を!」
    「いやいや、許可はちゃんと取ってるぜ」
    そう言いながら、一枚の紙を取り出した。そこには、何かの広告の裏に、ヨタヨタした墨書きで
    「俺、とみおかぎゆうは、うずい氏が俺との会話の内容を何人に伝えようと、文句は言いません」と書いてあった。しかも拇印まで押してある。
    「……!!」
    いつのまにこんな念書を、と冨岡は頭を抱えた。

    『その後イベントで湯水のように金を使うヤツの姿が目撃されたと…』

    それよりも、これを止めないといけなかった。
    「甘露寺、止めろ」
    冨岡はブースに割り込んで、スイッチを止めようとした。
    「キャー、ダメよう」それを阻止しようとする甘露寺と揉み合いになる。
    「いいのか」そこに、至極冷静な顔をして宇髄が割り込んだ。
    「冨岡、有名だから知ってると思うが、ラジオには三秒ルールというものがある。無音が三秒続くと放送事故だぞ」
    そして、呆然と宇髄を見る冨岡に、ニヤリと笑いかけた。
    「止めるからには、お前が間をもたせるんだぜ?」
    「は?」

    「冨岡さぁん、じゃあ場所交代しますね」
    甘露寺がヘッドホンを外して渡してくる。
    「いやちょっと待て、台本は?」
    慌てる冨岡に、宇髄はニヤリと笑ったまま答えた。
    「あるわけねえだろう〜?ぶっつけ本番だ。お前が喋れるヤツだってことを、見せてやれよ」
    青ざめる冨岡の肩を、宇髄はバンバンと叩く。
    「この放送はヤツも聞いている可能性がある。叩きつけてやれ、言葉を」
    固く口をひき結んで宇髄を見つめる冨岡を見かえし、宇髄は微笑んで首を傾げた。
    「な?」


    冨岡義勇は後に述懐する。

    『こんばんは、水柱の冨岡義勇です。あ、あの皆さん!たった今、酒に飲まれたバカが長々とクダ巻いていましたが、このバカも間違いを犯しています。腐女子を悪くいうつもりは、これっぽっちもありません』

    これ、俺ハメられたんじゃないですかね?

    『人間をカテゴライズする事ほど、理解に遠い作業はないと思います。九州男児は亭主関白、東京モンは冷たい、B型はクソ。それらの言葉のどこに、個々の人格への興味があるでしょうか』

    『MISIAもかつて言いました。愛の形は人それぞれ、みんな違ってみんないい、レインボーフラッグ万歳と』

    『俺は、彼の独善的な部分を、腐男子だから、まぁーしゃあないかと放置してました。ラクだったからです。カテゴライズして諦めれば、彼の欠点に真摯に向き合わずに済んだからです』

