一番近く【ポチデン】 あれはいつのことであったか。初老の木こりに混ざって樹木を斬っているときに、聞いた気がする。あのぼうずくらいが花だ、若いというだけで女は飛びついてくるぞ――と。
「飛びつかれるどころか、嫌われたことしかねえっつーの」
「くぅん」
学はねえ、金がねえ、風呂に入らねえから臭え。女を抱くなんて夢を見てるが、金玉が片方ない野郎にそんなことは可能なのだろうか。
顎に手を当て、らしくもなく考え込むデンジの足元にポチタは座る。ポチタは悪魔だが、触れている部分は温かい。
「わん?」
「そもそも、女の胸ってどんな感触なんだろうな?」
突如、デンジは服の上から自身の胸を掴んだ。掴む、というよりは触ると言ったほうが正しいだろうか。過酷な肉体労働で引き締まった身体も、碌な食事を口にしていないために弾力や肉感に乏しい。
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