    『多分、彼は彼で俺に対してそうだったんだと思います。その結果、彼は犯罪紛いの事をして、俺の元から去って行きました』

    『こんな虚しい友人関係ってあるでしょうか?』

    『おれは二度と…次の友人がどんな出自だろうが、つまらないカテゴライズを口実に…その人への理解をなおざりにしたりはしません』

    『そして、最後に言わせてください』

    そこで一旦切り、冨岡は大きく息を吸い込んだ。
    そして地の果てまで届かんばかりの大声を張り上げる。

    『猗窩座ァァ!お前は地の果てまで追い詰めて』


    『殺す!!!』



    放送終了後、水柱は部屋の隅に壁を向いてうずくまったまま、動かなくなってしまった。
    「冨岡さぁん〜」
    何を話しかけても、ひたすら「凪」としか言わないので、甘露寺はほとほと困り果てていた。
    もう放って帰ってもいいかしら?と思い始めたその時、
    「みつりさぁ〜ん、おつかれさまぁ」と、後ろから聞き覚えのある声がし、ガシッと抱きしめられた。ほのかに香る藤のにおい。
    「しのぶちゃ〜ん」
    甘露寺は頬をポポポと赤くして、親友が首に回してきた手を握った。
    「聞いてよ〜。冨岡さんが私の話を聞いてくれないの」
    「あらまあ、そうなんですか。ホントに困った冨岡さんですねえ」
    任務帰りで隊服のままの蟲柱胡蝶しのぶは、甘露寺から体を離し、うずくまったままの冨岡のところまで音もなく近づいた。
    「とぉ、みおーかさーん。放送、聞きましたよ。お友達は、ちゃんと選ばないとダメですよぅ」
    「凪」
    冨岡は向こうを向いたまま反応しない。
    「冨岡さぁん、話聞いてますか?」
    つんつんつん。胡蝶は怒涛の勢いで冨岡の背中をつついた。
    「凪」
    冨岡はいつも、胡蝶につつかれるたびに「あべし」「ひでぶ」と言いたくなるのだが、絶対にジェネレーションギャップがあるだろうと思い、言うのをひたすら堪えていた。
    今日もうっかり言いそうになったが、その代わりに凪凪と言い続ける。
    胡蝶はつつくのをいったん止め、どうしたものかと一瞬考え、ああこれかしら、とにっこり微笑んだ。
    「私はしのカナ派です」
    後ろから聞こえた声に、冨岡の耳がピクリと反応する。
    な、何だと……!しのカナ……!まさかの本人降臨…!
    それもいい……しかし、カナ「エ」なのか、それともカナ「ヲ」なのか!?
    それが聞きたくて顔を上げた冨岡の首元に、チャキリと「どくいり たべたら しぬで」のキャッチコピーで有名な胡蝶の日輪刀が突きつけられる。
    ヒェッ!
    刃が当たらないように、ちょっと首を離し、恐る恐る冨岡は振り返る。そこには花のような微笑みを浮かべた蝶々娘がいた。女神のように微笑みながら、しかしながら額にはピキピキと青筋を浮かべている。
    「こういう話なら、反応するんですねぇ」
    そして、怒れる女神はキッパリと言い放った。

    「同 担 拒 否」

    「なあ善逸、この後結局どうなったんだ?」
    「知らないよゥ。なんか、恋柱マンデーの中に水柱がカップリングについて熱く語るコーナーができたとか、できないとか」
    「そうか!それは良かった」
    「いいのかなあ…?」
    「ちなみに、女性が薔薇を好むように、男性は百合を好む傾向にあるそうだ。これは、作者が学生時代にまわりの腐れ仲間に聞いて回ったので確実らしいぞ!」
    「腐れ仲間って…その言い方、なんかゾンビの群れみたいで怖いんだけど」
    「そうだな!ゾンビなのは間違いない!」
    「断定するなよ…ホントにとんでもねえ炭治郎だな!」
    「ちなみに他の柱の人にも、どのカップリングが好きか聞いてみたぞ!」
    「えっ、何聞いちゃってんだよ!」

    恋柱「えー、どれも素敵。どれもキュンキュンしちゃう。選べな〜い」

    炎柱「うむっ、何を聞かれているかよく分からないが、俺が好きなのは千寿郎総受けだ!」

    岩柱「南無ニャンコ可愛い、南無ニャンコ可愛い……ひめカナ(ぼそり)」

    蛇柱「貴様何を俺に聞いているのか分かっているのか?おばみつ以外の選択肢などあろうはずが無い。全く最近の若者は…(ネチネチ)」

    音柱「そうだなア、相手は誰でも構わんが、この祭りの神がド派手に総攻めに決まっているぜ!」

    蟲柱「カナはカナエお姉様ですよぅ。カナヲならアオカナ派です。(ニッコリ)」

    風柱「ハァア?そんなもん決まってらァ、さねげん一択だァ!」

    「…だ、そうだ」
    「そ、そうなんだ…皆さんノリがいいんだねぇ」
    「まあ俺の兄弟子も言っていたし、思うところは人それぞれ、レインボーフラッグ万歳だから、みんな自分の好きな組み合わせで楽しんでくれ!」
    「あらら、強引にまとめに入っちゃったよ…」
    「以上!現場から鬼殺隊の竈門炭治郎と」
    「吾妻前逸でした!……って、なにこれ?なんなの?意味わかんないんだけど!た〜んじろ〜ぉ〜…」

    おわり。
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